二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: テイルズオブザワールド ( No.1 )
- 日時: 2010/10/24 20:17
- 名前: アビス (ID: U3CBWc3a)
「これが世界樹か・・・」
一人の青年が呟いた。髪も瞳も鮮やかな青で、まるでサファイアを散りばめたような、
美しい色をしている。クールな容姿でスラリとした腰には一本の長剣が収まっている。
青年は腰か剣を取りだすと、その切っ先を世界樹と呼ばれる一本の樹に向ける。
「滅びろ!」
青年は世界樹に向かって剣を振り下ろす。だが剣はその手前で不思議な空間に阻まれ、
弾き返されてしまう。青年が態勢を立て直した時に声がした。
『なぜ、世界樹を切ろうとするのですか?』
優しい、全てを包みこむような声が辺りに響く。
「誰だ?」
『答えなさい。なぜ世界樹を切ろうというのですか?』
「まずは姿を見せろ。話はそれからだ」
青年がそう言うと、目の前の不思議な空間が歪みから一人の女性が現れた。
髪はエメラルド、瞳はトパーズのように輝いている。
『さぁ、現れましたよ。答えなさい』
女性は同じ質問を投げかけてくる。
「・・・世界樹はこの世界の源と言われるマナを生んでいる。だから、それを消せば世界も消える。
俺はこの世界を滅ぼしたいんだ」
青年は酷く冷たい目と言葉で女性の問いに答える。
『なぜ、この世界を滅ぼそうとするのですか?』
「こんな腐った世界、なくなった方がましだ。国の下らない争いで関係のない人が死ぬ。
それでも戦争はなくならない。この世界にマナを奪い合い、戦争をし、沢山の犠牲を出す。
果てにはマナの枯渇の原因を他国のせいにして、さらに戦争の引き金を引く。
政府は戦争の事で頭が一杯で、市民の事を何も考えていない。
市民も我が身可愛さに、強盗、殺人を犯す。貧しい人は育てられないと子どもを捨てる。
貴族は貧民をゴミと称し、見下し、差別する。
こんな事を続けるぐらいなら、人は一度滅ぶべきだ。そうでもしないとこの戦争は終わらない。
こんな戦争が意味のないものだと分かろうともしない」
青年は言葉を発する度に、苦しそうに、そして憤怒を覚えるように震える。
それを見て、女性は静かな声で言った。
『なら、貴方の手でその戦争を止めればいい』
「俺に出来る事は貧しい市民に出来る気休め程度だ。今までだってずっとそうだった。
だが、それも続く戦争のまえでは気休めにもならなかった」
『なら、私が教えましょう。戦争を止める方法を』
「・・・そんな方法、あるはずがない」
『マナの欠片を集めてください』
「マナの欠片?なんだそれは?」
青年が繰り返す。女性は小さく頷いた。
『マナの欠片とはこの世界に点々とあるマナ溜りと呼ばれるマナの密集地帯に棲む精霊の核を指します。
それらを集め、そして私の元に再び来てください。そうすれば、この世界を救ってあげましょう』
青年は訝しげな表情を浮かべる。突然現れた女性のこんな事を言われて信じろと言う方が無理だ。
だが、女性の目は嘘をついていないと語っている。
「分かった。やってやる」
青年が呟くと女性は嬉しそうに頷き、青年に指輪を渡した。
『それはソーサラーリング。精霊たちの位置を教えてくれ、精霊との会話を可能にする指輪です。
大事にしてください』
女性はそう言うと、やってきた空間の歪みの中へと入ろうとした。
「待て。お前は一体何者だ?なぜこんなことをする」
『・・・私は世界樹の精霊イアン。この世界の平穏を望むものです。
貴方の・・・お名前は?』
「・・・カイン・D・サフィス」
イアンはカインの名を聞き頷くと、何も言わずにそのまま去って行った。
カインは暫く貰った指輪を見つめる。今のところ何の変化もない。
「取りあえず、旅の準備だな。それとあいつらに旅を出る事を告げなきゃな」
そう呟き歩き出した時、不意に気配を感じ剣を抜く。
「誰だ!?」
「わっ・・わわ!!ちょっと待って!!私怪しい者じゃないです!本当です!」
影から現れたのは赤髪の女性だった。
「今のが世界樹の精霊さん?すっごい綺麗だったね。女の私から見ても惚れそうだったよ」
「五月蠅い。黙れ」
「はい、黙ります」
カインの殺気に口に手を当てて、黙る事を決める女性。
「問い1・・こんなことろで何やっている?」
「答え1・・・え〜〜と、世界樹の見物」
「問い2・・いつから隠れていた?」
