二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: テイルズオブザワールド ( No.27 )
日時: 2011/05/10 20:42
名前: アビス (ID: dFf7cdwn)

「ルイ!魔術であいつの下まで地面を伸ばせ!」

「う・・うん!」

カインの言葉にルイは手を前に翳し、地面を伸ばす。
だが、これだけでは落下の勢いでペシャンコになってしまう。

「風華招来!」

カインの周りに風が靡く。カインはそのまま手を上にあげる。

「お!お、お!おう!?」

と、その落ちてきた人の表情が変わる。自分の下から何か見えない力で
押し上げられているからだ。それにより落下のスピードが落ちてきた。そして

「ドヘッ!!」

地面に落下。カインたちが駆け寄り、様子を窺う。その人物は男性で、
取りあえず命はある様子だった。

————————————————————

「いててて!」

「我慢してよ」

暫くして目が覚めた男性。ルイが治癒術を施すが、中々直らない。
何か不思議な力で邪魔されているようだった。

「いや〜〜〜!それにしても助かったぜ。お宅らが居なかったら俺、確実にあの世行きだったからな」

男性はそう言って頭を下げる。

「それにしてもお前、どうしてあんな高さから落下してたんだ?」

「ああ。それはな」

男性がルイが治療中の右腕を上げて、袖を捲る。するとそこには
機械で造られた人工的な翼が装着されていた。

「こいつは『グライダー』。簡単に言うと手軽に空を飛べる戦闘用機械だ。
こいつの試運転してたんだが、どうやらモンスターと間違われて撃ち落とされてな。
で、そのまま落ちてたってわけよ。いや、本当に助かった」

そう言ってもう一度頭を下げる。

「モンスターを撃ち落とす奴がいる。ってことはこの辺りのモンスターはそいつに?」

「さあな。ところで、助けて貰っておいてなんだが一つ頼みたい事があるんだが・・・・」

手を合わせて懇願する男性にカインは尋ねた。

「何だ?」

「その撃ち落とされた時、左翼のグライダーが吹っ飛んじまったんだ。
この渓谷のどっかに落ちてる筈だから、一緒に探してもわえねーか?」

「どうして渓谷にあるってわかるんだ?川に落ちたかもしれねーぞ」

カインがそう言うと男性は立ち上がり演説するように言った。

「そんなのは勘だ。俺のマシンソウルが言っている。この近くにこの片割れがある!と」

それを見てカインは一つ暑苦しいと、ため息をついてからルイを見た。

「どうする?」

「私は別にいいよ。探してあげようよ!」

「決まりだな。だが、俺らも用があるんだ。テルカに行くついででいいなら探してやる」

カインがそう言うと、男は少し不思議そうな顔をした。

「テルカ?何、お宅らテルカに行きたいの?」

「だったら何だ?」

カインが尋ねると男性は自分に親指を立てた。

「だったら任せろよ!俺はつい先日までテルカにいて、この渓谷にはよく来てたんだ。
道案内は任せてもらうぜ!と、まだ名乗ってなかったな。俺はヴァイズ。ヴァイズ・クロウズ」

「俺はカイン」

「私はルイル。ルイって呼んでね」

ヴァイズは二人の名前を聞いた後、何か考え込んでああ、と言葉を漏らした。

「なるほど、お宅らがカインとルイか」

「??俺らを知ってんのか?」

「ああ。じゃあ、さっきの自己紹介に少し付けたしとくよ。
俺はレジスタンス武器開発者・ヴァイズだ。よろしくな」

————————————————————

「・・・・・で、このグライダーも魔科学で風の魔力を溜めて、それを放つことで飛ぶことが出来んだ」

ヴァイズが魔科学の発案者だとしったカインたちはヴァイズからいろいろ話を聞いていた。

「じゃあ、俺の普通の武器にも魔科学の力を加えることは出来るのか?」

「出来なくはねぇけど、そうするより一から作り直して直接組み込んだ方がパワーが出る」

—ギャオ!ギャアァ!!—

カインたちが話していると、そこにここに来て初めてのモンスターと遭遇した。
鳥類系で中々の大きさだ。

「ヴァイズ!片翼だけで戦えるか!?」

「俺は開発専門だが、それなりにはやれるぜ?」

ヴァイズはそう言い右腕を構える。

「風力最大!!行くぜ!!エアロスラッシュ!!」

グライダーから大量の風が放出され、ヴァイズはその勢いでモンスターに攻撃。

「あれ?」

攻撃!

