二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 黒子のバスケ〜二人で一つ〜 ( No.151 )
- 日時: 2012/09/17 15:08
- 名前: このみ (ID: cFLcjEJH)
- 続きです 
 桃井宅。
 「ただいまー」
 『ただいま……』
 なつきが風邪気味だというのは嘘ではない。
 先程からくしゃみを連発しているのだ。
 二人は制服をハンガーにかけて干すと、とりあえず風呂に入った。
 なつきが髪の毛を乾かしている間に、鞄を開ける。
 鞄の中からは、ひどい有り様になったノートが出てきた。
 やられた。そう思った。
 自分達がトイレにいる間に、他のメンバーがノートを切り刻み、落書きをしたのだろう。
 『……さっちゃん、ドライヤー…。……どうか、したの……?』
 「ノートやられちゃった。多分、なっちゃんのもやられてると思う」
 『……』
 ごそごそと鞄を漁ってノートを取り出す。
 それはビリビリに破かれ、落書きがされてあった。
 『死ね』『ブス』『消えろ』『ウザイ』『キモい』………。
 もう世の中の全ての悪い言葉を書いているんじゃないかって位あふれでてくる単語たち。
 流石に『死ね』『消えろ』は心にグサリと刺さった。痛い。心が。
 『…………新しいノート、買わなきゃ……だね』
 「……うん」
 泣かないように、それについてはお互い触れない。
 逃げているのは分かっていても、いざそれに直面してしまうと、止まらなくなるから。それを、知っているから。
 目を逸らして、気付かないフリをする。
 19時58分、ピンポーンと音がした。
 父や母が帰ってきたのだろう、そう思ってドアを開けた。
 しかしそこにいたのは両親ではなく、色黒の幼馴染みだった。
 『大、ちゃん……。どうしたの』
 「お前、風邪引いたんだろ?見舞いだよ、見舞い」
 相も変わらず彼は顔に似合わず優しい。
 テツ君が大ちゃんを「光」だと言うのもわかる気がする。
 『風邪気味なだけで、引いては………ないよ』
 「あ?かわんねーだろ、別に。あ、テツがお大事にだとよ」
 『……ありがとう』
 「上がっていいか?つーか上がるぞ」
 『あっ、大ちゃん……』
 彼はズカズカと自分の家のように入ると、迷いもなく私達の部屋のドアを開けた。
 幼馴染みと言えど、年頃の男女としてそれはどうかと思うがまあ、見られてはいけない物などないし、良しとしている。
 …………見られては、いけない、物………。
 『っ!!!!』
 ノート…………!!!まだ机の上に乗ってる!
 『大ちゃん!!』
 「あー?なんだよ」
 『ちょっと、出て……出てきて!!』
 「……は?」
 大ちゃんの服をつかんでグイグイと引っ張る。
 部屋から出すと、不機嫌そうな低い声が降ってきた。
 「何すんだよ。あ、パンツでも落ちてんのか?」
 『…………うん、そうだから、………入んないで』
 「マジか」
 いやまぁ嘘ですけどね?
 「あれー!?青峰君、なんでいるの!?」
 「うっせーよ、さつき。どこ行ってたんだよ」
 「トイレ!だからなんでいるの!?」
 「見舞い」
 「は?……あぁ」
 「パンツ片付けとけよ」
 「………は?」
 「んじゃ」
 大ちゃんは片手を挙げると、玄関に向かった。
 その途中、立ち止まって、
 「さつき、なつき」
 『「??」』
 「俺は馬鹿だから、お前らが言わなきゃ、何もわかんねぇ」
 『……大、ちゃ』
 「じゃあな、明日は部活来いよ」
 バタン
 『……なんか、もう……バレちゃってる、な……』
 「きーちゃんも、気付いてたもんね」
 『…大ちゃんに、部活来いなんて………言われるとは思っても、みなかった……』
 「……そうだね」
 彼はもう、あのノートを見たようだ。
 双子と青峰編、終。
 (本当に、顔に似合わず優しい)
 (眩しいよ)
