二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマGO 金色の懇願姫 ( No.23 )
- 日時: 2012/08/08 19:08
- 名前: ドロップ ◆8WWubVa7iM (ID: lkF9UhzL)
- 六つ目の御話 「悲劇の姫」 
 とある喫茶店。
 「私がおごるから、好きなものを頼め。」
 「は、はい…」
 マサキは少し恐縮しながら、メニューを開いた。
 「じゃあ…ホットココアで。」
 「私はミルクティーにチョコレートパフェに白玉あんみつで。」
 「そっ…そんなに頼むんですか。」
 「心配しなくても、お前には渡さん。」
 心からの笑みだった。
 * * *
 一通り頼んだものがウェイトレスによって運ばれ、
 テーブルの上に並んでいる。
 「そんなに食べれるんですか…?」
 「欲しいのか?」
 「いえ…」
 そう言って和奏は、チョコレートパフェを食べだした。
 「ま、食いたいもんあったら追加してもいいからな。」
 「はい…。」
 ——この人、案外姉御肌なんだなぁ。
 「それで、この街に来た理由ってなんですか?」
 「え?あぁ、そっか。
 話があるからここに来たんだっけ。」
 どうやら、目的を忘れていたらしい。
 本当に大丈夫か、この人。
 「日本でも仕事が売れるようになったからな。
 だからまたここに来た。」
 「そういえば、最初は外国で売れたらしいですしね。」
 「まぁな。
 …それに、あいつに家事任せきりだからなぁ……」
 「え?あいつ?」
 「い、いや!?何でもないんじゃないか!?」
 和奏は、慌てたように手をバタバタと振った。
 「…それで、俺に聞きたい事ってなんですか。」
 「あぁ…。」
 和奏は、ミルクティーを人のみしてから、真剣なまなざしでマサキに話しかけた。
 「お前、“金色の懇願姫”って、知ってるか?」
 「え?」
 ——知ってるも何も、俺は本人に会ってるからなぁ。
 「知って…ます、けど」
 「そうか。
 いいよなぁ、願いを叶えてくれるんだって?」
 和奏は、しぶしぶと羨ましそうに言った。
 マサキは、反対に張りつめたように心臓が痛くなっていた。
 ——神無月先輩の事を、なんでこの人が話すんだ…?
 「悲しい話だよな。」
 「え…?」
 ——悲しい…?
 「あの、それって…どういう、」
 「お前、この話知ってるんじゃないのか?」
 「知ってますけど…、かなしいって…?」
 和奏は、苦虫をかみつぶしたように渋い顔になった。
 「…そうか、お前はその事を知らないのか。」
 「なにか…ッ、なにかあったんですか!?」
 そして、和奏は二千円札をテーブルの上においた。
 「悲しい話だよ。
 誰にも覚えてもらえないっていうのは。」
 「覚えてもらえない…!?
 どういう事ですか!?」
 「お前は知らなくていい。
 いずれ、自分で真実を見つけろ。」
 和奏は出口に向かって歩き続けた。
 「待ってください!
 ……月川さんは、なんでこの事を調べているんですか…?」
 そして、和奏は微笑んだ。
 「懇願姫と私は、似ているからな。」
 そして、和奏は喫茶店を去ってしまった。
 「クソッ……、どういう、事だよ。」
 マサキは、ただただ一人で立ちすくんでいた。