「答え2・・あなたが、これが世界樹か・・・。とか言った時から」
カインの質問に真面目に答える女性。カインはため息を漏らすと、剣を鞘におさめた。
「じゃあな」
「ちょっと待ってよ!」
立ち去ろうとするカインを女性が引きとめる。
「なんだ?」
「さっき、あの世界樹の精霊さんにこの世界を救う手立て聞いてたよね。マナの欠片集め?だっけ。
それを成し遂げるために旅するの?」
「だったら何だ?」
「私も付いてく!私も世界のために何かしたいもん。それに旅なら一人より二人の方がいいでしょ?」
「いらん、邪魔だ」
「何でよ!?」
「五月蠅い、邪魔、足手纏い、俺は一人の方が好きだ。以上」
カインが淡々と述べる。そんな態度に女性が激怒した。
「五月蠅いは自覚してるけど、邪魔じゃないし、足手纏いにならないし、
一人の方が好きって事はこの世にいる限り絶対あり得ない!」
「・・・どうしても付いてきたかったら、俺に無駄口を叩くな、邪魔するな、足引っ張るな。わかったな?」
「ん〜〜。中々厳しい条件だけど良いよ。けど、無駄口じゃなかったら喋って言いってことだよね?」
「勝手にしろ。まずは俺に家に行くぞ。準備があるからな」
「アイアイサーー!」
- Re: テイルズオブザワールド ( No.2 )
- 日時: 2010/11/03 09:53
- 名前: アビス (ID: U3CBWc3a)
——————————ユーゼント村——————————
ユーゼント村。ここにカインは住んでいる。カインたちが村に到着すると、
「おや、カイン。これ持っていきなされ」
「いらねーよじいさん。あんたが喰え」
「おお、カイン。また魔物狩って食料の調達かい?魚余ってんだ。やるよ」
「余るなんてこの村じゃありえねーだろ。わざわざ気遣わなくても十分足りてる」
「カイン。子どもたちは元気かの〜〜?心配じゃ」
「俺はあんたがぽっくり逝きそうで心配だ。ガキたちの心配する前に自分の心配しろ」
次々と村人達がカインに話しかけてくる。
皆、痩せ衰えているが、生き生きとしていて、活気に満ちている。
「慕われてるんだね、カイン」
女性が嬉しそうに言うと、カムイは鼻を鳴らした。
「どうでもいいだろ、そんなこと。それよりお前、名はなんて言うんだ」
「あっ、そうか。まだ自己紹介まだだったもんね。私は、ルイル・ルーゼ・ルゼス」
「めんどくせー名だな。・・・と、ここだルイ」
カムイが立ちどまったのは大きな長屋。
「へ〜〜、でかいね〜〜〜・・・ってルイって誰?」
「そっちのほうが呼びやすいだろ。行くぞ」
————————————————————
「あっ!カイン兄ちゃんお帰り!!」
「お帰りお兄ちゃん!!」
「兄ちゃん今日の収穫は?」
「うるせーーぞ、てめーら。もう少し大人しくしろ。そんなんじゃすぐ腹減るぞ」
長屋の中にいたのは数十人の子供たち。カインは群がる子供たちを払いのけながら進む。
「この子たちは?」
ルイが子供たちに目をやりながら言った。
「戦争で親をなくした孤児だ。俺が引き取って面倒みてんだよ」
「ふ〜〜ん・・・カインって・・・」
「お帰り、兄さん」
ルイが何か言おうとした時、ひと際落ち着きを払った少年が奥の部屋から出てくる。
年齢で言うと15ぐらいだろう。
「ギン、俺のいない間どうだった?」
「いつも通り。この子たちがはしゃいでた」
「そうか・・・。ギン、大事な話がある。あいつらを集めて、奥のの広間に来てくれ」
カインの言葉にギンは何かを予感したような顔をすると、素直にうなずいた。
「ところで兄さん。その人は誰?」
ギンがルイの方に目を向ける。
「ああ・・・こいつは・・・・」
カインが説明しようとした時、代りに子どもたちが説明した。
「兄ちゃんのこれだよ」
「違うよ、イイナヅケだよ!」
「兄ちゃんもう結婚するの!?すごーーい!!」
「話を盛るな!ややこしくなるからお前らはすっこんでろ!!」
「わーーいわーーい!イイナヅケイイナヅケ」
————————————————————
広間と呼ばれる所は主に子供たちの寝床。人数がいるぶん広いため、
時々こうやって会議をする時に使っている。
集められたのは8人の少年少女。他の子どもたちより年齢が上の者たちだ。
「単刀直入に言うぜ。俺は旅に出る。たぶんしばらくは戻れない」
カインの発言にその場にいた者全員が固まった。
「ちょっ、カイン!どういうことだよそりゃあ!旅って何だよ!?
