二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【真実ト嘘】 イナズマイレブン返信100突破!! ( No.135 )
- 日時: 2011/06/11 23:37
- 名前: 紅闇 ◆88grV3aVhM (ID: dNKdEnEb)
- 参照: こちらのチームは長くなりそうです
- ⑤第四話 
 「え?! ああーー! 待って! 私だよ私!」
 「「……は?」」
 明らかにさっきの女とは違う口調。
 警戒はするもの、風丸は刀を下ろした。
 「危ないなあ……。気をつけてよッ」
 「……依林か?」
 「そうそう!」
 今の状況に合わない明るい声がする。
 しかし、二人は。
 「あのー……悪いんだけどさ」
 「うん?」
 「俺、依林の声は聞こえるんだけど、姿が見えないんだよ」
 「同じく、俺もだ」
 頭をかきながら風丸が困ったように言う。
 鬼道も、そう言った。彼の場合、表情では読み取れないが、声の質で分かる。
 「……えーっと……あ、そっか」
 声とともに、パンと言う音が響いた。
 おそらく、手を叩いたのだろう。
 「ゴメンゴメン、これを持ってる事、忘れてたよ」
 言い終わった瞬間、二人の前に、【紅依林】が現れた(ように見えた)。
 「「——!」」
 「アハハ……やっぱり、使い慣れてないものを使うと、その存在自体忘れちゃうね」
 依林の手に握られているのは、バッジのような小さいもの。銀色に光っている。
 「これは?」
 「あ、これはね、【無陰バッジ】って言ってね、これを持っている人を透明……っていうか、”同化”させちゃうんだ。
 茜から借りた」
 「無陰バッジ……」
 「色々と厄介な使い方なんだけど……まあ、この子助けられたし、いいかな、なんて」
 「『助けられた』?」
 「そう」
 バッジを握っている、反対の左手は背中に回っている。
 ”仲間”は、背の高い依林の後ろにいた。
 「かがり!!」
 かがりは、依林の背中に背負われていた。
 所々、怪我があるようだ。
 「どうしたんだ?」
 「……ちょっと、倒されちゃってね。幾らかがりみたいに優秀でも、暗闇の中じゃ、クルキには歯が立たない」
 「クルキって……」
 「【クルキ=ルワーザ】。君たちも見たでしょ?あの、真っ黒な服着た金髪の女だよ」
 「ああ……あいつか……」
 「あいつは、”闇を支配する者”として、有名なの。……裏の方でね。クルキの手から逃れるには、この”闇の世界”を脱出するしかないよ」
 「——! それで陽の光に弱いのか!」
 風丸が声を上げた。
 すると、依林が慌てたように、口に一本指を立てた。
 「ダメダメ。クルキに、この場所をあまり悟られない方がいいよ。……どの道、奴には見えるだろうけど」
 「……そっか」
 「なあ、かがりは…平気なのか?」
 唐突に、鬼道が話を変えた。
 口に当てていた手を下ろした依林は、一瞬目を見開いたが、またいつもの明るい顔に戻って言った。
 「大丈夫。気を失ってるだけだよ。足と背中をやられてるけど、平気だから」
 その声には、どこか緊張が混ざっていた。
 依林が言ったとおり、かがりの状態が大丈夫でない事を、鬼道は悟った。
 「……一刻も早く、此処を出よう」
 「そうだな。こんな真っ暗な所にいたら、目が狂う」
 「それだけじゃない。まだ、別の仕事も残っているんだ——別の……仕事が」
 「鬼道……」
 彼が何を想っているのか……それは彼自身しか分からない事だ。
 「……さあ! 早くでよう! やり方を茜に聞いたから、教えるよ」
 「「ああ」」
 「いい? この世界は無限に続くんだ。私はここが異空間なんじゃ無いかと推測してる。……おっと、今は関係ないね。
 無限に続くんだ、走っても走っても終わりが見える事は無い。この世界を”破る”必要がある」
 「破る……」
 「そう。でも、世界を切り裂くって事じゃない。”この世界を作った本人を切り裂く”んだ。
 つまり……この世界の所持者、クルキを切り裂くんだ」
 「クルキを殺せば良いって事なのか?」
 「いや……。この世界はクルキと一体化してる。元から、世界を作る魔法はそういう風に出来てる。
 クルキを殺せば、この世界も崩壊し、私たちは永遠にこの世界から出られなくなる。
 では、どうすればいいか? 簡単だよ、クルキに傷を一つ付ければいい。
 世界がクルキと一体化してるなら、クルキも世界と一体化してる筈。当たり前。
 クルキに傷一つ付けられれば、この世界も傷つき、破れる。そうして、私たちは外に出ることが出来る」
 「どんな傷でもいいんだな?」
 「そう。切り傷でも、刺し傷でも。腕一本切り落としたって良い。
 但し、私たちが”通れる”ぐらいの傷を付ける必要がある。
 いくら道があったって、通れなきゃ意味が無いしね。勿論、殺さないように。
 まあ、私たちが出れたら、死のうが死なないがどうでもいいけど。分かった?」
 長い話が終わり、依林は二人に問いかけた。
 「分かった」
 「……ちょっと話が複雑だったけど……OK」
 二人は了承した。一人の方は不安だが。
 「よし。私はかがりを背負ってるから、あんまり動くことは無理だよ? 二人に任せちゃうけど…いいね?」
 「「勿論」」
 不敵な笑みを浮かべた。
 「フフッ。いい? ”目が使えないなら耳を使え”、だよ?」
 「——!」
 「ああ!」
 「さあ、構えて!」
 鬼道は前、風丸は後ろ、と、かがりを背負う依林を守るように立った。
 ——闇は近づき、血は流れ続ける——
