二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 星のカービィ 幻想の魔筆 グリル戦決着…! ( No.240 )
- 日時: 2011/07/05 18:26
- 名前: 満月の瞳 (ID: A2bmpvWQ)
- 「どういうこと…?」 
 「おまえ!ドロシアを殺しに来たんだろ!?」
 「えぇ!?」
 カービィは驚きで素っ頓狂な声を上げる。
 黒幕は、倒すつもりではあったが、殺すつもりなどない。
 カービィは殺しを何よりも嫌っている。
 「た…確かにプププランドをもとに戻してもらうために…戦うつもりではあったけど…殺すつもりなんて…!」
 「嘘をつかないで!だっておまえはドロシアに呼ばれたじゃないか!」
 「た、たぶん…」
 「それは…おまえが—————!!」
 グリルは、言葉を途中で詰まらせた。
 「どうしたの…?」
 カービィは心配そうにグリルに声をかける。
 さっきまで、戦っていたのに…
 グリルは気が付いたのだ。
 「(僕ちんは…殺すつもりで攻撃した…でも…あいつは殺さないつもいで戦っていたんだ!)」
 決定的な差を、グリルは思い知らされた。
 「…どうして…どうして僕ちんを殺さないの?」
 グリルはついにそう聞いてしまった。
 「勝者は敗者を殺すのが…普通でしょ…」
 「…お願いだからボクに殺すとかいう言葉を言わないで…」
 カービィはひどく悲しそうに、そう言った。
 「ボク嫌いなんだよ…誰かが死ぬのを見るの…たとえどんな悪者だって…ボクは殺さない…殺せないんだ…」
 カービィは人を殺せない。
 それは慈悲と弱さ故から。
 今から一年後の未来、とある盗賊団の団長にもそれを暴かれてしまうほどに。
 「グリル…ボクは君を殺したくない…」
 「…」
 グリルはカービィの、瞳を見つめる。
 嘘を言っているようには思えない。
 だからといって、信じていいのだろうか。
 「でも…おまえは…きっと…ドロシアを殺すんだ…!」
 うめきながら、グリルは表情をゆがませた。
 「ボクは…!」
 「何を言ってるんだ!おまえは!何もかもわかりきった風に言って!どうせなにもわかってなんかいないんだろ!僕ちんとドロシアのことも!!僕ちんがどんな思いをしてるのかを!!」
 痛む体を押さえもせず、グリルはガクガクと痙攣する脚で立ち上がる。
 その瞳に、涙をにじませて—————
 グリルはもう、耐えきれなかった。
 ポロポロと流れる涙をぬぐいもせず、グリルは叫ぶ。
 「おまえがこなければよかったんだ!!おまえさえこなければよかったんだ!わかった風に語るんじゃねえ!おまえは殺すんだろ!おまえの仲間のために!絶対殺すんだろ!!ドロシアを殺すんだろ!!」
 「違うよ!グリル!ボクはそんなことしたくないんだ!」
 「ふざけんな!だったら…だったらっ…!!!」
 緑の瞳を赤くして、涙をこぼすグリルは、悲しくて悲しくてたまらない、そんなオーラをだしていた。
 「だったら…だったらおまえは…!!!」
 嗚咽で言葉にならないながらも、グリルは泣き叫び、力の入らない手で、カービィの胸ぐらをつかむ。
 「だったらおまえはドロシアを助けてくれるのっ!!!?」
 顔が触れ合うぐらいに、近づいた2人。
 グリルの悲鳴に似た叫び声は、カービィに深くとどいた。
 胸ぐらをつかまれたカービィは、抵抗しなかった。
 力なんてこれっぽちも入っていない。
 振り切ろうと思えば振り切れる。
 でも、カービィは動かなかった。
 「どうしてっ…!どうしてっ…!僕ちんは…っ…ドロシアの…そばにいたいだけなのに…どうして…っ」
 グリルはカービィから手を話し、その場にへたり込んで泣き出す。
 声も抑えず、体を震わせて—————
 あまりにも痛々しい。
 「僕ちん…おまえにもっ…負けて…!だったら…だったら僕ちん…どうしたらいいのっ…!?」
 手で顔を覆って、グリルは泣く。
 自分を責めて—————
 「僕ちん…いったいどうしたらいいの…っ…!!」
 何もかも見失って、真っ暗闇に閉じ込められてしまったようなグリル。
 涙が頬をつたって、レッドカーペットに、複数の染みを作っていく。
- Re: 星のカービィ 幻想の魔筆 真実解明編! ( No.241 )
- 日時: 2011/07/06 15:26
- 名前: 満月の瞳 (ID: A2bmpvWQ)
 「ドロシア…!ドロシア…っ…!!」
 ドロシアを助けなければならない。
 だけど…
 だけど…
 助けられない…
 これほどの屈辱があるものか。
 グリルは、目の前の星の戦士に負けてしまったのだから。
 「…!」
 「協力する…!ボクも…ドロシアを助ける…!」
 グリルは優しい力に引き寄せられた。
 カービィは、悲しみに震えるグリルを抱きしめた。
 普段のグリルなら驚いて抵抗するが、状況が状況なので、うまく動くことができなかった。
 「ボクは君たちを助ける…!事情はよくわからないけど…ボクは君たちを助けたいんだ!!」
 カービィの強い意志のこもった藍色の瞳と、グリルの潤んだ深緑色の瞳の焦点が合う。
 ひどく幻想的な気分になった。
 「だから…泣かないで…」
 「…おまえ…」
 おかしいな。
 僕ちん。
 ドロシアのためなら何をしてもいいって思えてたのに。
 何もかも排除してやるって思ってたのに。
 おかしいな。
 どうして。
 どうして敵のこいつを信じたくなっちゃうんだろう。
 こんなのおかしいよね。
 …泣かないで?
 そんな風に言われちゃうと、余計に泣けてきちゃうもんだよ…。
 …なんだよ。
 おまえは僕ちんのハンカチなのか?
 「約束する。ボクは絶対にドロシアを殺さない」
 カービィは断言した。
 そう言って、カービィはグリルの手を握る。
 「約束」
 星の戦士は、ニコリとほほ笑む。
 陽だまりのような笑顔。
 嘘なんて単語は、存在しない。
 ああ。
 僕ちんは、こいつにたくしていいのだろうか。
 こいつを信じていいのだろうか。
 でも…
 こいつなら…
 「たすけて…」
 グリルはか細い声で、カービィに懇願した。
 「ドロシアを…たすけて…!」
 すがるように、カービィに身を寄せた。
 「もう…時間がないの…!このままじゃ…!」
 その刹那。
 不気味な音がどこからともなく聞こえ、部屋の扉を飲み込むように消失していく。
 加速してきている。
 この空間の摂理が綻びてきているのだ。
 「たすけてあげて…ドロシアを…!」
 「うん!絶対に助けてみせる!」
 星の戦士と、魔女。
 プププランドと絵画の魔女を量りにかける。
 どちらも、大切。
 こうして、2人の主人公は、目的のため動き出すのだった。
 アポストロフィーの用意はいいかい?