まさか俺達のこと見捨てるつもりじゃ・・・」
一人の少年が叫ぶ。だが、それは少女によって制止させられた。
「馬鹿。カイン兄がそんなことするわけないだろ!・・・でも急に旅ってどうしたんだ?カイン兄」
「この戦争を終わらすための旅だ。お前らを見捨てるつもりはさらさらねーよ。
ここはもう俺がいなくても十分だ。だから、俺は根本的なものを潰しに行く。
・・・・マリア、シフォン。お前らは何時も通りあいつらの面倒を頼む」
カインがすでに決心がついていることに、少年たちも気づいて頷く。
「トウヤ、ジン。お前らはこれからは二人で狩りをしろ。お前らはもう俺がいなくても、
十分ここらの魔物とはやり合える。
ユウナ、ヨハン、シーズ。お前らは家事全般を頼む。俺がいなくなる分、楽になるかな。
・・・・ギン。お前は今日からこいつらのリーダーだ。いざって時はお前が皆を纏めろ」
「兄さん・・・。わかった、兄さんに心配されないよう、頑張るよ」
「じゃあ、これで話しは・・・・」
「うわあああああああ!!!!」
「きゃあああああああ!!!!」
突然響く数多の悲鳴。それが誰のものなのか、一瞬で気付いた。
「あいつら!!」
カインは立ち上げると幾つかのドアを開け、さっきの所に戻る。そこで見た光景は
「まだいたのか・・・」
「に・・兄ちゃーーーん!!!」
辺りに転がる多くの子どもの死体。先程まであれほど騒いでた子どもたちが今はピクリとも動かない。
そしてそれを囲むように立たすむ漆黒の兵。
「・・・インヴェル軍!!!」
「兄ちゃん助けて!!!」
「黙れ餓鬼」
—ズシャッ!!—
「・・・・!!」
目の前で今まで育ててきた子が斬り殺された。
「・・・・・!!」
ちょうどそこに後ろから少年たちがやってきた。今の状況をみて言葉を失っている。
「てめーーらーーー!!!!!」
一人の少年が怒りのあまり漆黒の兵に向かって行った。
「よせジン!!」
—ズシャッ!!—
「ジン!!」
「さて、残りは8人・・・・」
漆黒の兵たちがじりじりとカインたちを追い詰める。
「ギン、皆を連れて裏口から非難しろ」
「兄さんは?」
「こいつらを足止めする」
「無理だよ!いくら兄さんでも・・・!!」
ギンはそこまで言うとそれ以上言わないように口を固く結んだ。
「皆、兄さんの言うとおりにするんだ」
少年たちは躊躇いながらも、ギンの言う事を聞いた。
ギンが最後にカインの方を見ると、その身体から不気味なオーラが漂ってるように見えた。
- Re: テイルズオブザワールド ( No.3 )
- 日時: 2010/11/13 19:18
- 名前: アビス (ID: U3CBWc3a)
「餓鬼たちを追え・・・。一匹たりとも逃がすな」
隊長と思しき者の言葉に動く漆黒の兵隊。カインは剣を抜くと扉を背に向け、立ち塞がる。
兵隊らは次々と剣を持ち、カインを襲い出した。
「劫火灰塵(ごうかかいじん)」
カインがそう呟くと、カインの身体から赤いオーラが漂い始める。
「紅破刃!」
カインが剣を振うとそこから赤色の衝撃が飛んだ。
それに触れた者は衝撃で吹っ飛び、そして身体が燃え始めた。
部下がのた打ち回る中、隊長はカインの出したオーラに疑問を抱いていた。
「今の光はマナとは違うエネルギー・・・。こいつは一体・・・」
「らあああああ!!」
カインは漆黒の兵の隊長に向かって剣を振り下ろす。隊長はそれを軽く流すと、
「ふん!!」
その腹を蹴った。カインは衝撃で吹っ飛び壁に激突する。
がはっ!とカインは吐血し、そのまま床に力なく落ちる。
「ここは俺に任せろ。お前たちは餓鬼を追え」
「は!!」
兵たちが次々とギンたちが通った扉を抜けていく。
「待て、お前ら!!」
そう言いたかったが、蹴られた腹が痛くて声が出せない。
このままじゃ、あいつらも殺されてしまう。そう思った時
