二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ジョ−カ−の国ののアリス ( No.11 )
- 日時: 2012/01/01 15:59
- 名前: 隼子 (ID: a1.gBlqJ)
- 参照: http://pasusitai
- 第三話 「エ−スとクロ−バ−の塔」 
 帽子屋屋敷のお茶会が終わった。今は昼の時間帯で、ブラットも眠いというし、みんなの顔が見られて私も少し安心したので次は塔に向かうことにした。
 今は昼だから、他の時間帯よりは明るくて、まだ安全だろう。この世界には一日というものは無く、昼、夕、夜という時間帯だけが不規則に変わる。昔は驚いていたが、今はそれほど驚かなくなった。
 (昼から夜になったことにビックリしていたわね)
 あれからどれくらいの時が流れたのだろう。
 今はクロ−バ−の塔に向かって、森を歩いている。森は明るい。それなのに嫌な臭いがする。
 「この匂いって・・・・・」
 これは血の匂いだ。間違いない。すぐ近くに殺人現場があるのだろうか。
 ガサガサ、・・・・・ザッ!!
 茂みの方で音がする。怖くなってギュッと目を閉じた。怖くて震えが止まらない。
 「アリス」
 誰かが私の名前を呼ぶ。聞き覚えのある声にホッとして目を少しずつ開いた。すると、エ−スの顔が私の顔の前にあり、ビックリした。顔が近すぎる。
 「わ!!?・・エ・・・・エ−ス!ビックリさせないでよ。」
 「え?ビックリした?ごめん、ごめん」
 彼はハ−トの城の騎士で軍事責任者のエ−スだ。騎士なのでいつも剣を装備している。髪の色はうすい茶色で、赤いコ−トを着ている。
 彼はしゃべり方はさわやかな騎士だが、よく迷子になる。本人は旅だと言っているが・・・・。
 (今もきっと迷子なのよ)
 「ねえアリス。君クロ−バ−の塔ってどこだか分かる?」
 「ええ。今から行くところなの。」
 「じゃあ俺と一緒に旅を楽しもう!!」
 「旅はしないわよ?目的地に一緒に行くだけ。旅は一人でしてきてちょうだい。」
 私はクロ−バ−の塔に向かって歩いて行く。エ−スは私の後ろをついてくる。旅をするつもりはないが一緒に行くのは問題ない。彼はこう見えて結構強いから、敵にあっても助けてくれる。
 「そういえば、さっき血の匂いがしたんだけど・・・・何かあったの?」
 「?・・・・あぁ!、うん。襲われちゃったから少し痛めつけておいたよ。」
 「殺していない?」
 「うん。・・・・虫の息だけど・・・あはははは」
 エ−スはさわやかに笑った。だが笑い事ではない。虫の息なんて・・・・ほとんど死にかけている。考えただけでも恐ろしい。
 「あれ?どうしたの?そんなに真っ青な顔をして」
 「あなたのせいで真っ青なのよ・・・!!グロテスク・・・・」
 考えているうちにグロテスクな想像をしてしまった。かなり気持ち悪い。ホラ−映画のような想像。
 「よく分からないけど体調が悪いなら暖かくしないと」
 エ−スは自分の着ているコ−トを脱ぎ私に着せてくれた。凄く暖かい。
 「ありがとう。でも・・・そういう事じゃなくて!!」
 説明しながら塔に向かって歩いた。
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 エ−スに『ああでもない』、『こうでもない』と言っている内に、クロ−バ−の塔に着いた。
 とても寒い。雪も降っているし、塔に着く前に、町では雪像も見かけた。どうやらここは冬みたいだ。振り向くと白銀の世界が広がっている。向き直って塔に入り、階段を上っていく。外よりは風がなくてマシだが、ここも寒い。体が凍えてしまいそうだ。
 「そういえば、エ−スってここへ何しに来たの?」
 エ−スはハ−トの国の時、ユリウスとは仕事仲間で、よく時計を回収しては、ユリウスのところに届けていた。・・・・なん時間帯も迷いながら。
 「何しにって、ユリウスに会いに来たんだよ。」
 「?」
 (ユリウスって確か、いなくなってしまったはずじゃなかったの・・・?)