「あれれ?」

と、いきたかったのだがこのグライダーはまだ試作品。それに修理はしたもののダメージを
負っているそれはヴァイズの意思とは別な方向に風が吹き荒れ、暴走する。
で、暴走した結果その行く末は・・・・

「え?」

「げぇ!!!」

暴走したグライダーに引きずられるようにヴァイズはそのままルイに突撃してしまう。
しかもそのまま崖から離れ真下は激流の川。

「「うわあああああああ!!」」

二人は叫びながらそのまま落ちていく。

「ルイ!!ヴァイズ!!・・・・・・!!!」

—ギャオオオウ!!—

「グフッ!!」

カインの意識が完全に二人にいった隙にモンスターがカインに突撃して、そのまま
その大きな脚でカインを掴んでしまった。
あっと言う間にカインは大空へ。そして二人は谷底へと落っこちてしまった。

Re: テイルズオブザワールド ( No.28 )
日時: 2011/05/13 20:48
名前: アビス (ID: dFf7cdwn)

「うおおおおお!!」

「うわああああ!!」

二人は真っ逆さまに川へと落ちていく。と、下の方の崖に小さな足場を見つけた。

「頼むからちゃんと動いてくれよ。風力最大!!!」

グライダーから風が吹き荒れ、二人の進行方向が真下から真横へと変化する。

—ズゴン!!—

猛スピードでそのまま壁に激突する。そしてまた落下し、足場に到達する。
ルイは起き上がると頭をフラフラさせた。

「う〜〜〜〜ん・・・・・。真下に落ちたり真横に飛んだりするから〜〜〜〜〜。
頭が〜〜〜〜〜!くらくら〜〜〜〜・・・・・・ん?」

ふと横下を見ると、頭に大きなタンコブを作って気絶しているヴァイズを見つけた。
ルイはヴァイズの心配よりもまず、その大きなタンコブに触れる。

「うわ〜〜〜。すご〜〜〜い!!これ世界記録だよ!きっと」

ポンッポンッと触られ、その痛みで起きあがるヴァイズ。

「ってて!こらぁ!人のタンコブポンポン叩くな!」

「あ、起きた」

ルイはそう満足気に言うと、立ち上がり横を見た。
そこには大きな横穴が空いていて、中に入れそうであった。

「ここ入れそうだね」

「そうだな。・・・・・ちょっと待ってくれ」

早速中に入ろうとしたルイをヴァイズが止めた。
そしてヴァイズはその場でしゃがみ込み何かを拾った。

「・・・・・羽根?」

「ああ。しかもさっきの奴よりも相当でかいやつだぜ」

その羽根は大体50センチほどもある大きな羽根だった。
ヴァイズはそれを谷底に投げ捨てる。

「たぶん巣かなんかだろうな。激流にのまれる心配は無くなったとはいえ、こっちはこっちで危な気だぜ。
まぁだからといって、このまま上に戻ることもできねーからな。今のでこいつの出力も低下しちまったしな」

グライダーの調子を見ながら言うヴァイズ。グライダーは僅かに煙を上げ、バチバチいっている。
故障している状態で無理やりコントロールしようとした結果である。

「壊れやすいんだね」

「簡潔にまとめるな」

二人はそう言いあった後、その大きな横穴へと入って行った。

————————————————————

「・・・・・・・」

カインは未だに空の上だった。その気になれば足を切り落とすぐらいはできるが、
そんなことをすれば自分は落下してしまう。この高さから落ちれば命が危ない。
仮に助かったとしても重傷は確実。そうなったら二人を探しには行けない。
だからカインは巣に到着した瞬間に攻撃を仕掛けようと構えていた。

と、目の端に何かが光った。何かとそちらの方を向いた瞬間、顔の横すれすれを光の弾が通った。
それはモンスターに当たりカインはそのまま墜落し始めた。下は地面だが、このまま落ちたら命はない。

