二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- one more time! / 真帝後佐久間 ( No.360 )
- 日時: 2011/02/21 03:14
- 名前: 宮園 ◆ylmP.BhXlQ (ID: WPWjN3c4)
@one more time!
どこにもいけない。
辺りは真っ暗闇で、加え周囲は全て固い壁に囲まれていた。かすかに身じろぎできるほどの隙間しかない、とても窮屈で息苦しい空間。盲目になってしかったかのように、自分の手さえも、目と鼻の先にあるはずの壁さえも見えなかった。
嗚呼、どうすればさきへ進める? どうすれば、どうすればここから抜け出すことができる?
自分が悪いということはわかっているのに、どうしても助けを求めてしまう。でも、仕方がないんだ。自分ではどうすることもできない、あがくこともできない、ただ馬鹿みたいに泣いて立ち止まっていることしかできない!
だれか、たすけて。
誰でもいいから、誰でもいいんだ。今のこの状態から引っ張り上げてくれるなら、だれでもいい。赤の他人でも、——影山でもいい。あの汚らわしい石でもいい。とにかく前に進めるなら、この暗闇から抜け出せるなら、それで。
本当に、それでいいのか?
突如、そんな曖昧な疑問が首をもたげた。そんなことしらない、俺が知るわけないだろ。俺は光を見たいだけだ、ほかの人間と同じことを望んでいるだけだ、ただそれだけなんだ! それの何が悪いというのか、むしろ俺は憐れまれる立場だろうが!
今の俺には、何もできない。ただ助けを求めていることしかできない。無力な小動物のように、ちぢこまっていることしかできない。だから俺は、必死に手を伸ばそうとしているのに。それの何が悪い、人に頼って何が悪い?
そう、そう思えるのに。
ぼんやりと浮かぶ、この気持ちはなんなんだろう。
自分の力で何とかしなければならない。
どこか使命的なものを感じさせる、そんな思想。嗚呼、全くもって馬鹿らしい。自分の力で? できないから俺はこんなところで立ち止まっている。できることなら、もうとっくの昔にやっている。俺はもう十分、あがいた。
……本当に、そうなのか?
諦めていただけじゃないのか。
早々に壁にぶち当たり、努力もせずただ挫けてしまっただけなんじゃないのか。
俺はまだ本気を、出していないんじゃないか。
もう一度だけ、頑張ってみようか?
そんな考えが頭に浮かんで、でも、到底無理のように思えた。あれだけあがこうとした。あれだけ叫んだ。あれだけ嘆いた。あれだけ泣いた。あれだけ、あれだけ——どうにかしようと、我武者羅にもがいたっていうのに!
嗚呼、もう眠ってしまっていいんじゃないか?
全て忘れて、眠りについてしまえばいいんじゃないか?
それでも、と。せめてもう一度だけ、ととなえる自分がいた。
ひどく煩わしい、捨て去ってしまいたい思想。
けれど、しかし。もし、もう一度頑張って。それで、光を見ることができたら? この闇から、抜け出すことができたら? 頑張ってみる価値は、あるんじゃないのか。
——じゃあ、もう一度だけ。
できないことだからこそ本気を出す。今までも本気を出していた?
きっとそんなことない。いつも目の前にはできないということを見ていたから、諦めていたから、まず出せてなんかいなかったんだ。出そうとも、していなかったんだ。ただその気に、なっていただけ。
さあ、本気を出せよ。
もう一度、サッカーをするために。
俺ならそれぐらい、できるだろ?
さあ——もう一度!