 私の記憶では、ユリウスはクロ−バ−の国になった時に消えてしまった。
 彼は偏屈な男で、本当は優しいのに、ひきこもりで機械マニアなところがあったことが、記憶に残っている。髪の色が青で、私よりも長いのに、とてもきれいで、枝毛も白髪も一本も見つからなかった。ユリウスはここに居るのだろうか。
 「今回はユリウスは居るの?」
 「さあ・・・、それは俺にもわからないぜ。旅はそういうものなんだ!!」
 話がずれている。彼曰く、なんでもかんでも旅になるらしい。私から見ればいつでも迷子だが・・・・。
 今は廊下を歩いている。そこでグレイを見つけた。
 「こんにちは!グレイ」
 声をかけると彼は嬉しそうにこちらを向いた。
 グレイ「いらっしゃいアリス・・・・・・と、そこの騎士」
 エ−ス「酷いなぁ。俺はついでなんだ」そう言いながらエ−スは腰にある剣を抜こうとする。
 グレイ「はぁ・・・・・・」
 グレイはため息をつく。
 グレイ「すまないがナイトメア様に溜まった書類をやるように言っておいてくれないか」
 「・・・分かったわ」
 私はエ−スに貸してもらったコ−トを脱ぎエ−スに返した。
 「エ−スありがとう。温かかったわ。」
 「うん。どういたしまして」
 エ−スにお礼を言い、ナイトメアを探す。グレイはナイトメアの補佐官を務めていて、通称『トカゲ』と呼ばれている。髪の色はコン色で目の色が金色。いつもナイフを持っている。エ−スと同じくらい強い。
 彼はさっきため息をついていた。きっと今頃エ−スと戦っているのだろう。
 「それは危ない。ここに隠れていて正解だったよ」
 声のしたほうを見るとナイトメアがとんでもない場所に隠れていた。
 「あなたそんなところで隠れて何しているのよ。・・・・グレイが書類を終わらせるようにって言っていたわよ?」
 ここはナイトメアの部屋だ。隠れる場所はいっぱいあるが、自分の部屋で隠れているのを見るとなんだか違和感がある。
 (自分の部屋なのに隠れているって変じゃないかしら・・・)
 「へんでも仕方ないだろ−−−!?こうしていないとグレイが書類を持ってくる!しかも、ついでに薬まで持ってくるんだ!……うぅ…気分が悪い・・・」
 彼、ナイトメアはクロ−バ−の国になった時に夢以外で会えるようになった。夢魔で病弱なうえに薬嫌いで、病院嫌い。夢だけじゃなく現実でも空を飛べる。夢魔の能力はそれ以外にもまだあるらしい。
 「とにかく書類はやっときなさいよ」
 「嫌だ!私は偉いんだぞ!そんな事やりたくない・・・・!!」
 またいつものように駄々をこねる。どうにかしなければ・・・・。
 「ナイトメア、偉い上司っていうのはちゃんと仕事ができる人のことなのよ。偉い上司ならしっかり仕事をしなきゃ!」
 「うぅ・・・・・そ・・・そうだな・・・・・仕事してくる」
 カチャ・・・・・
 ドアをナイトメアが開ける。
 ガチャリ・・・
 そして部屋を出た後にドアを閉めた。
 ユリウスは今この塔に存在するのだろうか・・・。そんなことを考える。すると・・・
 「時計屋はいるよ」
 ナイトメアは夢の中にいるときのような口ぶりでそう言い、廊下を進んでいった。
 (ありがとう)
 心の中でお礼を言った。あの距離ならきっと聞こえているだろう。ナイトメアは振り向かず、行ってしまった。
 私はかつてユリウスのいた部屋のドアの前にいる。この部屋の先にユリウスがいるのだろうか。
 コンコン・・・・・
 ノックをして戸をあけた。
 ガチャ・・・・・
 戸をあけるとユリウスがいた。作業の手を止めてこちらを見ている。
 「おまえか・・・・何しに来たんだ?」
 いつものユリウスだ。顔を見ただけでも安心したが、いつもの態度だったことに安心する。
 「会いに来ただけよ。邪魔なら帰るわ。」
 「邪魔じゃない。・・・風邪をひかないように温まっていけ。」
 そう言われ部屋の中に入ると、暖炉のおかげで温かい。ポカポカする。
 私は隣の椅子に座り、ユリウスが時計を直している様子を眺める。なぜだかこうしているとすごく落ち着く。
 「こんなのを見て何が楽しいんだか・・・・」
 「落ち着くの。こうしていると楽しいし、懐かしい」
 ユリウスの手は魔法の手のようだ。器用に動いて壊れた時計を直していく。それを見ているのは飽きない。
 それを見ている間にいつの間にか私の目からは涙が出ていた。私の顔を見たユリウスは、軽くため息をついた。
 「何がそんなに泣けるんだ・・・?」
 不安そうな顔で見てくる。
 「嬉しいのよ」
 ユリウスに会えたことが嬉しい。ただそれだけで・・・・・・