「ちっ!」

カインは体からオーラーを漂わせ、それを両手に集中させる。
そして地面にぶつかる直前、両手を地面に向けた。

「風華招来!!」

—ブオオォォォオンン!!—

カインの着地点の地面が風の力でどんどん削られていく。それによりカインの落下スピードが落ちる。
それでもカインは地面に激突したが、痛みを堪えてすぐに立ち上がる。
あたりは渓谷には珍しい岩がごつごつした広い場所だ。

「・・・・・今のがヴァイズを撃ち落としたっていうやつか。
・・・・そこにいる奴ら、出てこい」

カインは睨みを効かせて言う。すると、岩陰からぞろぞろと漆黒の兵隊が現れた。
カインも一度見たことある鎧、インヴェルの兵隊だった。
数は7人。背丈からして15前後といったところだろうか。
カインはそれを見て一度頭を振るう。そして自分に自問した。

(どうして今、あいつらの事が頭に過った?)

確かに目の前の兵隊の人数、背丈は彼らにそっくり。だがそれは絶対にありえないことだ。
カインは心の中でそうわりきり、漆黒の兵隊に刀を向けた。

「こんなところでインヴェルの兵隊が何やってる?」

カインの問いかけに誰も答えない。そんな中一人の兵隊が手を上げ、
一人の兵隊を指差す。そしてまるで「行け!」と言っているようにその指をカインへと向けた。

と、その指を刺された兵隊がカインに向かって来た。兵隊は剣を取り出しカインに切りかかる。
カインはそれをよけ、兵隊を切りつける。だが、それは鎧を少し傷付けただけで終わる。

「裂蹴蓮撃」

カインはそこからさらに連続で鋭い回し蹴りを繰り出す。その衝撃は内部にも届いたらしく、
兵隊は吹き飛ばされると、その場で膝をつく。
そこの追い打ちを掛けるように詰め寄るカイン。と、目の端に光弾を捉える。
頭を咄嗟に下げてそれを交わし、飛んできた方向を見ると3人の兵隊がこちらに銃を構えていた。

飛んでくる光弾を交わし、その3人も吹き飛ばすカイン。そしてすぐに後ろからの殺気に気付き
剣を構えると、先ほど仲間に命令していた男が剣と交わる。

「・・・・っつ!!」

カインは僅かに押され始める。カインは力は強い方ではないが、
こんな15歳ぐらいの者に押されるほどひ弱ではない。相手の力が異常なのだ。

カインはこのままでは押し負けると思い、刀をずらし相手の剣を流す。
それで相手は体勢が崩れた。そこを見逃すカインではない。

「昇龍撃」

まず初めに相手の顎を蹴りあげ、次に逆立ちの要領で腹を蹴り上げ、最後にそのままジャンプし
サマーソルトでもう一度顎を蹴り上げる。すると兵隊の兜と取れた。
兜が転がり、兵隊の素顔が露わになる。それは男で、それを見たカインは目を疑ってしまった。
いや、嫌な予感が当たってしまったと言った方が正しいのかもしれない。

「さすがに強いね。『兄さん』」

男はそう言うと兜を拾う。そしてカインの方を見た。

「見ない間に随分逞しくなったな・・・・・ギン!」

Re: テイルズオブザワールド ( No.29 )
日時: 2011/06/09 21:26
名前: アビス (ID: dFf7cdwn)

—ガチャガチャ—

「・・・・・!」

周りから聞こえる金属が当たる音。その方に目を向けると、
今まで兜をしていた漆黒の兵隊たちが取っていたのだ。
その素顔にカインはもう驚きはしなかった。

「やっぱりお前らか。生きててくれたのは嬉しいが、
それは一体どういうことだ?」

カインはギンに切っ先は向けながら言う。
漆黒の兵隊。それは村を襲い、惨殺の限りを尽くしたインヴェル軍の兵隊だ。
その鎧に身を包んでいるなどありえないことだ。

「どうしたギン。この俺に隠し事か?
家族の間で秘密は厳禁。悩みなら皆に話し、一緒に考え、朗報なら皆で喜び、一緒に笑う。
それが俺らが決めたルールだ。しかもお前が率先してな」

