二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: アヴァロンコード ( No.330 )
- 日時: 2012/11/24 01:11
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
 第七章 雷の精霊
 —雷が天空にそびえる塔を打つ時
 御使いは再び見出される
 守護者の間を出てくると、そこにはアンワールがいた。
 身の程もある剣を構えていたが、ティアの姿を見るなり剣を下ろし、道を譲るように一歩引いた。
 その奥には、エエリがおり、ティアの姿を見てうなづいた。
 「ついに預言書を取り戻したようじゃな」
 そして悲しそうにちょっと目を細めた。
 「やはり、預言書は絶対だったのじゃ・・・滅びることも、すべて・・・」
 そして悲しげに微笑みながらいった。
 「姉にはそれが理解できなかった。悲しいことじゃ」
 あ・・・とティアはオオリの死を告げなくてはと思った。
 でもどこか悲しそうなエエリは、すでに姉の死を知っているのかもしれない。
 するとその表情を見取ったのか、エエリがいう。
 「ワシにかわって姉を止めてくれたこと、感謝するぞ。きっと姉は・・・最後に悟ったはずじゃ。世界を手に入れることが出来ても満たされないと・・・」
 そして、ふっと悲しみを振り切った表情をするときりっと厳格な表情になった。
 脇に控えているアンワールはエエリの目配せに頷いてそっと守護者の間に消えていった。
 「よいか、ティア。今、おぬしの預言書は力を失っておる」
 預言を守ってきた神官の言葉だ、とても詳しそうである。
 ティアはなんとなく威厳の無い預言書を抱きしめて聞き耳を立てる。
 一言も逃せない。
 「失われた御使い・・・」
 「精霊たち・・・?」
 エエリがそういうと、ティアは反射的につぶやいていた。
 それに頷いたエエリは先を続ける。
 「精霊たちを取り戻し、預言書の力を取り戻すのじゃ」
 ティアは心臓が飛び跳ねるような感覚を味わった。
 (もう一度・・・精霊たちに会えるのかもしれない!!)
 一気に心拍数が上がり、わくわくする。
 「精霊たちは四つの竜の波動に囚われておる。その一つは今、おぬしの国の城、天空に続く塔におる」
 「!!」
 フランネル城にはその中枢から伸びる美しい白亜の塔があるのだ。
 その塔は雲よりも高く、千年前からあるらしい。
 とにかく、歴史ある優美な遺産であり、カレイラでも有名である。
 そんなすぐそばに精霊の一人がいたとは!
 驚くティアにエエリは問う。
 「あの塔がなんなのかわかるか?」
 ティアはわからず首を振った。
 神へ祈る塔だと聞いた事はあるが、その他のいわれもあってどれが本当か分からない。
 だがエエリはそれを知っている様だった。
 「あの塔はこの遺跡と同じ、過去の悪しき遺産なのじゃ」
 エエリは遺跡内を見つめながらいった。
 「はるか昔、我々人間が魔王と呼んだ者に対して放った天空槍なのだ」
 魔王に対して放った天空槍・・・。
 クレルヴォに放たれた天空槍・・・?
 「天空槍は塔の中心に覆い隠されはるか地下まで届いておる。その悪しき穂先は今もかの者の身体を貫き、そこに縛り付けているじゃろう」
 クレルヴォが貫かれ、カレイラに千円間もいる・・・。
 しかもヴァルド皇子の中にいるクレルヴォは自分の身体を求めている・・・。
 となればワーマンたちはカレイラに向かっていくだろう・・・。
 すべてが分かったティアは戦慄が走りカレイラの危機を知る。
 「しかし、永き時の中でかの者の精神は肉体を抜け出し、さまよい出た。我々人間達に復讐するためにな」
 ティアは預言書を抱いたままここに精霊たちがいなくてよかったとそっと思う。
 エエリの口調だと、クレルヴォは倒すべき存在のように聞こえる。
 きっと彼らは悲しがるだろうし、悔しく思うだろう・・・。
 「そしてあのワーマンの小細工により新たな身体を得たのじゃ。それがヴァルド皇子じゃ」
 エエリはティアに知っていることすべてを教えようとしゃべり続けた。
 「世界を統一し、世界を堕落させ、世界の崩壊を早める・・・預言書を再び出現させ、次の世界を我が物にしようと企んでいるに違いあるまいて」
 たったと背後より足音が聞こえてきてエエリが目をつぶる。
 きっとアンワールが帰ってきたのだろう。
 ティアの横に立つアンワールは血で少し染まりながらもオオリを抱えている。
 そしてちらりとティアの腕を見た。
 ティアの腕も力なくぶらぶらしており、手には小さな穴が開いている。
 そこからはずっと出血していた。
 「この世界の長い歴史は戦いの歴史でもあった」
 エエリがアンワールの視線で頷きつつ指をぱちりと鳴らす。
 するとその手から淡い緑の光があふれてきてティアの手を包んだ。
 ビックリしているティアにかまわずエエリは話を続けていく。
 「しかし間もなくその歴史も終わる。ティア、おまえさんがこの歴史に終止符を打つのじゃよ」
 右手を包んでいた光が消えるとすっかり腕が完治していた。
 だがそれは神経痛の被害だけであり、手には痛々しい傷が残っている。
 それに驚き目をぱちくりしているとエエリは微笑みいう。
 「まじないによって痛手を負ったところはまじないで治せる。だが、その手は無理さね。包帯で我慢しておくれ」
 そしてアンワールにティアの治療を任せ、エエリはオオリのなきがらを見つめていた。
 「価値あるものはどんなに力を持っていても見つからないものさ。けれど何も持っていなくても見つけられる・・・気づかなかったのかい、姉さん」
 その亡骸を撫でてエエリは寂しそうにつぶやいた。
 アンワールに包帯を巻いてもらい止血もしてもらったティアは二人に見送られていた。
 「世界の破滅は近い。行くがいい・・・」
 別れ際やっとしゃべったアンワールは今回はティアを引き止めることをせず見送ってくれた。
 そして二人に背を向けてティアは精霊を取り戻す長い旅に出た。
 目的地は、ティアの愛する故郷、カレイラ。
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 久しぶりの2000文字
