二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: KAMISAMA!【銀魂】 ( No.7 )
- 日時: 2012/04/21 22:45
- 名前: 千鶴 ◆iYEpEVPG4g (ID: 9ul7iLKX)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode
 03 【餃子の○将ですがファミリーセットはいかがですか?】
 
 言うなれば、家族のようなものだとわたしは思う。家族って、一時は大嫌いでも酷い言葉を言ったりしても、絶対に途切れないものだから。大切なのは当たり前。大事なのも当たり前。護りたいのも当たり前。そんなわたしの「家族」を、ずっとずっと誇らしく思いたい。
 
 ・・・・・・例え、最低賃金さえ払わないのに加えて、
 未成年をこき使う無能で非道な経営者になっていたとしても、だ。
 
 銀時への折檻(何をしたのかあまり覚えて居ないが今はぶっ壊れたドアと一緒に寝てる)を一通り終えたところで、室内を探索していたのだった。奥の部屋を進むと、糖分、という謎の字がドヤ顔をして立て掛けられていた。ヤーさんが座るようなでかいふたつのソファが部屋の真ん中に向かい合わせに置いてある。
 よく見るとその中央に、蜜柑の積まれたテーブルがあった。
 
 「ひとつぐらい。」
 
 と、手に取った。この季節の蜜柑は甘くておいしいのだ。ぴんぽん、と玄関でチャイムの音が鳴った。剥き掛けたその手を止める。
 「あ、はーい。」
 ぴんぽーん、ぴんぽーん、ぴんぽーん。鳴り止まない電子音。蜜柑を手に持ったまま急ぎ足で部屋を出た。
 「いや居ます出ますちょい待ってー。」
 廊下で泡を吹いている銀時と半壊したドアを飛び越える。ぴんぽーん、ぴんぽーん、ぴんぽん、ぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽ(ry
 
 「うるせェよ!」
 ドアを勢いよく開けて、手のひらにあった剥き掛けの蜜柑を思いっきりぶつけた。
 「うおおお?!誰アルか?!」
 広がる蜜柑の香りと真っ赤なチャイナ服に付着したシミ。——これは、もしかして。あの写真の女の子じゃあなかったかしらー、と。
 
 「えーと、その、すみません。成り行きと言うかですね。」
 蜜柑を投げる成り行きがどこにあるんだよと自分で思った。どこに罪を擦り付けようかと悩んでいると、ふと思いついたように。
 
 「そう!全てはあの男が悪い!」
 
 ビシィッ、と指を指した先は、あの白髪頭の男。
 
 客人用のソファの上にはわたしと神楽、と名乗る女の子。向かい側には銀時。
 
 「銀ちゃん、今日ミキちゃん家に行く予定だったけど、久美のマミーが事故ったらしいネ。だから帰ってきた。」
 「で?何?また悪夢の元凶家に引き連れてくれたの?」
 「違うアル!中々の使い手アル!あかねならかめはめ波撃てそうアル!」
 「さーすがのあかねちゃんでもそれは無理かなァ。サイヤ人にはなれないんだごめんね。」
 「どっちかっつーとお前はアラレちゃん系じゃね。」
 「何でさ。」
 「人外的なところが。」
 ああ、そう、と一瞥する。人外的なところって何だよ、お前は鳥○明先生に喧嘩売ってんのか。つかお前はフリーザ系だよなんか悲惨を通り越して滑稽なところが。お前なんか悟空にやられちまえ! 玄関の扉を開閉する音は耳に入らなかったみたいだ。近づく足音が聞こえ、手前でぴたりと止まった。
 「新八!」
 
 神楽ちゃんが叫んだ。
 
 「あ、銀さん。昨日うちに忘れ物しましたよね。駄目ですよちゃんとこういうのは持っておかないと・・・。」
 
 ちらり、と視線が移される。 きっと部屋には銀時しか居ないであろうと入ってきたと推測される。この青年も写真の一人だ。机の上に坂田、と書かれたオートバイの免許証が置かれた。
 
 「気にしないで。」
 
 と、戸惑う彼に言い放つ。
 
 「ああすいません、えーと、お客さんですか?」
 「身内の者です。東雲あかねと言います。」
 「銀さんの?」
 「はい、強いて言うならお母さんみたいな感じ?」
 「そうなんですかあ。」
 
 「銀時は他人に迷惑を掛けてないですか?」
 
 「「思いっきり」」
 二人の声が重なる。ああ、なんだかそんな予感はしていたけれど。
 「それでそれで?、ぎんときィ。あんたちゃーんと養ってやってるんだろうね?ほら神楽ちゃんこんなに細くっって。」
 「・・・うっ・・・うっ・・・あかね姉・・・。」
 「神楽ちゃん・・・。」
 わざとらしく、演技が掛かった口振りで、神楽ちゃんが言った。それに便乗して、こちらも演技に拍車が掛かった保護者のような面構え。まるで「ウチの子に何してくれるんです!」と言わんばかりの俗に言うモンスターペアレントの真似事までしているのだ。
 
 「むしろお前が大損害与えてんだろォ!?
 どんだけ世界の食料危機をコイツがいなきゃりゃマジ貢献できると思ってんのォ?!」
 
 「あんな男の言うことは嘘アル!
 今まで馬車車の如く働かされて給料も貰えない!挙句、満足に飯も食わせてくれないアル!」
 「へえええ、そうなんだあああ。」
 「神楽ァ!新八ィ!その前にこの女の言うことは聞くんじゃねェェ!
 何しろこいつは存在自体が詐欺まがいの三十路ババ・・・。」「死ねェェェェ!」
 
 蹴りが銀時のアゴに炸裂した。その衝撃で銀時は壁の方へ突っ込んで行き、派手な破壊音が響く。
 「こんにゃろ・・・!いつまで俺の家を壊せば気が済むつもりだァ畜生!」
 「上等!殺れるもんならやってみろ!」
 既に万事屋の室内やら商業スペースまでもが破壊されていたのだった。無論その度の行き過ぎた家族喧嘩は、お登勢の制裁が入るまで延々と続いたという。神楽の脳内の弱肉強食ピラミッドでは、自分と新八、そして銀時の上に「東雲あかね」という人物が加わった日でもあった。銀時、居場所があるんだね。帰るべきところ、あるんだね。おかしさの中に嬉しさも混じる。少し寂しい気もするけれど、新しい居場所の中で、わたしを必要としない優しい人達に囲まれて。
 あなたは生きていく。強いひとになってね、わたしのお願いを覚えてくれていたのかどうかは知らないけれど、こんな顔が見れただけでも良しとしよう。
