二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ぬらりひょんの孫-永遠ノ唄- ( No.44 )
- 日時: 2010/10/15 00:40
- 名前: 向日葵 ◆5tAuYEuj7w (ID: 5bBsNqZt)
1−3.・*
苦しかった。
息も勿論苦しいが何より心が絞めつけられた。
はじめは普通に、美人なクラスメートとして見ていただけだった。
いつから、この想いに変わったのか、そんなことは見当もつかないが、兎に角苦しくてたまらなかった。
どこにいるのだろうか。
無事を確かめたい。
無事でいて欲しい。
他に、何もいらない。
ただ、…ただ無事でいてほしい。
リクオはそんな想いで走っていたが、アパ●ンショップの前で突っ立っている、特徴あるアイボリーの髪をツインテールにしている少女を見つけ、その名を叫んだ。
「……閉まってる。」
風花は落胆していた。その声音はまるで地獄から響いている様な暗さで、腕は力なくぶらりと下がり、目はどこか虚ろだ。
——今日はやっぱり学校で眠るしか……でも夜の学校は妖怪がうようよいるし……。
そんな事を風花が考えた刹那、人通りのほぼ無いそこに、聞き覚えのある声が響いた。
「橘さんっ!!」
華奢な肩が大きく震えて、風花は驚き顔で振り向いた。
「奴良くん……? 何でここにい」
「何でここにじゃないよ!!」
リクオは安堵半分、怒り半分で風花の声を遮った。
——自分がどれ程心配したか。
「…ニュースで、橘さん家が映ってたんだ……それで、行方不明って言って」
「アリガト。でも大丈夫だから。」
今度は風花が遮る番だった。
顔は嬉しさ半分、自嘲半分の笑顔をリクオに向けた。
初めて向けた笑顔が、そんな笑顔だった。
だがそれも束の間、冷酷な瞳でリクオを見つめる。
「同情はやめて。」
——やめて。
「同情なんか、要らない。」
——これ以上、私に優しくしないで。
「私は一人で生きていく。」
——今まで揺るがなかった想いが、
「アリガト。来てくれて。嬉しかったよ。」
——揺らいでしまうから。
風花ははにかんだ。
——また裏切られるのは、嫌なの。
そのあどけなさが残った顔で、ぎこちなくも、彼女なりに精一杯の笑顔を浮かべた。
——嘆くのは、疲れたの。
そして異空間へと飛んだ。