二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 戦国BASARA【月に誓う…〜記憶を追い続けて〜】 ( No.688 )
- 日時: 2010/05/08 12:47
- 名前: ターフ ◆lrnC2c/ESk (ID: 3c0JYUg8)
- 参照: http://名前変えたよ★(元はトコ)
——甲斐——
少し曇りめの甲斐のある山に、幸村は槍の柄を握っていた。
「まだまだ・・・某は弱き者でござるな」
皆からは「日の本一の兵」と呼ばれる幸村だが、織田信長を見て自分の実力よりも上回った者に圧倒された。
ギュッと柄を強く握ると・・・・・・・・・・———。
ズキッ・・・・・・・・・・・———。
「——ッ!!」
この頃、あまりにも考えすぎなどがあった為か頭痛がした。
昨日、佐助に「明日の修行はほどほどに」と言われていた。
・・・某が強くならなければ・・葵殿や政宗殿に・・・・——。
脳裏に思い浮かんだあの時の二人の顔を思い出し、幸村は逆にギリッと歯音を立てた。
負けられない一身が強くてどうにも気持ちが制御出来ないのだ。
拳を作って地面に叩こうとしたその時・・・・・・・・・・・———。
——“体を壊してしまうよ、君?”——
「——!」
最近聞こえなかった声に幸村は反応し、拳を沈めた。
何故か気持ちが静まり穏やかになっていた。
「・・・何の用でござる?」
久方に聞いた謎の声に問う。
謎の声はじっと黙ったまま。
幸村は答えが返って来るまで待った。
謎の声は少し息を吸って口を開いた。
——“君に、コレを見てもらいたくてね”——
「コレとは何でござる・・・?」
“コレ”と言われて幸村は何の事か分からなかった。
謎の声はすぐさま返す。
——“もちろん、君の記憶の一つだよ”——
その声が聞こえた後、ある光景が見えた。
その光景は・・・・・——真っ赤な血の海。
「うっ・・・・!」
幸村はこの時、気持ちが悪くなった。
謎の声は幸村に言う。
——“背けないでくれ・・・君の記憶だ”——
とは言っても背けたくなるのだ。
だが、幸村は我慢し耐える。
——“続きを見せてあげるよ”——
謎の声はそう言って、ある光景の続きを見せた。
——“『は・・・母上・・・?』”——
泣きじゃくりながら、状況が分からない奏牙の姿・・・・・・・・・・・———。
——“『奏牙を・・・・お・・願いね?』”——
もう少しで命が付きそうな奏牙の母・・・・・・・・・・・———。
——“『・・・すまない、君と両親は罪がないのに』”——
知らない男が・・・奏牙の両親の命を奪った・・・・・・———。
——“『・・・呪うなら、呪っても良い。私は・・・・罪を犯した』”——
だが、その男は・・・・・——涙を流して謝罪していた・・・・———。
——“『君は・・・強くなるだろう。その子と君は殺さない。強く・・・・生きれば良い』”——
そう言って・・・・記憶を消された・・・・・・・———。
「——ッ!」
嘆く男の姿や奏牙の両親の姿が脳裏に焼き尽くされた。
幸村は口に手をやる。
吐き気が襲った為、手をやったのだ。
手で押さえた為、少し幸村は咳き込んだ。
——“思い出したかい・・・・?”——
「——思い出したも何も・・・酷い記憶でござる・・・!」
少し涙目になりながら訴える。
謎の声は少し黙ってから言う。
——“でも、仕方が無い。・・・弁丸の時に見た記憶なのだから”——
そう言い捨てて、謎の声は消えて行った。
幸村は少し近くの木に座る。
「・・・奏牙殿っ・・。会いたいでござる・・・・」
その言葉は、まるで幼い頃の弁丸の言葉で泣きたいようだった・・・・・・・・・・・・———。
其の壱百壱拾七一 記憶は酷いもの