二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 初雪の思い出【REBORN!】 ( No.166 )
日時: 2010/04/18 17:20
名前: クレイア ◆PT5MXLpFOU (ID: CkThpPJM)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode

15. pianto

教室から飛び出したエレットは屋上へと来ていた。
フェンスに体を預け、溜息をつく。

「はぁ……訳分かんない。何であいつらなんかが知ってるの……?」

ぺたんと座りこみ、膝に顔をうずめる。

「これじゃあ……巻き込んじゃうじゃない……。私そんなの嫌なのに……っ」

エレットの声は震えていた。胸に込み上げてくる熱いモノを必死に堪えているような声だった。
その時、エレットの方に何かが止まった。

「? 何……?」

確認してみると、一羽の黄色い鳥が止まっていた。その鳥は、真っ黒な瞳でエレットを覗き込んでいた。
まるで心配するように。

「おいで……」

おもむろに手を伸ばせば、鳥はぴょんと飛び移る。

「慣れてるのね、あんた」

ついエレットの顔もほころぶ。鳥は小さな口をかぱっと開き、

「ミードーリータナービクーナーミーモーリーノー♪」

突然並中の校歌を歌いだした。
エレットは驚きに目を丸くしていたが、やがてくすくすと笑いだす。

「アハハッ、歌も覚えてるなんて賢いのね。ていうか、教える奴も教えるやつなのかしら」

小さく笑いながら、再びエレットの手の中でうたっている鳥を見る。
すると、鳥が歌うのをやめた。

「?」

エレットは突然どうしたのかと鳥を見る。その黒い瞳に映るエレットは、

                                   …………泣いていた。


「っ……あれ……?私どうして……」

大粒の涙がエレットの頬を伝っていく。滲む視界に映る鳥の姿が、エレットにはあの青い鳥と重なった。

「……っ、ごめんなさい……ごめんなさい……っ」

ぼろぼろと涙をこぼし、エレットは謝り続ける。ずっと言いたかった言葉。何度も何度も、エレットは謝り続けた。



「ん?先客がいたか」

入口の方から突如人の声がした。エレットはハッとなりそちらを振り向く。
そこには、一人の女子生徒が立っていた。

「よく見たら転校生だな。こんなところで何をしてるんだ?」
「何って……別に」

こちらに向かって歩きながら話しかけてくる女子生徒から目を逸らして答える。
すると、女子生徒は何かに気付いたように目をぱちくりさせた。

「何だお前。泣いていたのか?」
「! 違ッ……違うわよ!」

エレットはあわてて涙をふいた。しかし女子生徒はそこにかがみこんで、エレットと目線を合わせて訊いてくる。

「しかし目が赤いぞ」
「……っ本当に違うの!目にゴミが入っただけなのよ!」
「ふむ……そうか」

これ以上追及するのはよくないと悟ったのか、女子生徒はそれだけ相槌を打って黙りこくった。

「で……アンタ誰なの?」

目を合わせずにエレットが訊く。女子生徒は苦笑しながら答えた。

「一応同じクラスなんだがな……まあいいか。私は時羽羅 梨瀬琉だ。よろしくな」
「ふうん……梨瀬琉ね。覚えとく」

手元にいる鳥をいじりながらエレットは言う。
すると、また梨瀬琉が何かに気付いたように言った。

「その鳥はもしかして雲雀の鳥じゃないのか?」
「ヒバリ?」

訊きなれない名前が出てきて、エレットは首をかしげる。

「ああ。雲雀恭弥と言ってな、この学校の風紀委員————」

         「君達、そこで何してるの」

梨瀬琉が説明しようとしたその時、凛とした声が屋上に響いた。

「噂をすればってやつかな……」

振り向きながら梨瀬琉が言う。
屋上の入り口には、雲雀恭弥が立っていた。

15. end