二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 星のカービィ 幻想の魔筆 VSドロシアついに開幕! ( No.329 )
- 日時: 2011/08/11 19:33
- 名前: 満月の瞳 (ID: A2bmpvWQ)
 「ふふ・・・」
 甚振られに近いほど、無様に攻撃を受けているカービィを見下ろしながら、ドロシアは上品に、おかしいものでも見るように笑った。
 「昔・・・どこかの巨大帝国で、奴隷たちを見世物の戦士として戦わせたっていう記録があったような気がするわ。—————その帝国の人々は毎日退屈で、スタジアムで血肉をまき散らして戦う戦士たちを見ることが、唯一の楽しみ・・・・うふふふふ」
 ドロシアはドレスの袖で口元を隠して、可憐にほほ笑んでいる。
 こんな状況で笑えるなんて、正気の沙汰ではないが
 もうすでに、正気を見失いつつある彼女には、関係ないことだ。
 「・・・・ああ、私—————もう心も化け物になってしまったのね」
 私、血を見るのが何よりも嫌いだったのに。
 ドロシアは手の中で筆をあそばせながら、まるで他人事のように、そんなことを思った。
 争いが嫌いだった彼女は、できればカービィに殺されて終わりにしたかったのだが、こんな戦いをする羽目になってしまったのだ。
 ドロシアは決してカービィを殺さないが、カービィがドロシアを殺す。
 意味のない、戦い。
 だから、ドロシアは本気を出さず、カービィと戦っている。
 本来なら、あまり怪我はさせないつもりだったのだが、カービィは見るかぎり少なからずの重傷を負っていた。
 ドロシアは、楽しくなってしまったのだ。
 内側の自分が、ゾクゾクしている。
 化け物の部分が、血と肉を見るのに、興奮している。
 笑い出してしまいたいほどの、快感。
 「星の戦士様・・・・早く・・・・早く私を殺して・・・」
 口元をあげたまま、狂人さながらの口調で、ドロシアは呟く。
 「早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く・・・・私・・・貴方を殺したくないないないないないないないないないないないないない」
 爆笑して吹き出してしまいそう。
 これほど楽しかったことは、いついらいだろう。
 ドロシアは筆をくるくる回転させ、カービィを再び見る。
 このままでは、カービィは死ぬかもしれない。
 「もっと—————もっともっともっともっともっと」
 そんな中、ドロシアにも異変が起こっていた。
 二つの人格が揺れ動いていた。
 まもなくドロシアは—————●●●に・・・・
 「時間がないの—————だから、」
 ♪:*:・・:*:・♪・:*:・・:*:・♪・:*:・・:*:・♪♪:*:・・:*:・♪・:*:・・:*:・♪・:*:・
 「だぁ!!」
 カービィは怪鳥に向かって、ダッシュパンチを繰り出す。
 しかし、怪鳥は軽々とかわし、反撃をしてくる。
 「くっ!」
 バックステップで間一髪かわすが、足がもつれて転びそうになる。
 「お願いだよ・・・!頑張って・・・!」
 自らの足に励ましの言葉をあたえ、きゅっと足にブレーキをかけ急ストップをする。
 すぐ真上に、怪鳥のアタック攻撃が通過する。
 背筋が凍るどころか、全身が固まってしまうほどの、ギリギリの戦いだった。
 「なんか飛び道具でも出してくれたら・・・!コピーできるのにさ!!ダイナブレイドの時みたいに首が伸びないだけでまだましだけどさ!!」
 「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
 「・・・・・・・ボク、死にたくないな」
 「シャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
 「でも・・・死ぬより、誰かが泣いているのを助けてあげられないほうが・・・もっとやだな」
 「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
 
 「ボクはもう・・・二人も泣かせたままなんだから・・・」
 カービィの目の前に、怪鳥が大きく口を開けて、カービィを食い殺さんとばかりに、涎をしたたらせ、顔を前に突き出していた。
 カービィ目線だと、口内までくっきりと見えてしまうだろう。
 「・・・・・・生き残るって大変だなぁ」
 ポタリ、ポタリと体をつたって、血が流れている。
 体は痙攣して、疲れ切っていた。
 掻き爪や口ばしに食いちぎられた傷口が、痛々しく、赤々と、目立っていた。
 桃色の体は、赤色に変色していた。
 これではもう、戦いなんてとてもできる体じゃない。
 「でも・・・・・君だって生き物だもんね・・・・・ドロシアが作ってくれた、生き物だもんね・・・・」
 カービィは、血の滲んだ腕を、怪鳥に向かって伸ばす。
 怪鳥はそれに、荒々しい叫び声で答えた。
 「ごめんね・・・・もう、逃げることはできそうにないから・・・・」
 カービィは瞳を悲しそうに潤ませ、飛びかかってきた鳥に向って、ゆっくりと跳ねた。
 数瞬後。
 ここは、血の世界になる。
