二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: *+テニプリ+*君の白い翼 と 僕の黒い翼。 ( No.37 )
- 日時: 2011/06/22 17:36
- 名前: うっさー ◆OOs7K0umK. (ID: RAGGUceS)
- 参照: 好きだよ、君のコト。勿論、友達として、ね??
- *+10話+* 
 「琉祈ちゃん、眠いなら、寝たら…??」
 練習が終わった後、何発も欠伸をする琉祈をジローは心配そうに言う。
 「そうですね。晩御飯には戻れるようにします」
 ペコッとお辞儀をすると、少しふらふらしながら、部屋に入っていった。
 ***
 初めての、中学校。
 初めての、人達。
 初めての、制服。
 そして、
 初めての、クラス。
 「馴染めるかなー」
 黒髪の少女の、まだ幼いその顔が、少しだけ曇る。
 「でも、大丈夫だよね!!」
 長い髪を結んでいないせいで、彼女の髪は風に揺れた。
 「頑張ろう」
 少し決意をすると、一歩ずつ自分の席に近付く。
 「“大丈夫だよ”っと」
 携帯で簡単に打つと、直ぐに相手から返事が来る。
 「“気ィ張らんで、頑張りんしゃい”か。お兄ちゃんらしいなァ」
 ふふ、と笑えば、前の席の子や隣の子と少し話す。
 そう、
 此処までは良かったんだ。
 「“仁王琉祈”です。宜しくお願いします」
 見るからに真面目そうな彼女は、ふわりと笑う。
 誰も、
 この笑顔が無くなるなんて、
 想像もしなかった。
 ***[その後]
 一ヶ月も経てば、彼女の噂はあっという間に広まった。
 良い意味でもなく、悪い意味でもない噂。
 “詐欺師の妹”と言うレッテルを貼られる彼女。
 「ヨロシクねぇ??」
 そう言って、香水を振りまく女達は彼女に笑いかける。
 「あ、うん!! ヨロシクね」
 ニコッと、彼女は笑って見せた。
 「おい、“琉祈”」
 名前を呼ばれてゆっくり彼女は振り向く。
 そこには、ワカメ頭の男の子。
 「先生が呼んでる」
 琉祈は、頷いてから席を外す。
 目の前の女の子達は、自己紹介をして去って行っていた。
 「ねェ、一つ聞いて良いかな??」
 廊下をゆっくり歩きながら、琉祈は一歩早く歩く彼を見る。
 「何だよ」
 ワカメ頭の彼は、真っ直ぐ歩く。
 「君、誰」
 ワカメ頭が振り向けば、彼女はニヤリ、と兄と同じ様に笑っていた。
 「んだよ、気付いてたのか」
 ムスッとしながら彼が言うと、琉祈はその笑みを失くす。
 「だって、私、君のこと知らないもん。なのに、名前呼ばれるなんて」
 不思議でしょう??、と彼女は続けた。
 「なら、俺は、“切原赤也”。宜しくな!!」
 ニカッと彼は笑うと、右手を差し出す。
 「宜しくね、切原くん」
 彼女もニッコリ笑って、右手を出した。
 ***
 それから二ヶ月。
 彼女が、他の女子からのターゲットになるには、十分な時間だった。
 「君も、よくやるよね。マネージャーなんて」
 屋上にいる琉祈と銀色の彼女は、2人で座って話す。
 「楽しいよ?? 琉祈ちゃんも、一緒にやろうよ」
 ニコニコと笑う彼女に、直ぐ拒否をする琉祈。
 「ターゲットになるのは御免だよ。只でさえ、今もなってんだから」
 「まぁ、そうだよね」
 銀色の彼女が悲しそうに言うと、琉祈は溜息。
 「でも、銀花ちゃんが居るなら、たまに見に行ってあげる」
 少し笑って言えば、銀花は嬉しそうに笑う。
 「やっぱり、琉祈ちゃんは、笑ってた方が」
 “すっごく可愛いよ”という前に、ギィと音を立ててドアが開く。
 「2人とも一緒だなんて、仲が良いのね」
 そう言って笑う女達。
 それを見れば、2人はゆっくり立ち上がった。
 「何の用ですか、先輩方」
 琉祈は自分より高い人達を、睨み付けながら聞く。
 「琉祈ちゃ」
 小声で名前呼ぶと、銀花は琉祈の服を掴む。
 「大丈夫よ。用があるのは、琉祈ちゃん。貴方だけだから」
 それを聞くと、琉祈は口角を少し上げる。
 そして、服を掴む銀花の手を離させた。
 「琉祈、ちゃん??」
 銀花が不思議そうに彼女の背中を見る。
 「銀花ちゃん。先、帰ってくれる」
 それは、有無を言わせない口調。
 「や、嫌だよ!! そ、したら、琉祈ちゃんがっ!!」
 銀花が言うと、琉祈は振り返る。
 そして、琉祈は無表情で、銀花に言うのだ。
 「“帰れ”」
 ***
 「琉祈、琉祈」
 名前を呼ばれれば、彼女は薄っすらと目を開ける。
 「ゆ、きむら、さん…??」
 働かない頭が、一気に覚醒した。
 「ど、して、此処に」
 此処は、一応、琉祈が与えられた部屋。
 そう簡単に入れるはずが無い。
 「晩御飯だよ。跡部たちがね、誰が行くか揉めてたからさ」
 “俺が来ちゃった”と、彼は優しく笑う。
 「分かりました。食堂に、行けば良いんですよね」
 琉祈は頑張って笑ってみせた。
 (嗚呼、嫌い嫌い嫌い。さっさと、どっか行ってよ)
 本当は、逃げ出したくて堪らないこの状況で、琉祈は我慢する。
 「ねェ、琉祈」
 名前で呼ぶ彼は、少し寂しそうだった。
 「何ですか、幸村さん」
 不思議そうに琉祈は彼を見る。
 「俺達のことは嫌いになってくれても構わないよ」
 “ただ”、と彼は呟いて、真っ直ぐ琉祈を見た。
 「赤也だけは」
 彼女は、その先に言われるだろう言葉を、予想してしまう。
 「—————————————————————————————————嫌わないでくれないか」
 “お前が辛くなったら、俺がお前を支えるからっ!! だから、我慢ばっかすんなっ!!!”
 そう言って、他人のために泪を流せる彼を、嫌いになれるわけないでしょう。
