二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: アヴァロンコード ( No.503 )
- 日時: 2013/01/29 00:06
- 名前: めた (ID: g7gck1Ss)
 第十三章 安息
 ‐限られた時は緩やかに流れ
 地にある命は
 最期の輝きを放つ
 いずれ来る世界を照らすように
 ティアが精霊たちとのほほんとした時をすごしていたとき、ヒースとレクスによって地上に引き上げられたヴァルド皇子とワーマンはと言うと・・・
 「なぁ、生きてるのか・・・?」
 伸びているだけのワーマンはともかく、ぐったり完全に力の入っていないヴァルド皇子の身体をつついてレクスがいう。
 「わからん・・・普通に考えれば死んでいるな」
 硬く目を閉じているヴァルド皇子の顔を覗き込み、ヒースが自身の顎を掴んで首をかしげる。
 すっかり平和になったとはいえ、ヴァイゼンとカレイラは今だ戦争中なのは変わりない。
 ヴァルド皇子の身体に魔王の魂が入っていた、などという情報はごく一部のものしか知らず、死体の皇子を連れ帰ってもヴァイゼン帝国が荒れるだけである。
 しかもすでにヒースは帝国に戻れる身の上ではない。
 そこにヴァルド皇子の死が伝われば、カレイラとヴァイゼンの対立はますます磨きが掛かるだろう。
 もしかするとティアが遅くさせた崩壊への歯車を加速させるほどの戦争を仕掛けるかもしれない。
 「とにかく、皇子は死んでいる。ワーマンによって魂を取り出されて、新しいのが設置されたはずだからな」
 「と、とりあえず墓でも掘っておく?丁度ここは墓地だし」
 レクスが引きつった笑みを浮かべてそういうと、何かがこちらに走ってくる足音を聞きつけて振り返る。
 見れば、墓地の入り口にドロテア王女がいるではないか。
 走ってきたようで肩を上下させながら、何かを追っている。
 その女王の前に、真っ黒の塊が踊るようにこちらに飛び跳ねてくる。
 一瞬魔物かと思って身構えたが、それは単なる黒い猫だった。
 「待つのじゃ、グリグリ!急に走り出して・・・墓地に何のようじゃ?」
 どうやらドロテアは猫を追っているらしく、猫は丁度ヴァルド皇子の死体の前で止まった。
 「・・・・!! ヴァルド皇子?!」
 後を追ってきたドロテアがその光景を見て悲痛な声を上げる。
 そして駆け寄ると、その死体にそっと触れた。
 死体はまだやわらかいが、そのうちに硬くなってしまう。
 「のう、ヴァルド皇子は・・・」
 恐る恐る聞いたドロテアに、ヒースは首を振ってつぶやく。
 「残念だが・・・皇子はもう何年も前に命を落としている。今までの皇子は操られていたに過ぎない」
 そんな!と口元を押さえたドロテア、本来の主人であるヴァルドの死体に体を押し付けるグリグリ。
 猫的な甘え方なのだろうか?
 主人を悼んでいるように見えるその光景は、どこか切ないものがあった。
 緑茶さん こんばんわー!
 小説かいてるんですね?!ぜひ見にいきたいんで、題名を教えてくれるとありがたいです!
 残りもがんばりますよ!
 最後になりましたが 参照10100越えました!
 ありがとうございます!
