二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナクロ〜なくしたくない物〜キャラ人気投票&2000越え ( No.207 )
- 日時: 2012/12/30 17:53
- 名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: ysgYTWxo)
- 七話 「きらい」 
 「ん……?」
 光を感じて、俺は目をあけた。だけど、激しい光が目に入ってきて、思わずふたたび目をとじた。
 『あっ、おきましたか?』
 「え、ファイアリ!?」
 俺はハッとして、上半身をおこした。ファイアリはそんな俺を見て、ニッコリとほほえんだ。
 『どうしたんです? そんなおどろいて。』
 「い、いや……。ごめん。」
 『ふふふっ。風花さん、だんだん行動、おかしくなってきてますね。』
 「えっ、そう?」
 『ええ。にしても、風花さん、モテますね^^』
 「…………………………………ん? なに? 俺のこと好きになる奴とか、いるわけ?」
 『やっぱり、気づいてないんですね。たいへんですねえ、風花さんを好きになってしまった男性は。あ、女性もあり得ますね。風花さん、男装なさいますし。』
 あのー……ファイアリ、なにいってんの? 俺のこと好きになる人間とか、いないでしょ。もしいたら、たいへん失礼なのは存じ上げておりますが、脳を見てくれる病院や、眼科、精神科をおすすめします。
 「ファイアリ、なにいってんの?」
 『気づくまで、長そうですね。』
 「だから、おまえはさっきからなにいって……;;」
 『わからないなら、わからないでいいですよ。気づくまで、お話しするのはさけますね♪』
 「は……?;;」
 俺の顔が、思わずゆがむ。
 ……まじで、なんの話? もうすこしわかりやすくいってくれないと……。
 『あっ、そういえば、みなさん、特訓にでかけたみたいですよ? ……と、いいたかったんですが、どうやら雷門のみなさん、パーフェクトカスケイドに出会ってしまったみたいです。』
 「! ほんとうか!?」
 『ええ。……いきますか?』
 「あたりまえだろ! 案内してくれ。」
 『……わかりました。』
 ファイアリは、すこしためらったが、あなをぬけだし、道をかけだした。
 ☆
 俺たちがついたとき。
 そのときには、ちょうどフェイが化身を発動したところだった。
 「ぼくはきみのこと、きらいだけど、いまだけ力を貸して。仲間のために!」
 ……きらいだけど、か……。
 俺は、チラリとファイアリを見た。ファイアリは、うつむいて、地面を見つめている。やっぱり、かんがえていることは一緒、か……。
 「ファイアリ、あのさ……。」
 『あっ、き、気にしないでください。』
 ファイアリは、ハッとして顔をあげ、むりやりわらった。でも、その笑顔は、だれがどう見ても、ひきつっている。だけど、どうしてもそこにはふれられなかった。
 だって、ファイアリがこんな笑顔をつくらなきゃいけないのも、うつむいてしまうのも、ぜんぶ、俺のせいなんだから。
 「アームド!」
 「あっ……。」
 俺は、フェイの声で、フィールドに顔をふりむかせた。フェイの化身がアームド。しかも、ミキシマックスしたまま。あれって、もしかして……。
 『フェイさん、ビッグさんとミキシマックスなさっているみたいですね。』
 「ああ。……すげーな。」
 『体力があれば、風花さんにも、可能だったはずですよね……。』
 「いいよ。ファイアリやアクアのせいじゃない。」
 『そういえば、アクアさん、いってました。わたしかアクアさんのどちらかを消せば、体力はあるていどもどってくる、と。』
 「えっ……!?」
 俺はふたたび、ファイアリを見た。ファイアリはそのとたん、俺から目をそらし、話をつづける。
 『どちらにしますか? 風花さん。』
 「そ、そんなの……! でも、アクアを実体化させたりとかしなかったら、その分体力はつかわれないわけだから、なるべくアクアを発動させなきゃいい話じゃ……。」
