二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 31章 意外な再会 ( No.66 )
- 日時: 2020/08/24 18:12
- 名前: 霧火 (ID: HEG2uMET)
- ポケモンセンターを飛び出したリオは、再び【スカイアローブリッジ】でヒトモシ達と共に 
 バルチャイの落とした骸骨を探していた。
 しかし結局見付からず、今はヒウンシティの細くて暗い路地に居る。
 衆人の冷眼を痛い程浴びているが、リオは特に気にせずヒトモシの灯りとシビシラスの電気を
 頼りにゴミ箱の下を覗き込んでいた。
 「駄目……ここにも無い」
 汗を拭い、溜め息を吐くリオ。
 街中を徹底的に隅から隅まで調べ回った為、最後のゴミ箱を調べ終わった頃にはリオの全身は
 埃と砂で汚れ、金色の髪はくすんでボサボサ、服には嫌な臭いが染み付いていた。
 1箇所調べ終わる度にチラーミィが尻尾で汚れを落としてくれたが、このゴミ箱に封印されていた
 汚れと悪臭はチラーミィの全力を以てしても消す事は叶わなかった。
 「汚い場所まで付き合ってくれて、何度も綺麗にしてくれてありがとう。それなのに直ぐ汚れて
 ごめんね、チラーミィ。1度戻って」
 トレーナーの臭体——否、醜態をこれ以上間近で見るのは綺麗好きのチラーミィにとって
 辛いだろうと判断し、リオは感謝と謝罪の言葉をチラーミィに贈り、ボールに戻した。
 (やっぱりアイツが言うように、誰かが持ってちゃったのかな……)
 最悪の考えが頭を過った、その時。
 「あ」
 視界の端に見覚えのある人物が映り、リオは体を起こしてその人物を追った。
 「ふはは!こんな珍しい物を見付けるなんて我はラッキーな男だ!」
 腕に抱えた物を見ながら高笑いをする1人の男。
 (この街の連中も、我の溢れ出るカリスマ性に道を開けていくしな!)
 本当は男の高笑いに気味悪がった通行人が道を開けているだけなのだが、男はそんな彼等の視線にも
 一切気付かない。
 とうとう鼻歌を歌い始める程まで気分が最高潮に達した男の前に、薄汚れた少女が立ち開かった。
 その少女は言わずもがな、リオである。
 「ちょっと貴方!」
 「うげっ!おっ、お前は、あの時の!」
 リオを見た瞬間、男はあからさまに嫌そうな顔をした。
 男の正体──それは、以前戦ったプラズマ団のサパスであった。
 「こんな所で何してるの?まさか……また何か悪い事でも企んでるの!?」
 「ふん!我々は今は謹慎中なのだ、何かしたくとも出来ぬわ!残念だったな!!」
 何故か胸を張って得意気に言うサパス。
 サパスが言う様に彼はプラズマ団の格好をしておらず、Tシャツにジーンズと私服だった。
 その為、リオもこうしてサパスの前に立つまでは彼が本人かどうか自信は無かった。
 通行人は迷惑そうにリオ達を避けて歩いて行く。
 「謹慎?何で」
 「前回お前達との戦いで任務に失敗したからだ。まったく、1匹のポケモンを連れ帰れなかったくらいで
 謹慎とは、あの方は堅物だな。いくら解放するためとは言え……」
 (あの方って誰?それに、)
 「解放って……一体何を解放するのよ」
 「しまった!と、とにかく!暫く我々は休みをエンジョイするのだ。お前みたいなお子様なんかに
 構っているヒマは一切合切無い。さっさとあっちへ行け、しっしっ!」
 リオの問いを無視して、虫ポケモンを追い払う様に手を動かすサパス。
 しかしその手は、あっさり掴まれた。
 「こっちには用があるのよね」
 「は、」
 何の事だと怪訝な顔をするサパスに、リオは彼が抱えている物を指差す。
 「その大事そうに抱えている物は何処で拾ったの?」
 「ふふん。これは【スカイアローブリッジ】と言う橋に落ちていた物だ。微妙に鳥臭いし、
 きっと珍しい鳥ポケモンの化石だ!どうだ、驚いたか!」
 「化石が橋のど真ん中に転がってるワケないでしょ!それは私がずっと探してた、バルチャイが
 穿く骸骨よ!」
 「何いぃ!?」
 リオの言葉にサパスは数歩後退り、地面に手をつく。
 「そ、そんな……では、我はずっと騙されていたのか……!」
 「騙されてたんじゃなくて、自分が勝手に勘違いしてただけでしょ」
 項垂れるサパスを見下ろしながら、冷静に言葉を訂正するリオ。
 しかし何か思い付いたのか、サパスは直ぐに顔を上げて立ち上がった。
 「ふははは!化石ではなかったが、この骸骨は一部のマニア共の間で高値で取引されてた……筈だ!
 これを売って、休みを満喫するのだ!」
 拳を固め、再び高笑いをするサパス──だったが。
 「人の話聞いてた?」
 リオの妙に明るい声にサパスは固まる。
 「今は謹慎中で、悪い事もしないで暫く休みをエンジョイするのよね?それなら、平和的に、素直に
 返してくれるわよね?」
 『モシ、モッシ?』
 首を傾げるリオとヒトモシ。
 とても可愛らしい笑顔……の筈なのに、サパスは恐怖を感じて冷や汗を垂らした。
 「ぐぬぅっ……し、しかし!ただ素直に返すのは我のプライドが許さん!」
 そこまで言って、サパスはモンスターボールを取り出す。
 「我とのバトルに勝ったら、この骸骨を返してやろう!しかしお前が負けたら、こいつを売って
 休みをエンジョイしてやるんだからな!」
 指を突き付けるサパスに、リオ達は溜め息を吐く。
 「はぁ……素直に返してくれれば良いのに、結局こうなるのね」
 『……モシ』
 しかし直ぐにお互いに口許に笑みを浮かべる。
 「良いわ。ハジさんの所のチラーミィを盗んだ件……アキラには諭す様に言ったけど、私だって
 本当はアキラに負けないくらい怒ってるんだから。今度は逃がさないし、罪を償って貰うわ」
 リオは頬に付いた汚れを親指で払い、モンスターボールを手に取った。
