二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナイレ:短編集: ( No.13 )
- 日時: 2012/12/02 21:58
- 名前: 音愛羽 (ID: 4/yJe86Q)
- もう陽は落ちてきている。影が二つ、並んで歩いていた。 
 「ねぇ」
 何も話すことはないくせに話しかける。
 とにかく沈黙だけは避けたかった。
 「なあに、吹雪君」
 「僕、」
 君が好きだ。言おうとしてやめた。いきなりの告白なんておかしいだろうし。
 そして何より心の準備がまだだ。
 「なんでもない」
 「もぉ、なによ、気になるでしょう!」
 「ごめん、また言うから」
 「本当?」
 「うん」
 「絶対?」
 「うん」
 「じゃ、約束ね」
 「…うん」
 約束。僕は気に見ちゃんと言えるのかな?
 ずっと好きだったよって。
 でも言いたい、伝えたい思い。
 「今日は雲、きれいね」
 見上げると雲は夕焼けに染まり、オレンジ色に輝いていた。
 周りもオレンジ色の光に彩られている。
 「ほんとだね」
 「うん…。好き…だったんだ」
 「うん、オレンジっていいよね」
 「あ…いや…ぅん」
 どうかした、と聞くと顔を真っ赤にしてうつむき、首を振った。
 影はもう濃くなってきていた。
 「もうすぐなの、家」
 「へぇ」
 「ていうか…もう着いちゃったけど」
 くすっと笑う彼女。まだそのほほは赤いまま。
 彼女の家はクリーム色の壁だった。その壁も夕焼けのオレンジ色になっていたけど。
 「かわいい家だね」
 「そんなことないよ、小さいし」
 「かわいいよ」
 家ではなく、君が。
 「そんなことないよ〜本当に小さいお家で。妹と共有してるんだから、部屋。」
 君のことなんだよ?
 家もかわいいけど、それ以上に。
 比べ物にならないくらい。
 「じゃぁ、ね。吹雪君」
 「うん」
 「今日はありがとう」
 「いや、全然いいよ」
 「本当にありがとうね」
 バイバイと手を振る彼女。
 いいのか、言わなくて。今。今いってしまえよ。
 行ってしまう、待って、行かないで。もう少し待って…!!
 離れたくないんだ、君と一緒にいたい。
 僕は…僕は!!
 「待って!」
 彼女はこちらを振り返った。
 「霜月さん、僕は」
 「何?」
 「君が、好きだよ」
 時間が一瞬止まった。彼女は目を見開いてこっちを見る。
 その眼には少し涙がたまっていた。
 「吹雪くん、
 私もだよ」
 今度はさっきより長く時間が止まった。
 「本当!?」
 僕は驚きの声を上げる。
 「こんなのウソついてどうするの?」
 「だね」
 クスッと二人で笑いあう。
 「うれしい。ありがとう…私、ずっと好きだった」
 「僕も、君を見たときからずっと」
 『今も
 大好きだよ』
 夕陽の光が二人を優しく包み込んだ。
 影も、僕らも笑う。
 二人で同時に言った。
 《 愛 し て る よ 》
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