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二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 灰色 ( No.41 )
- 日時: 2012/09/17 15:31
- 名前: 兎欠 (ID: vj3b3W/M)
- 参照: http://nanos.jp/zotbox77/
- 25. あいたいの送信者 
 その日俺たちは、季節はずれの海へ向かった。
 夏に一度来たことのある、あの海
 苦い思い出があるなら、幸せな思い出だってあるこの場所
 別にどーとか言うつもりはない。もう昔の話だ。
 電車の中で、俺はただボーっと外を眺めてあの頃を思い出してみた。
 まだ、夏生が緑間の彼女だった頃
 いや違うな、あの海で合宿した時は既に別れていたんだっけ
 だからまだ緑間を好きな夏生の心の隙間に漬け込んで、今俺の隣には彼女がいる。
 随分と、悪徳なやつだな俺
 奪う、とか犠牲、とか
 今になって考えてみたらそりゃ、俺が失ったり犠牲にしたりしたものはただ一つ、緑間なんだ
 仲が悪くなったりしたわけじゃない
 むしろ上辺でだけ見るのなら、昔よりはずっと仲良く見えてると思う
 それだけの話だ、それだけの、これ以上ない話。
 視線を向かい側の夏生に向けると、折り畳み式の携帯を眺めてボンヤリとしていた。
 「夏生?」
 微動だにしない
 聞こえてないのか?
 俺はそっと夏生の横に座り、彼女の肩に頭を乗せ目線の先にある携帯のディスプレイを見た
 「・・・は?」
 『 あいたい 』
 From:慎太郎と書かれたメール
 夏生を見ればボロボロと瞳から大粒の涙が溢れ出る
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