二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 花残の月 〔 inzm, 〕 ( No.28 )
- 日時: 2012/04/23 21:29
- 名前: 紅闇 ◆88grV3aVhM (ID: dNKdEnEb)
 『エレクタム』
 2. 早過ぎた再会に
 * * *
 
 「え、……貴方……ッ!」
 * * *
 
 「信助ー! ボール行くよッ!」
 「うん!」
 あの後。
 特に何事も無く学校が終わり、部活が始まった。
 雷門中サッカー部は、支配された管理サッカーを否定し、今まさに『革命』を起こしている。
 先輩達皆やる気満々で特訓を続けている。俺達一年生も置いて行かれない様にしなくちゃ!
 友達の『西園信助』と一緒にパスを続けていると、ふいに信助が声を掛けてきた。
 「天馬、今日何か調子良い?」
 「え、どうして?」
 「何となく、いつもより『サッカーが楽しい!』って顔してるから!」
 ……そんなに思ってる事が顔に出てるかなあ。返事も適当に、笑ってはぐらかした。
 まあとにかく。
 俺達は絶対に負けない。何てったって、廃部寸前だった雷門サッカー部を世界一にまで導いたキャプテン、円堂監督と。
 それを支えた天才ゲームメーカーの鬼道コーチだって居るんだから!
 「ねえ天馬ー」
 足元にボールが来ているにも関わらず、信助は足を止めた。どうやら誰か探しているらしい。
 「どうしたの? 信助」
 「音無先生が居ないんだけど……」
 そういえば、と俺も周りを見渡した。
 音無先生とはサッカー部の顧問を勤めている先生であり、俺達の先輩の人でもある。
 いつもなら練習にもちょくちょく顔を出しているのに……一体どうしたんだろう? まあ先生だし、急用があっても変じゃないけど。
 「何してんの?」
 そう言ってこっちに来たのは、俺と同じ一年生の『狩屋マサキ』。急に動きを止めたもんだから不思議に思って来たらしい。
 俺と信助は大げさに身振り手振りを付けて事情を説明した。狩屋も今気付いた様で、頭にはてなマークが浮かぶ。
 「そういや見てないなあ……まあ先生だし、何か用事があっても不思議じゃ——……って、居た」
 「「え!?」」
 
 狩屋が指を指した方向に、同時に首を向ける。
 そこには、グラウンドから出たすぐの所を歩く、音無先生の姿が見えた。でも、来た方向が校舎では無く、校門側な事に違和感。
 誰かと話ながら歩いてきた様だが、丁度先生の影になって誰かはよく分からない。
 「もしかして、お客さんが来てこっちに連れて来るんじゃない?」
 「まさか。知らない人を連れて来て一体何するんだよ」
 「えー……それは、何か用事があって……」
 「用事って?」
 「えーっと……」
 「ちょ、ちょっと信助も狩屋も! 先生こっちに来たよ?」
 「えっ」
 「ほら言った!」
 「行ってみようか!」
 「うん!」
 「お、おい待てよ……! ったく……」
 俺達は怪しまれない程度に、監督の方へ近づいた。
 何となく後ろを振り返ると、先輩達も気付いていた様で、練習を続けながら微妙に、少しずつ集まってきている。
 そして、音無先生が横を向いてその人を促すと……ついにその姿が見えた。
 「あ、あれっ?」
 「どうしたの?」
 「あの人……見た事ある……」
 紫の髪に赤い目。今朝会った人だ!
 「あの……監督ー」
 「何だ?」
 「えっと、お客様です……」
 「よう、円堂。久しぶりだな」
 「うわッ! 茜!?」
 「何だその異形を見る様な目は。ああ、鬼道も此処に居たのか」
 「冗談か……!」
 「何だ、二人揃って反応が面白くないな。春奈は大げさ過ぎる程に驚いたと言うのに」
 「い、いやだって……! 何年振りかに会ったんですよ!? 勿論驚きますよ!」
 「茜お前——……って、あ、」
 監督は明らかに『やべっ』といった顔をしてグラウンドを見渡す。
 もう誰も遠慮なんて無い。それぞれ円堂監督と女の人を交互に見て、目を見開いていた。
 「おい……皆見てるんだぞ」
 「人の目なんて気にする必要は無い。ただ来たかったから来た」
 「き、鬼道……」
 「……各自練習を続けろ!」
 『は、はいッ!!』
 * * *
 ⇒出会い、別れてまた出会う.
