二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Eternal Fire 〜Fire knot〜 ( No.53 )
- 日時: 2011/04/23 16:37
- 名前: 月影(別PC) ◆kuB5mqYaRs (ID: khxqjExY)
- Eternal Fire 〜Fire knot〜 
 朱と橙の夕陽が全てを包む。
 大海原に立つ、似合わぬサッカーグラウンド。
 海さえも、夕陽色に染まっていた。
 「豪炎寺」
 「…未来」
 グラウンドに立つ少年と少女。
 少年は、白い髪が逆立っており、漆黒の釣り目。
 少女は、漆黒の髪。セミロングくらいに見える。
 サイドの髪は髪飾りと思われる物で結ってあり、少年と同じ漆黒の瞳。変わった癖毛が特徴的だった。
 「円堂の言う通り、本当に遅いよ?」
 「すまない」
 お互い、少し微笑みながら答えた。
 少女は手に持っていたサッカーボールを豪炎寺に向かって投げた。
 少年は、左足で転がるサッカーボールを止める。
 「…本当に、帰ってくるのが遅いんだよ。 …馬鹿」
 「…ごめん」
 また謝って、目の前の相手へ、ボールを優しく、弱く蹴る。
 転がったボールを、少女は右足で止める。
 「豪炎寺が帰ってくるまでの間、色んなことがあった。
 色んな、色んなことが。言い表せないくらいにね 」
 「そうか」
 少女が少年に向かって弱く蹴る。
 少年は先程と同じように、止める。
 「俺も、色んなことがあった」
 「だろうね」
 弱く、蹴る。
 相手が止めて、また弱く蹴り返す。
 時には優しく、時には強く。
 それの繰り返しだった。
 「…自分の行動が、馬鹿馬鹿しい」
 「…え?」
 少女の口から漏れた言葉。
 思わず、少年は聞き返す。
 「奈良の時だよ。あの時、やっと再会出来たのに、豪炎寺が去ろうとした。
 理由があるのは分かってた。でも、やっぱり理解できなかった。拒絶していた自分が居た」
 「…」
 「大人嫌いな癖が直っていないからなのかもしれない」と付け足し、作り笑いしながら少女は弱く蹴る。
 少年は、ただ止めるのみ。
 「何とか、何をしてでも、止めようと思った。 …その結果がアレだよ」
 自分に対して鼻で笑う。
 そんな彼女の姿が、少年にとって、何処か悲しかった。
 —私はお前を甘く見すぎていた。少し調子が悪かっただけで、仲間を裏切るなんて… お前には絶望したよ—
 「当たり前の反応だ。全て、俺が悪いんだからな」
 少年は、自分の左足を見ながら言う。
 此方も、自分に対して鼻で笑いながら。
 「仲間を傷つけたまま俺は去った。そんなの、現実から逃げたのと同じだ」
 「…豪炎寺…」
 自分は愚かだ、思わせるような顔。
 対して、悲しむ顔。
 「…けど、現実から逃げたのとは違うと思う」
 「えっ…?」
 悲しい顔をしてはいけない。
 それだと、君が悲しむじゃないか。
 そう思ったのか、少女は先程とは一転し、微笑みながら言った。
 「誰かを傷つけて、犠牲を、代償を創ってまで大切な人を護ろうとした。
 その犠牲を、代償を補うために、今の今まで努力してきたんでしょ?
 もう二度と仲間に逢えないかもしれない〝絶望〟がある中で、豪炎寺は違う選択肢を取った。仲間に再会できる〝希望〟を。
 だから此処まで来ることが出来た。仲間に逢えたじゃんか。
 きっと、みんなは理解してくれる。馬鹿は馬鹿でも、アンタの仲間は自分を理解してくれない程、馬鹿だった? 」
 「…そう言ってくれるのは、多分お前だけだ」
 「そりゃどうも」
 いつしか、お互いの、本当の笑顔が戻った。
 「お帰りなさい」
 「ただいま」
 その笑顔は、まるで炎のように暖かく、煌めいていた。
 (Hereafter, can I defend someone?)
 (It is possible to do. If you believe me. The companion also answers if it does so. )
