二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: BRAVE10*時守りの忍【原作沿い】 ( No.18 )
- 日時: 2012/01/31 22:30
- 名前: 勾菜 (ID: /qKJNsUt)
- ひゅっと才蔵は得物を構える。 
 「瞬光!!」
 ぱしんっと才蔵が摩利包丁をおさめるのと同時に、どさっと忍たちが地に伏せた。
 「ま、こんなもんよ!」
 「…お前たちの言うとおりだな、佐助、千」
 「——はい」
 「そうでしょう?」
 言いながら千はふっと笑みをこぼし、伊佐那海へと視線を移す。
 「いたたた…」
 ギシギシと未だに鎖に縛られている伊佐那海。
 その彼女に武器をもった忍が近づいて行くのが見えた。
 「伊佐那海!」
 叫ぶのと同時に地を蹴る。
 「殺った!!!」
 すさまじい勢いで振り下ろされる刃。
 キィィンっと澄んだ音が響いた。
 「っ…残念」
 言いながら千は受け止めた刃をはじき返し、すぐに相手の心臓を貫く。
 倒れた忍が伊佐那海へともたれかかった。
 「ひっ」
 ひくりと息をのむ伊佐那海が身じろいだため、彼女へともたれかかっていた忍はずざっと地へと落ちる。
 その際、彼女の頬に絶命した忍の血がべったりとつく。
 「——っ…」
 言葉を失う彼女の脳裏には、あの日の光景が浮かんでいた。
 がくがくと震える、伊佐那海へと千は近付く。
 「伊佐那海、大丈夫…!?」
 不穏なものを感じ取り、千はばっと後ろへ飛び退る。
 オォォンッと伊佐那海のつける簪から黒い球体のようなものがでて、あたりをつつみこむ。
 「なに…っ!?」
 ザッと千と才蔵の元へ佐助が飛び降りてくる。
 やがて、それがおさまるとその中心に伊佐那海がきょろきょろと辺りを見回していた。
 「??」
 「これは……すごいのう……木も剣も…人も全て朽ちとるぞ」
 そう言いながら幸村は伊佐那海に近づく。
 懐から手巾を出し、ぐしぐしと彼女の頬についた血を拭ってやりながら幸村はぼやく。
 「あの狸め。これを狙っておるのか?
 こりゃますます徳川に渡すわけにはいかんのう」
 血を拭い終わり。顔をあげる。
 「伊佐那海は真田が預かる。ここであれば安全だ」
 「え…」
 その言葉に伊佐那海は目を見開く。
 「さ…才蔵は!?」
 「俺は関係ねえよ!ここでお別れだ!」
 「そんなっ…一緒に上田にいようよ!」
 「カンベンしてくれ!お前みたいな女といると疲れる!」
 伊佐那海はどうしても才蔵とは離れたくないようだった。
 その気持ちは千にもある。
 久しぶりに会えたのだから、もう少し一緒にいたい。
 「…そうだ、才蔵」
 「あ?」
 「伊佐那海におソバ奢ってもらってたよね?」
 「そうよ!アタシに恩をかえそうとか思わないの、男のくせに!!」
 「なっ…それだったら千だって!」
 「あら、私は自分で払ったわよ?」
 「……」
 きっと才蔵は『あれは守ってくれてありがとうのソバじゃなかったのか!!!』って思っているに違いない。
 「なんだお前。女なんかに借りがあるのか!」
 心底意外そうな幸村。
 「……恥」
 淡々と、だが勘に触る言い方の佐助。
 2人ともこれにのったのだ。
 「それは返さんといかんなあ…男して」
 ニヤッと幸村は笑みをこぼす。
 「「肉体労働決定」」
 才蔵をあざ笑うような佐助に、何かを含んだような笑みを浮かべる千。
 才蔵はカチンッと自身の中で何かを聞いたような気がした。
 「頼んだよ才蔵!」
 うるせぇ女に甲賀物——
 それに昔馴染みと柄の悪ィ殿様——
 「勝手に決めんな!」
 ——久しぶりに血がたぎった——
 俺は——
 こういう場所を求めていたのかも知れない——
 ACT.1—終—
