二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 風の守護者とプリンと風紀、 / REBORN ( No.5 )
- 日時: 2012/05/06 12:23
- 名前: なゆ汰 ◆TJ9qoWuqvA (ID: w0.JbTZT)
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 標的03 / 孤高の浮雲
 「きみはむれないんだね」
 幼稚園桃組の教室にて、一人絵本を読んでいた私に、男の子の声がかかった。他の園児たちは集団となって外で遊んでいる。
 声がした方に振り向けば、黒い髪とつり目がちな鋭い目が伺えた。すぐにわかった。私が憧れていた人だ。誰とも群れず、一人で強く生きる〝孤高の浮雲〟。雲雀恭弥だった。
 「わたしはむれないのではありません。むれることができないのです」
 渇いた喉から出た言葉は我ながら意味のわからないものだった。けれど私にはその言葉が一番似合う。そうだ。私は弱い。群れなければ、誰かと同じでなければ安心できない、そんな女子高生だった。けれど今は違う。今は私が異質であるためか誰も近寄ってこない。したがって群れることが〝できない〟のだ。
 雲雀恭弥は意味がわからないというように眉間にシワを寄せる。
 「なにそれ。いみわからない」
 「わからなくてもいいです。わたしさえわかっていれば」
 思わず捻くれた口調になってしまった。いけない。こんなのだから私は昔から友達づきあいがうまくいかないのだ。
 急いで口元を押さえたが時既に遅しというやつだ。案の定雲雀恭弥は苛立ちを隠そうともせず顔をゆがめている。
 「きみ、むかつくね」
 「よくいわれます、よ」
 「……ふうん、ぼくにそんなコトバをつかえるなんて、キョウミぶかいな。おもしろい。」
 雲雀恭弥は、不適にわらった。くそうまだ子供なのになんでこんなに綺麗なのだろうか。なんて、綺麗な笑い方をするのだろうか。
 うらやましいことこのうえない。百面相をしながら私は悶々と考える。
 雲雀恭弥と、友達になれたらいいのに。そう思った。
 だから、私は。私は小さく唇を開いた。雲雀恭弥もそれに気づいたのか、私の言葉に耳を傾ける準備をしている。
 「……おもしろいついでに、きみと群れるキョカをいただけますか」
 「…ぼくにそんなこといったのきみが初めてだよ。いいよ、特別にキョカしてあげる。」
 雲雀恭弥はやっぱり綺麗に微笑んで見せた。
 嬉しさが腹の底から込み上げてくる。思わず笑みを零せば、雲雀恭弥は驚いたというように目を少し見開いて、そして、私の元へやってきた。
 どうしたものかと目を白黒させれば、雲雀恭弥が喋りだした。
 「きみのなまえは?」
 「……ちとせ。あさい、ちとせです。」
 「ふうん、ちとせ。ぼくはひばりきょうや。」
 「…きょうやくんってよんでいいですか」
 「…………すきにしなよ」
 自己紹介をして、その後、いっしょに幼稚園をサボった。
 この世界に来て5年。されど5年。だけど、一番楽しい時間だった。
 元の世界のみなさん。やっと、お友達ができた、よ。
 友達と呼んでいいのかわからないけど、あいまいな関係だけど。
 これから恭弥くんと、仲良くなれますように。
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