二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【真実ト嘘】 イナズマイレブン返信100突破!! ( No.122 )
- 日時: 2011/06/11 00:29
- 名前: 紅闇 ◆88grV3aVhM (ID: dNKdEnEb)
- ⑤第三話 
 「四分二秒」
 女は空を見上げてはブツブツと秒を数える。
 まるで何かを待っているように。
 「……一つ聞こうか」
 「なんだい? トレイル戦闘隊副隊長、鬼道有人君」
 「——! ……お前が言っているその秒数は何だ?」
 自分の所属、名前を正確に言われ驚きつつも、睨みながら淡々と話す。
 女は少しだけ顔を歪め、辛辣に言った。
 「……待っているのさ」
 「待つ?」
 「あたしはね、陽の光を浴び続けると力が出なくなっちまう性質なんだ」
 太陽は、城の影に隠れながらも、ほんの少しだけ顔を出している。
 女は、それをうっとりと見つめた。
 「まあ、力が戻ると、それ以前にやった魔法が解けちまうんだが……」
 風丸は、女が一瞬こちらを見た気がした。
 「五分経ったら日が沈む。あたしが此処に来た理由。それはまだ秘密だが、力が戻れば即刻終了<クリア>出来るだろうね」
 「なるほど……俺達の目的が分かったな」
 「ええ、そうね」
 かがりは立ち上がり、鬼道の隣に並んだ。
 少し、風丸を気にかけたようだが、風丸の視線に後押しされ、前を見据えた。
 「目的……?」
 「俺達の目的……それは」
 「「お前(貴方)が力を取り戻す前に倒すこと」」
 言った瞬間、かがりが上に跳び、鬼道は前へと走る。
 鬼道はギリギリまで女に近づき、刀を振るった。
 しかし、後ろにかわされ、バランスを崩す。
 「大きく出たね……。でも残念ながらあと五秒で太陽は完全に沈んでしまうんだよ」
 「チッ……」
 辺りが、暗闇に包まれた。
 この場所は路地裏。わずかな光も閉ざされて何も見えない。
 「クソッ……。風丸! かがり! どこにいる!」
 「俺はここだ!」
 鬼道が見回すと、丁度目の前に風丸が現れた。
 肩を押さえてはいるが、足取りはしっかりしている。
 「風丸、もう平気なのか」
 「ああ……まだ頭が少しフラフラしてるけど」
 鬼道はこの状態に不信感を抱いた。
 本当に何も見えない。風丸が来たときも声を掛けられるまでまったく気づかなかった。それに、音も聞こえない。葉が風に揺れるかすかな音も、まったく。
 「少し……変だな」
 「ああ……。まるで何処かに閉じ込められた様な——」
 鬼道の言葉が途中で遮られた。
 耳をつんざく悲鳴が静寂を破る。
 「かがりの声だ!!」
 「おい! どこにいるんだ!?」
 何も見えず、聞こえず、それでも声を上げ続ける。
 風丸は、何かを蹴る音が微かに聞こえ、急いでその方を見た。
 少しずつ見えてくる人影——あれは——
 「鬼道! 後ろだ!!」
 ビュンと、空を斬る音が出、その人影はまた、闇に飲み込まれて行った。
 「今のは……?」
 「……何かの武器だ。俺の首筋を狙っていた」
 「完璧に殺そうとしていたって事か」
 「奴の任務には……俺達も関わりがあるのかもしれない……」
 「そうだな——」
 
 またもや、今度は風丸の言葉を遮った。
 風丸の長い髪の一部分が舞う。左目の辺りだ。
 「ッ……。もう余所見は無理だ」
 「ああ」
 二人は、自分の武器を持ち、構えを取った。
 背中合わせで立ち、後ろは任せて前を見る——
 仲間の事を信用していないと、この立ち位置は不利になってしまう。
 ——目が使えないなら耳を使え——
 鬼道はフッと笑った。
 誰の言葉だったか……教えてくれた様な気がする。
 「……鬼道! 何か見えるか?」
 風丸が緊迫した声で訊ねる。
 物思いにふけっていた鬼道は目を見開いた。
 「……いや、まだ何も……」
 「——? ……そうか」
 疑わしげに見ていた風丸だったが、小さくため息をすると、また目の前を見据えた。
 ——その時だった。
 コツ、コツ、コツと、地を歩く靴の音が響く。
 何も聞こえない中でその音は二人の耳に届いた。
 二人は目を合わせると、頷いた。
 「ゆっくり来れば、ばれないとでも思ったのか?」
 風丸は音のする方へ刀を振ろうとした。
 鬼道も加勢しようと、近づいた。
 風丸が、刀を振り下ろした——
 「え? ああーー!! 待って! 私だよ! 私!」
