二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ぬらりひょんの孫-永遠ノ唄- ( No.28 )
日時: 2010/10/07 01:16
名前: 向日葵 ◆5tAuYEuj7w (ID: 5bBsNqZt)

第三幕

「誰……?」


振り向くとそこには柔和な笑みを浮かべる女性がいた。
かか様と同じくらい値が張りそうな藤色の着物を纏っている。

「こんなところで何をしておる? 我が姪よ。」

そう言うと、女性は笑みを崩さず私に歩み寄り、今降っている雪と同じような色白な手で私の頬をそっと触る。

「叔母様…? 〝羽衣狐〟叔母様?」

「ふふふ……。大きくなったのう。妾の姪よ。それにしてもこんな寒い時に、どうしたというのじゃ? 凍え死にたい訳ではなかろ?」

私は何と言えばいいのかわからず、俯いた。
叔母様がさしてくれた傘のお陰で頭に雪がかからなかった。

「叔母様…コウは……コウは…。かか様を護れなかった……! この力のせいでかか様が……」

「そう自らを責めるでない、コウよ。」

私は張り裂けそうな胸を押さえ、そっと叔母様の整った顔を見つめた。黒い瞳、黒い髪、それに見惚れながらも、次の言葉を待ってみる。


「コウ、お前は妾と我が姉の〝希望〟なのじゃ。

  お前のためなら笑って命を投げ出そうぞ。」


「叔母様……コウは……。」

「さあ、帰ろうぞ。清明が妾の帰りを待っておるでな。」


叔母様は私の手を引き、歩き出した。
その時の叔母様の黒き瞳からは、涙が溢れ出ていた。
そして、待たせてある〝朧車〟に乗り込む。

〝コウ……。妾はコウが生き延びるためなら、何でもするであろうなあ……。お主は、妾達の≪希望≫なのじゃから。〟

頭の中にかか様の笑顔が浮かぶ。
気付けば、私は声を張り上げていた。

「かか様ぁーーーッ!! コウは、コウはっ……、かか様がどこかで生きていることを………信じてっ…いますっ……
 私はッ……必ずや」

何かを言った覚えはある。
叔母様の少し微笑んだ顔も覚えている。
が、そこから先の言葉は思い出せなかった。

.・*

目を開けると先刻寝ていた部屋だった。
風花は近くにあった学校用の鞄から折り畳み式の薄いピンクの携帯を取り出して開ける。
待ち受け画面には黄金色の大きなくるくるした愛くるしい黒猫がアナログ時計の隣で丸まって眠っている。
AM01:59:58。
少し見つめていると、2時になって黒猫が仰向けに寝転がって、どこぞのマンガの様な見事な鼻提灯を作っている。

屋敷は恐ろしい程静まり返っていた。
人様の家だと承知しつつも、風花は手当たり次第、襖を開け続けていた時、リクオと酒を酌み交わしていた鴆が、障子を少し開けて、月を見ている所に遭遇した。