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二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 灰色 ( No.32 )
- 日時: 2012/09/09 22:41
- 名前: 兎欠 (ID: vj3b3W/M)
- 参照: http://nanos.jp/zotbox77/
- 21. シトラス 
 「夏生、ここ分かんね」
 手を伸ばせば、そこに欲しいモノがあった。
 漆黒でロングの髪の毛を持つ女。
 ストレートで癖一つない、照明に照らされてキラキラと輝く髪一本一本。
 瞳は少し釣り目がちだが目つきが悪いという訳ではない。
 この女の名前は川島夏生。
 半年前の夏、俺と夏生は付き合い始めた。
 緑間の元カノで、弱っているところに漬け込んで彼女にした。
 それは夏生が悪いなんて言いたくないけど、実際どんな形であれ嬉しいもんは嬉しい。
 俺を見てくれることが死にそうなくらい幸せで
 付き合っても俺の好意は深まるばかりで逆に戸惑う。
 「ここ前に説明したでしょ、もう忘れたの?」
 「覚えることが多すぎて忘れんだって」
 「公式当てはめれば出来るんだから自分でやってよもー」
 彼女は乗り出していた体を定位置へ戻す。
 フワリ、と香るシトラスの香りが鼻を掠めた。
 付き合って初めて知ったこと、たくさんあるんだ。
 すげー頭が良い事、控え目な性格な事、踊るのが好きなこと。
 でもまだ、俺の知らない夏生があるんじゃないかってたまに不安になる
 まだどこかで真ちゃんを好きなんじゃないかって、考えて虚しくなる
 それでも夏生は俺の心を読んだかのようなタイミングで、「すき」と言う。
 たぶん、絶対に俺の「すき」と夏生の「すき」は、違うと痛感する瞬間が、確実にあった。
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