 『じゅうぶんな体力は、もどりませんよ?』
 「……体力をとりもどしたいと思ったことはあっても、おまえたちのどちらかを消してまでとりもどしたいとは、思わない。」
 『やっぱり風花さん、ちょっとあまいですよ。いつか、裏目にでても、知りませんから。』
 ファイアリはそういい、そっぽをむくと、俺のからだのなかにとけていった。
 「……あまい、か……。」
 そうだよな。わかってる。
 だれにだってあまいんだ。初対面の人間にも、あますぎた。
 だから、あんな後悔をしたんだ。
 知ってるくせに、ファイアリ。
 「っ……。」
 目のまえが、ぼんやりかすみはじめた。
 泣いてるんだ……よな。
 「いま泣いたって、むだなのに……。」
 俺は、ゴシッと目をこすった。
 ☆
 「あっ、ユエ!」
 「ああ、天馬……。」
 「どうしたの? なんか、元気ない気がするけど。」
 かけよってきた天馬が、俺を見ていった。
 よく見てるんだな……。
 「べつに、なんでもないよ((ニコッ」
 「そ、そっか。」
 「お兄ー、もー、ずっと寝てたわけ? ったく、髪バッサリ切りやがって!」
 と、そういった友撫は、思いっきり俺のあたまを、グーでたたいた……。はっきりいいます。めちゃくちゃいたいです……。
 「いたいよ、友撫……。」
 「あ、ごめんね☆」
 「あやまられてる感じが、あんまりない気がする……。」
 「気にしなーい、気にしなーい☆ あっ、そうそう! フェイくんね、きょうミキシマックス、アーンド化身アームドしたんだよ!」
 友撫はそういって、高くぴょーんとはねてみせた。俺はそれにあわせて、ニコッとわらう。
 「そっか、すげーな! さすがフェイ!」
 「えっ、なにかいった?」
 「お兄にね、フェイくんがミキシマックスと化身アームドしたって話ししたの!」
 「あ、それは……。」
 「すごいじゃんか。さすがフェイだよ。」
 俺はそういって、フェイにほほえみかけた。フェイはそれ以上なにもいわず、ぐっとおしだまった。
 「? フェイくん?」
 ごめんな、フェイ。なんか、ちょっとおどすようなわらいかた、しちゃってさ。
 でも、これ以上なにもききたくなかった。
 ただただ、ファイアリを思い出してしまうから……。
 トーブたちと話しているのを、風花を通じてながめていたファイアリは、ふいと顔をそむけた。そばにいたアクアが、そんなファイアリを見て、ふっとほほえむ。
 『どうした? そっぽなんかむいて。』
 『べつに。そっぽなんか、むいてません。……でも、うらやましいなって。』
 『ああ、風花たちのことか。』
 『ほら、わたしたち、両親に「外にはこわーいおばけばっかりだから、めったなことがないかぎり、でちゃいけません。」っていわれてたじゃないですか。だから、ひととふれあう機会なんて、めったになかったですし……。だから、あんなふうにみなさんと楽しそうにしている風花さんが、うらやましいなって。』
 それをきいたアクアは、視線を下におとした。とても見ていられない。このことを語る、ファイアリの顔なんて……。
 『もういちど、やりなおしたいなって、すこし思ってるんです。』
 『えっ……?』
 『もしかしたら、風花さんやアクアさんに、会えないかもしれないけれど。でも、ほんのすこしだけ、人生をやりなおしたいって、思ってるんです。』
 『……わからなくもない、その気持ち。』
 わたしも、最近そう思う。
 アクアはそういいかけて、やめた。いまのファイアリには、きっと、アクアとはべつの理由があって、人生をやりなおしたいと感じているのだろう。アクアは、ただ、本能的にやりなおしたいだけであって、特にこれといった理由はない。
 そんなわたしに、いう資格なんて——。
 『アクアさん、お話、きいてくださって、ありがとうございました。なんか、ちょっとスッキリしました。』
 ファイアリはそういって、アクアにほほえみかけた。
 ここであわせなくては。そう思い、アクアもニコッとわらった。
 『そうか。なら、よかった。』