- Re: アヴァロンコード ( No.504 )
- 日時: 2013/01/29 17:50
- 名前: めた (ID: g7gck1Ss)
- ヴァルド皇子が死んでいる、目の前で。 
 ドロテアはヒースに言われたことの半分も理解できぬまま、呆然とその人に視線を落としている。
 黒い鎧に身を包むその人の横顔をひっきりなしに小突いているグリグリ。
 真っ黒のきれいな毛並みのその猫が、ついに目覚めない皇子の頬に三つの小さな引っかき傷をつけた。
 「こら、駄目じゃグリグリ!!」ドロテアが叫び声を上げて猫を掴もうとするが、猫はその手をするりとかわして急に光を放った。
 しっぽと体中の毛を逆立ててその体から白いもやがあふれ出る。
 蛍のような弱弱しい光ではなく、雷鳴が光ったときのようなフラッシュの後、うっと誰かがうめいた。
 それはドロテアではなく、ヒースでもレクスでも、はたまたグリグリでもない。
 「皇子・・・・?」お互いに顔を見合わせあった後、ヒースがゆっくりと横たわる死体に声をかける。
 「・・・・・」やはり死体は声を出さず、聞き間違いだったようだ。
 なんだ、と期待はずれのような表情をしてその場にいた彼らは肩の力を抜く。
 猫は先ほどより死体に興味を持たず、ドロテアの手から逃れようともがいている。
 そんな猫を眺めながらレクスが不思議そうにつぶやく。
 「それにしても、あの猫は一体・・・?何で光ったんだ?」
 「傷口を通って魂を身体に戻すために、だよ」
 その場にいた全員がうわあ!と叫んで飛び退る。
 呑気そうな猫、グリグリでさえも毛を逆立ててドロテアの足元に逃げ込んでいる。
 その顔はみんな蒼白であり、ヴァルド皇子を注意深くみている。
 先ほどまで三人に囲まれていた死体、ヴァルド皇子がむくりと起き上がってそう口走ったからだ。
 「グリグリまで・・・ひどいな」
 その避け様に、ヴァルド皇子が眉を寄せてつぶやく。
 「生きてる・・・?」
 そんな皇子をはるか遠くより見て、ヒースたちがお互いに確認のように声を掛け合う。
 ドロテアは本当はうれしいのだが、引きつった笑みを浮かべてヒースに頷いている。レクスなど硬直気味だ。
 「確か、ワーマンの術は成功したのでは?」
 「いや、ワーマンは取り出した私の魂を放り出したままにしたんだ。だから、そばにいたグリグリの中に逃げ込み、どうにか一命を取り留めていた。いずればれてしまうと分かっていたから、カレイラの街へ逃げたんだ」
 おお!と納得したようにドロテアが叫ぶ。
 「じゃから、いつもヴァルド様のそばを離れないグリグリが一人、カレイラにさまよっていたのじゃな!」
 身体を奪われて猫に入り込んだヴァルドを拾ったのは、ドロテアだった。
 ドロテアに引き取られて、魂だけは守り抜いたヴァルド。ここにきて、クレルヴォの魂が自身の身体を捨てたことを知り、気配をたどってここまで来たと言うわけだ。
 そして本来あるべき姿に戻ったヴァルド。
 猫の身体に入り込んだ記憶もそのまま、魔王にのっとられた体が一体何をしたのかを知っていた。
 「あれは私のせいではなかったにしろ・・・その事実を知るものは少ない。ここにいては、まずい」
 ヴァルドはすばやく立ち上がると、その赤い目でヒースを見上げた。
 「私はもう帝国に戻れぬ身であります・・・だが、旅のお供ならば」
 理想の世界を創ると約束した皇子に戻ったので、ヒースが従わないわけがなかった。
 うん、ありがとう、と頷いたヴァルドはドロテアを見る。
 ドロテアが何か言う前に、ヴァルドは自分の足元に擦り寄っていたグリグリを抱き上げるとドロテアに渡した。
 「君には世話になったね。きっと、グリグリもそちらの暮らしの方がいいと思うんだ。ここには猫じゃらしもあるし・・・」
 うん、と頷いたドロテアにちょっと微笑みかけるとヒースとヴァルド皇子はすばやくカレイラを後にした。
 「行っちまった・・・コイツをおいて」
 猫を抱くドロテアの足元で伸びるワーマンを指差しながら、レクスがつぶやいた。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 参照 10200 越えました!!
 ヴァルド皇子生き返りましたね
- Re: アヴァロンコード ( No.505 )
- 日時: 2013/01/29 18:33
- 名前: 緑茶 (ID: XYPQad4D)
- めたさん こんばんは〜! 
 参照10200 おめでとうございます!!
 私の小説を読んで下さるのですか!?
