二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 名探偵コナン —最後の銀弾(シルバーブレッド)— ( No.52 )
- 日時: 2012/08/26 18:14
- 名前: 未熟な探偵シャーリー ◆CwIDAY6e/I (ID: 7NQZ9fev)
- File09 再会 
 そうっとトランクの蓋を持ち上げて、辺りを見渡した。
 木々が生い茂っていて、何メートルか先に落下防止の策がたててあった。
 誰もいないことを確かめて、アリスは滑るように外に出た。
 右方向に古びた小さなビルのようなものが建っていた。
 窓ガラスは割れていて、メインの入り口は板で全て封鎖されている。
 きっと裏口かなんかがあって、あの黒ずくめの2人組みはそこから入ったのだろう。
 アリスは好奇心で、その建物に近寄った。
 一見、怪しい雰囲気で誰も寄せ付けないような廃墟だが、窓から中を覗くと、床も綺麗に掃除されていることがわかる。
 余程潔癖症の人なのか、物好きの人なのか、あるいは清潔に保たなくてはいけない事でもあるのか。
 足元に大きめの石を積み上げて、アリスはガラスにあたらないように充分注意して中に入った。
 ドクドクと心臓の音が聞こえる。耳元に心臓があるみたい、とアリスは心の中で呟いていると、薄っすらと薬品の臭いがあることに気づいた。
 今の所人の気配は背後にもどこに感じられず、アリスはこの臭いの元をたどる事にした。
 臭いを頼りにあっちこっち廊下を曲がり、この臭いの元と思われる部屋を見つけた。
 ドアについている小さめの窓から中を覗いてみると誰もいない。
 ドアノブをまわして、中に入るとビックリするほど薬品の臭いが漂っていた。
 フラスコなど、よく実験室で置かれている実験器具がそっくりそのまま置いてあり、沢山の文書などが無造作に置かれていた。
 色々見てると、四、五枚のメモリーカードが散乱してあって、アリスは何気なくその一つを手にとった。
 その時。
 『!?』
 『声を出すな』
 突然何者かに両手を拘束され、口に手が押さえつけられた。
 そして無理やりしゃがませ、ダンボールがつまれている物陰に一緒になって隠れた。
 するとドアから2人のあの黒ずくめの男が入ってきた。
 『苦労しているようだな、例の薬作るのに』
 長髪の男が最初に切り出した。
 『まぁ仕方ないでしょう。あの女がいなくなってしまったんですから』
 次に体格のいいサングラスかけた男が言った。
 あの2人はアリスたちには気づいていない様子で、アリスはホッとした。
 見るからにやばそうな雰囲気が漂ってくる。
 『フン、まあいいさ。あの女がいなくなったところで、薬の完成は遠のくが、実現しないわけじゃない。あの女の始末は、ベルモットやあの気にくわねえ秘密主義者がやってくれるだろうよ』
 『でも、あの女、どこに隠れていやがるんでしょうね。あのベルモットでさえもまだ見つけてないらしいですし……』
 『ウォッカはあの2人の実力をみくびってんのか?』
 『そ、そういうわけじゃないですが、ジンの兄貴に何も言ってこないですし……』
 薬?あの女?ベルモット?秘密主義者?ジンの兄貴?ウォッカ?
 チンプンカンプンな会話を残して、二人はこの部屋を出た。
 足音も聞こえなくなった頃、アリスを押さえつけていた力がフッと緩んだ。
 『全く、何でお前が……』
 『アル!!』
 すぐにアルフィオの声とわかって、アリスは涙ぐんだ。
 アルフィオの額には大粒の汗が伝っている。
 『わ、私、たまたまあの男達の車に乗り込んじゃって、後は、その……好奇心で……』
 『好奇心で運悪く殺される場合もあるんだぞ!?』
 しどろもどろに弁解するアリスに対して、アルフィオは子供を叱り付ける様にして、アリスを小声で叱りつけた。
 小さくごめん、とアリスが呟くと、過ぎてしまったことは仕方ないと言わんばかりのため息をついて、近くの椅子にかけてあった白衣をアリスにかぶせた。
 『お前をここから出す』
 『ねえ、アル。ここって何なの?』
 『ある薬の研究室。で、俺は助手。キャメルから聞いただろうけど、これは仕事なんだ。今は時間も無いし、さっさと行くぞ』
 『何の薬?ベルモットと秘密主義者って?ジン?ウォッカ?皆お酒の名前だよね。これって何の組織?』
 『質問は後にしてくれ』
 ドアの小窓を見ながら、アルフィオは警戒してドアを開けた。
 アリスは質問しても返ってこないということを悟って、口をつぐんだ。
 『いいか、堂々と歩け。ただ話しかけられても、何も答えるな。オレがなんとかするから。外に出たら全速力で逃げろ。後ろ振り返らず』
 『ア、アルは……死ぬの?』
 恐々と尋ねるアリスを見て、アルフィオは頭をクシャッと撫でた。
 『そんな顔するな』
 久しぶりの兄の笑顔で、アリスは落ち着いたが、不安は全て拭えなかった。
