二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 日和月光歌 ( No.88 )
日時: 2010/04/19 17:21
名前: 黒雲 (ID: bTobmB5Q)

番外編 ゴミ捨て場に咲く花

—天国組、部下:鬼男—

僕は初め事故で死んだ一人の小さな魂だった。
冥府で天国だと裁かれ、僕は天国で暮らしていた。
でも、死を受け止めきれずに暴走し、鬼へとなり果てた。悪霊なんかより質が悪い。
鬼になった者は、地獄と違うゴミ捨て場に捨てられる。僕は獄卒につかまり、そこへ放りこまれた。
そこにはいろんな奴らを殺しまわる鬼達がたくさんいた。僕は長い間隅っこでうずくまっていた。
そう、あの人が来るまでは……。

「君」
声をかけられ顔を上げると、変な姿の男の人が立っていた。
「…」
「どうしたの?」
「僕を食べに来たの?」
「違うよ?だって俺鬼じゃないし!」
彼は笑う。
「じゃあなんでここにいるの?」
僕は彼に問う。
「うーん。寂しいからかな。君は寂しくないの?」
「……忘れちゃった…。ここに来る前はそういう気持ちもたくさんあったんだ……でもここに来て、全部忘れちゃった……。」
正直に答えた。そしたら彼は、
「辛かったんだね?」
僕の頭にそっと手を載せる。その行為に驚いた僕は、
「止めろッ!」
自分の爪で彼の手を傷つけてしまった。
「あらら」
「あ…あの……ごめ…んなさ……い。大…丈夫?」
「うん。大丈夫。」
彼はにこりと笑う。その手からは傷が消えていた。
彼は僕に問う。
「ねえ君!ここからでない?」
「は?」
驚くような発言をした後、彼はこう言った。
「いや、君はここにいちゃいけない。だから出よう!」
本当は嬉しかった。でも……
「駄目だよ……僕は鬼だからここから出ちゃいけない。」
そう鬼だから、彼とはいっしょに行けない……。
「…君は鬼じゃないよ?鬼は謝ったりしないし他人の心配もしない。君みたいな優しい子がこんな場所にいちゃいけないんだ。それに……鬼って言うのはこういう奴らの事だよ……。」
彼の後ろでは、今にも飛びかかりそうな鬼が二体いた。
「に…逃げてッ!」
僕は必死に叫んだ。でも彼はゆっくりと振り向き、鬼の姿を……消した。
「さぁ、行こう。」
彼はそう言って僕に手を差し伸べる。
僕はその手を取り、彼について行くことを決めた。

僕は閻魔庁で服を貰い、それを彼に見せるために彼のいる部屋へと向かった。
「入っておいで?」
僕はゆっくりと彼のいるところへと向かう。その間は顔を伏せていて分からなかった。でも、彼に近づいて、顔を上げると、彼の変化がすぐ分かった。
「あんた!髪……ッ!」
「髪?あぁ、邪魔だったから切ったんだ。似合う?」
キョトンとしている僕に彼は言った。
「そうだ、君ちょっとおいで?大人になれなかった君に特別なプレゼントをしよう。」
彼は僕の額に人差し指をあてる。
「ゆっくりだけど、体が大きくなるようにしてあげる。見た目二十歳くらいで止まっちゃうけど……はい終わり!」
そう言って僕の額から人差し指を離す。僕はその手をつかみこう言った。
「あの……ありがとう」
彼はにこりと笑ってこう言った。
「どういたしまして……あッ!そうだ!君、俺の秘書しない?」
「ひしょ?」
「そう、俺の……閻魔大王のお手伝いさんだよ」
「する!」
彼は大王は僕の顔を見て微笑む。
「そういえば、まだ君の名前聞いてなかったね」
「……お……市尾李男(いちおりお)」
「ほうほう……うーん。じゃあ!」

「鬼男君にしようか!」

「は?なんで?」
「なんとなく!」
「ちょ!意味分かんない!」

僕はあなたにいつまでもついて行きます。僕を救いだしてくれたあなたに、寂しい思いをさせないように……。

—fin—

Re: 日和月光歌 ( No.89 )
日時: 2010/04/18 13:16
名前: 黒雲 (ID: bTobmB5Q)

 ゴミ捨て場に咲く花 〜後日談〜

—天国組、部下:鬼男—

「だいお〜!昨日の本の続き読んで〜!」
僕は昨日読んでもらった本の続きが知りたくて、大王のもとを訪れていた。でも、そこで見てはいけないモノを見る。
「あはは〜!やっぱ新作は良いねぇ〜!」
そこには鏡の前でポーズをとる大王。身につけているのは……。
僕はその場から逃げるように走り去った。

——翌日
「鬼男く〜ん!おはよ〜!」
昨日までは普通に話せていた大王。でも……
「……おはようございます」
僕は初めて大王に敬語を使った。
「お…鬼男君!?どうしたの!?昨日まで普通に…」「いえ、僕はいつだって敬語を使ってましたよ?」
「え…え〜ッ!?俺なんかした!?」
「いえ……何も……」

——最初はカッコいいと思っていたその人が、あんなものを着ているなんて……。
その日から、僕は大王に敬語を使うようになった——……。