二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: バトルテニス=バトテニ= ( No.17 )
- 日時: 2009/12/13 16:16
- 名前: 亮 (ID: 2nrfRM.C)
30 存在価値
「はーいッ 放送を始めマースッ 今回の死亡者はちょっと少ないぞーッ 氷帝学園、鳳長太郎くんだけなんてさー・・・」(中務)
深夜の放送が始まった。
香澄達5人は、大人の居る塔を目指して歩いていたが小屋も見つからず、野宿することになった。
香澄にとって、野宿というのは初めての体験だった。
夜の風がこんなにも冷たいとか、
草がこんなにもくすぐったいこととか、
何もないところで見る星がこんなにもキレイだとか・・・
こんな時になって初めて知ることばかりで、なかなか寝付けなかった。
長太郎くんが・・・死んでしまった。
思い残すことはなかっただろうか。
大切な人には、会えただろうか。
変だよね、長太郎くんと話したのなんて指で数えられるほどなのに、
人が一人、私の前から居なくなるってだけで、
どうしようもなく怖くなる。
どうしようもなく、悲しくなる。
“思い残すことがない”人なんて、居ないんじゃないだろうか。
皆、1つは思い残すことぐらいあると思う。
だからこそ、生きている私たちは死んでしまった人の分まで・・・
精一杯、生きなくちゃいけない。
「死亡者も少なくておもしろくないし、これからは6時間後とじゃなくて12時間ごとにするよッ のこり3日間! 頑張ってね♪」(中務)
明るく、中務が言う。
“頑張ってね”なんて言われても、人を殺すためになんて頑張れない。
「・・・香澄?」(赤也)
暗闇で、赤也が香澄を呼んだ。
自分以外起きていないと思って居たが、赤也も寝付けていないらしい。
「赤也・・・起きてたの?」(香澄)
「香澄に、言いたいことあって」(赤也)
「何?」(香澄)
赤也は、少しためらった。
香澄が、真っ直ぐな綺麗な瞳で自分を見るから。
なんとなく、恥ずかしくなった。
今、言わねェと、もっと言いづらくなるよな・・・
「あん時さ、助けてくれてありがとな・・・」(赤也)
香澄が抱きしめて、俺に“信じろ”って言ってくれなかったら・・・
俺は、自殺していたか、殺されていただろう。
どちらにせよ、たぶん生きてはいない。
香澄は、思いがけない赤也の言葉に顔を赤らめた。
「違うよ、あの時は桃が・・・」(香澄)
「違わない。確かに運んでくれたのは桃城だけど、俺の心を助けてくれたのは、香澄なんだよ」(赤也)
「いつもどうり笑ってくれて、すっげェ安心したんだよッ」(赤也)
「赤也・・・」(香澄)
「俺はもうちょっと起きてるけど、早く寝ろよッ」(赤也)
「うん、ゴメンね」(香澄)
嬉しかった。
涙がこぼれるほど。
自分の笑顔で、救われた人が居る。
安心してくれる人が居る。
自分の存在価値を、身にしみて確認した。