「ファイアーボール!!」
その掛け声と共に扉から兵隊たちと火球が飛んでくる。そしてその後現れたのはルイだった。
「お前、なんで戻って・・・!!」
そこで大きく咽る。ルイは近づくと手から暖かい光を放った。
すると、カインは腹の痛みが和らいでいくのを感じた。
「あの人数相手じゃ、さすがにカインでも不味いなって思ってね。引き返してきたの。
案の定、予感的中!!って感じだね」
「・・・・!!」
カインはルイを突き飛ばし、剣を再び構える。
—キィィィィィィン!!—
金属音が鳴り響く。
「中々の反応だな」
隊長は余裕のある声で言った。
「そうかよ!」
カインが隊長を弾き飛ばす。態勢を崩すことなく着地する隊長にカインは追撃した。
「鳳凰天駆!!」
上空に舞い、オーラを剣に集めそのまま隊長に向かって滑空する。
—ボォォォォォォォン!!!—
爆発音と共にカイン、隊長が外に出る。爆煙の中カインは跳躍し、脱出する。
その瞬間、周りの光景に目を疑った。
先ほどカインに話をしてくれた人々は倒れて動かない。
村はすでに廃墟と化し、何者の気配も感じられなかった。
「余所見している場合か?」
爆煙から隊長が飛びだし、剣を振う。何とか防ぐが目の前の人物に集中できないでいた。
「・・・もう全ての品は取り終えたようだな」
隊長はそう呟くと、カインから離れて口笛を鳴らす。すると遠くからモンスターの泣き声がすると、
飛竜が現れた。その隊長はその飛竜に飛び乗った。
「待て!!逃げる気か!!」
「そう言う言葉は自分の実力が相手より上の場合に使うものだ。この場合は見逃してもらうだ」
「・・・・!!」
カインは隊長を睨む。その顔をずっと眺めてから隊長が言った。
「どこかで見た顔だと思ったら貴様、アゼールとシューナの子か?」
「・・・!!何で父さんと母さんの名前を知っている!?」
カインが言うと隊長は不気味に笑いだした。
「ふふっ。なるほどな。俺は相当お前たちとは縁があるらしいな。
・・・いいだろう。俺はインヴェル軍一番隊隊長ハイゼン!・・お前の両親を殺したのは俺だ」
「なに!?」
「お前の故郷、ハーレルを潰したのも俺の隊だ!」
そう言うと、ハイゼンは鎧の兜を脱いだ。見るとその顔は美しい顔立ちの女性だった。
「俺の顔を良く覚えておくと良い。次に会う時が楽しみだ」
ハイゼンはそう言うと飛竜に乗って遠い空へと飛んで行ってしまった。
呆然と立ち尽くしているカインに、ルイが近寄る。
「・・・ギン君たち。どこにもいなかったよ・・・」
「そうか・・・」
カインはそう言ったあと暫く口を閉ざした。そして
「何処にもいないってことは、どこかに逃げ遂せたってことだ。・・・あいつらだけでも生きてて良かった」
そう言ったカインの言葉はどこか冷たくて、寂しそうだった。
きっとあの小さな子どもたちの事を思い出してるんだろうな、とルイが思ってると、再びカインが口を開いた。
「・・・ルイ。ここの奴らを供養したい。手伝ってくれ」
「う・・うん!」
それから数時間かけて村人全員の遺体を供養した。
「これからどうするのさ?カイン」
慰霊碑の前で手を合わせていたルイがカインに言った。
「どうするもこうするもないだろ?この世界を救うために旅に出んだろ。
・・・ついでにインヴェル軍も滅ぼせられたら最高だな」
カインの妙に明るい言葉にルイは顔を落とした。
「・・・ごめん」
「何でお前が謝るんだ?」
「あ!・・・えっと・・その・・・・」
カインの言葉に、ルイは妙にきょどった態度で顔をそらした。
「・・・・?」
カインは不思議に思いながらもそれ以上の追及は止めた。
「ここから一番近い村はトーティスか。おい、いくぞ」
「あ、待ってよ!・・・ってもういいの?」
ルイの少し悲しげな言葉にカインは頷いた。
「ああ。何時までも居たって・・嫌な事しか思い出さないからな」