 私は 二次造作(映像)板で「牧場物語 ふたごの村」 と言う小説を書いています。
 駄文の塊ですし、亀更新ですし…読んでも何も良い所がありませんよ?
 本当に めたさんの文才が羨ましいです…( ;∀;)
- Re: アヴァロンコード ( No.506 )
- 日時: 2013/01/29 21:19
- 名前: ゆめ (ID: pbINZGZ2)
- こんばんは! 
 お礼だなんてとんでもないです・・・O(><;)
 最後まで頑張ってください!
 この小説が終わっても、見に来ますから!
- Re: アヴァロンコード ( No.507 )
- 日時: 2013/01/30 00:33
- 名前: めた (ID: g7gck1Ss)
- おー!双子の村、姉がはまってますよそれ!知ってます!! 
 嫁はリコリス、旦那はカミルだった気がしますねw
 ほんとに励まされたので、せめてお礼だけでもと・・・!
 最後までがんばります!!
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 しばらくヴァルド皇子とヒースが消えていった方向を見ていると、すばやい動作で騎士が駆けつけてきた。
 カレイラの白銀の鎧に身を包んだ、ドロテアを守護する姫騎士団のものだった。
 「ドロテア様!ここにいらっしゃいましたか!」
 守るべき姫君が颯爽とどこかへ駆けて行ったので、騎士は慌てて追いかけてきたらしい。
 しかも姫騎士団とは名ばかりで、十五人いた騎士も戦争だと逃げ去り、唯一残ったのは懸命な若者騎士その人だけであった。
 明らかにひ弱そうなその騎士はもともと城の看守係をしており、相次いで起こったポルターガイストの被害を受けて配置換えの結果、姫騎士団の見習いに配置されたのだ。
 今も戦争がぶり返すのではないかと怯えた調子でハルバート(斧槍)を握る元看守は、不器用な動作でドロテアに歩みよった。
 ドロテアはと言うと、グリグリを抱いたままほうけた様に突っ立っている。
 そのそばにレクスがいるので、元看守はいぶかしがるようにそちらに目を向けた。
 そして、その足元に転がる人物を見てヒッと声を上げる。
 「なんだこれは!殺人か!」
 鶯(うぐいす)色の髪の奇妙な男がぶっ倒れているのである。意識は無いようで、誰が見てもびっくりするだろう。
 「あぁ、コイツ・・・今回の戦争を起こした張本人」
 え?とかすれた声で聞き返す元看守。良く見ればレクスと同年代風の青年である。
 「ワーマンっていうんだ。聞いたことあるだろ?」
 「さぁ・・・」
 レクスが使えないな、などと意地悪くつぶやくと肩をすくめる。
 ドロテアも厳しい目で元看守を見る。
 もともと監視されるのが好きではないドロテアにとって、姫騎士団なるものが解散したのはうれしいことだった。
 だが、唯一職務を放り投げないで残った元看守のおかげで、ずっとボディーガードのように付きまとわれるのだ。
 少しうんざり気味であったのだ。
 「とにかく、ヴァルド皇子が悪いのではないのじゃ!その男が今回すべての原因を引き起こした元凶。牢獄深くへ放り込んでおけ!」
 ドロテアは少し怒った口調でそう言い放った。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 本編終了で書こうと思っていたこと思い出しました!
 アヴァロンコードの主人公の名前の由来です!
 男ユミル 女ティア っていうのは世界の創世記に記される巨人と女神の名前なんですよ。
 知っている人が多いのはユミル。
 巨人ユミルが月と太陽を設置し、最後に自身を犠牲にして世界を創った。
 その巨人から、ユミルと名づけたと思います。
 一方知られてないのがティア。
 母なる女神ティアマトーという海に住んでそうな女神が、自身の身体をバラバラにして作ったのが今の世界。
 ティアマトーは長いんでティアにしたんだと思いますね。
 他にもデュランはドイツ語で暴君だったり。本人は暴君じゃないけど・・・
 古代バビロニアにはウルという都市があったとか。
 いろんなところから名前を取ってきてるみたいですね。
