二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: D・Gray-man 〜銀色ノ死神ハ天ヲ舞ウ〜 コメ募集中! ( No.2 )
- 日時: 2012/01/07 15:08
- 名前: 月那 ◆7/bnMvF7u2 (ID: IsQerC0t)
- 第一夜 「少女は『鏡』という名の檻に繋がれて」 
 「ここ、・・・どこーーー!?」
 少女はただただ果てしなく続く真っ白な空間を目にし、絶叫する。
 「・・・(まいったなあ。鏡の中に入ったら、すぐ向こう側の世界へ行けると思ってたのに・・・)はぁ・・・」
 予想外の出来事に途方に暮れ、思わずため息をつく少女。少女の名前は逢生蓮華。今年で十三になったばかりだった蓮華—————通称レンはある目的のために、自分のいる場所とは異なる世界・・・別世界へ向かった、・・・はずだった。
 そして今の状況にいたる。レンは混乱し、その場を動き回るがどこを見渡しても何も無いことが分かり、だんだん慌て始めるレン。
 「どうしたらいいのよぉ〜!・・・でも、どうにかなるか!」
 何事も前向きに、というか自分に都合の悪いことは無視する性格のレンは笑顔で言う。
 すると後ろに音も無く、鎖で結ばれたガラスケースが現れた。レンは息を呑み、恐る恐る傍へと近づく。よく見ると中には人が入っていた。五、六歳ぐらいの少女だ。少女はは胸の前で手を組み、静かに眠っている。その姿はまるで死人のようで、ガラスケースも柩に見えてくる。
 「(こ、この子生きてるの?)」
 レンはそっと手を伸ばし、柩に触れる。すると、
 ——————バキンッ
 「えっ?」
 柩を結んでいた鎖が断ち切られ、蓋がゆっくりと開き、少女の姿が顕わになる。
 「(この子・・・なんかお母さんに似てる)」
 少女はレンの母に少し似ていた。薄紅の布に蝶が描かれた着物を身に纏い、長い黒髪の少女は、まるで日本人形のような可愛らしさがあった。ふと、その刹那、ゆっくりと少女の瞼が開かれ漆黒の瞳が顕わになる。そして起き上がる。レンはビクッと驚き二、三歩柩から離れる。少女は急にレンの方に顔を向け、口を開き、
 「ふ、ふわわあああぁぁぁぁ」
 大きな欠伸をしながら、伸びをした。少女のその動作に思わず、レンは転けてしまう。少女は眠たそうに言う。
 「・・・なぜ妾は目覚めたのだ?確か水仙に封印され、永い眠りについたはずだが?」
 ふわああ、眠い眠い。
 少女は目をこすりながら、宙に浮かんでいく。そこで、驚きのあまり口をあんぐりと大きく開け、呆けていたレンの存在に気づく。
 「そなたは誰だ」
 「・・・あんたこそ誰よ」
 レンも負けじと少女に問う。少女はレンを馬鹿にしたような目で、
 「あのなあ、人に名前を聞くときはまず、自分から名乗るものだぞ?」
 そんなことも知らんのか。やれやれ。
 少女に馬鹿にされたような口を利かれ、レンは怒りを込めて言う。
 「〜〜ッ!あ、あたしは逢生蓮華よ!」
 「んん?逢生・・・だと?」
 「ええそうよ!それがどうかした?」
 ちらっとレンは少女の方を見る。すると少女は目をキラキラと輝かせ、レンの顔面すれすれに近づいて来た。
 「なんとっ!あの逢生となっ!?そうか・・・ならばそなたは水仙の娘か?孫か?」
 「えっ、え〜と、孫・・・だけど・・・」
 『水仙』とは聞き覚えがある。それはお祖母ちゃんの本名だとレンは思った。
 「ふむ・・・そうか。なら、封印を解いたのはそなたか?どれ・・・」
 そう言うと少女はレンの顔を自分の顔に寄せつけ、額と額を合わせ目を閉じた。
 「?」
 レンは思わず?マークを浮かべるが、しばらくおとなしくしていた。すると、
 ————————キィィィイイン
 急に耳鳴りがしたがレンはしばらく我慢した。すると、少女は額を離し、宙へと浮かぶ。そして足を組む。そして右肘をつき、考え込んだ。
 「なるほど・・・な。そなたは確かに水仙の血を引いているが、それほど力はない。いや、無に等しいか」 それを聞き、レンは思わず拳を強く握る。
 「(なんでここまで来て言われなくちゃいけないのっ!!)」
 少女はレンの怒りを感じていたが話を続ける。
 「しかし、そなたはまた違う力を持っているようだな。・・・おもしろい。」
 少女はニヤリと妖しく笑う。レンは驚愕した。そして思わず口を開く。
 「ここはどこッ!?あんたは誰ッ!?どうしてその力のことを知ってるのよッ!!(・・・あたしとお姉ちゃんしか知らないはずなのにッ!!)」
 突然大声を出し、息が乱れたレンは呼吸を整える。しかしそれに動揺せず、少女は静かに答える。
 「・・・ここは異世界同士を繋ぐ空間。・・・いわば異世界へ向かう門の手前といったところだな。妾か?妾はこの空間の主だ」
 「はっはい?What?」
 レンは分けが分からないといったように言う。少女は呆れたようにため息をつき、
 「まあ、いい。続けるぞ。そなたの力のことを知っているのは、妾が・・・鏡だからだ」
 「えっ、どういう事? 鏡?」
 「そうだ。そなたに分かりやすくいうと、鏡の精、といったところだな。だから妾には姿が無い」
 「でっでも姿あるじゃん!あたしには見えるよ。はっ!もしかして幽霊?幽霊なの?」
 レンは少女を指差しながら言う。少女は少し怒ったように大声で言う。
 「だ〜か〜ら〜!鏡の精だと言っているだろう!この姿は幼き日の水仙の姿だ!」
 「じゃあ、なんであんたは・・・あんたって言いにくいわね。ねえ、名前は?」
 「名か?妾に名は無い。しかしここへ来た者たちはいろいろな名を付けたぞ。『門の番人』『白き天使』とな・・・」
 「じゃあお祖母ちゃんは?お祖母ちゃんはあんたをなんて呼んだの?」
 レンは宙に浮かび、悲しそうに目を俯く日本人形のような少女を見上げ、大声で聞く。
 「・・・水仙か?水仙は・・・、ちょうどよい。ひとつそなたに昔話を聞かせてやろう」
 「えっ、なんで?」
 「いいから黙って聞くがよい」
 そう言って少女は穏やかな口調で、しかし悲しみの混じった声で話し始めた。
 昔々、それはある遠き日のことでした
 〆 1月7日