「・・・・それだから兄さんは甘いんだよ」

「!!!」

—ギィイイン!!—

後ろからの攻撃に素早く防ぐカイン。その攻撃してきた顔を見て、
カインは薄い笑みを溢した。

「まだ俺の稽古が必要か、トウヤ」

「その必要は・・・・ない!」

トウヤに吹き飛ばされるカイン。と、飛んだ方向に土の壁が出現し、
そこからカインに向かって棘が出現する。見ると、一人の女性が杖を構えていた。

「確かにお前には魔術の才があったな、シフォン」

カインは空中で体勢を整え、その土の壁を壊すべく刀に力を注いだ。

「劫火灰・・・・・」

「ブラスト・レーゲン」

カインの刀に纏った炎が小さくなってしまった。原因はカインの真下に写る魔法陣。
これでは目の前の壁を壊すことが出来ないと思ったカインは、地面に刀を刺し
足で踏ん張り止まろうとした。

棘の先ギリギリのところで止まり、一つ安堵の息を吐くと
その魔法陣を発動した人物を見た。

「さすが気優しいマリアだな。法術系の魔術はお手の物か」

カインは少し嬉しそうな笑みを浮かべながら言う。
どういうわけか知らないが敵側にいるギンたちだが、こうして生きていることは素直に嬉しい。
カインは一度目を閉じる。そして開けた時、その目は冷酷なものへとなっていた。

「・・・・・そろそろそこの岩陰に隠れてる奴、出てきたらどうだ?」

と、カインは言った傍から相手が出てくるのも待たずにその岩を切り捨てた。
そこには誰もいない。だがカインはそのままの状態で口を開く。

「わざわざ俺に会いに来るなんて、そんなに死にたいのか。ハイゼン」

カインの後ろには悠々とした立ち振る舞いでハイゼンがいた。
ハイゼンは鼻で笑うとそれに答えた。

「貴様にその実力があるのならとっくにやっているはずだろう?
それに貴様に会いに来たのではない。こいつらの出来を見に来ただけだ」

ハイゼンはそう言うとギンに近寄り、その肩に手を置く。

「ふざけた奴だな。あの時は殺そうとしたこいつらを今は育ててるとはな」

「あの時は気付かなかっただけだ。あの後森の中でこいつらを発見した時感じたんだ。
一人一人が中々の才能を持っていることをな。殺すのは惜しいと思って、連れ帰ったんだ」

「そいつらが素直に言うこと聞くたまか?」

「勿論洗脳させてもらった。今では喜んで人を殺す程だ」

「・・・・やっぱり愚図だなお前らは」

カインはそう吐き捨てると、刀を構える。それをハイゼンは手で制した。

「まだこいつらではお前には勝てないからな。ここは引かせてもらうぞ」

「そいつらは好きなだけ引かせろ。けどお前はそこで死ね!!」

カインがハイゼンに飛び掛かる。だが、その隙をついてギンたち7人が一斉攻撃を仕掛けてきた。
諸に攻撃を喰らい、地面に倒れるカイン。それを見てハイゼンは飛竜を呼び、それに皆を乗せ始めた。

「ギン、せっかくだ。そいつを始末しとけ」

「分かったよ。ハイゼンさん」

ギンは剣を取り出しカインの傍まで寄った。と、そこで動きを止めた。

「・・・・・どうしたギン。出来ないのか?」

それに不思議に思ったハイゼンが問い掛けるが、ギンは出来るとばかりに首を振るうと、
剣の切っ先を胸の中央へと持って行き掲げた。

「ばいばい」

ギンは最後にそう言い残し、剣を振り下ろす。カインの胸の中央に剣が真っすぐに突き刺さっている。
ハイゼンもそれを確認しギンにも早く乗る様に命じる。
ギンはカインを最後に数秒見つめた後、飛竜に乗って空へと飛び上がって行った。

————————————————————

ルイとヴァイズは暗い洞穴の仲を進んでいた。
所々魔物の死骸等が食い散らかされており、異臭も漂っていた。

「う〜〜〜〜。臭い〜〜〜〜」

「言うな、余計気になるだろう」

「あ〜〜〜〜〜!!臭い臭い臭い臭い!!」

「はぁ〜〜〜〜。カイン氏は何時もこんなルイ嬢のテンションに付き合わせれてたのか?」

ヴァイズはうんざりと言わんばかりの表情をする。
さらに暫く進んでいくと大きな空洞があるところに出た。天井はなく、真上から日差しが辺りを照らす。
ここは他の場所よりもさらに異臭が漂っていた。それだけの量の魔物の死骸があるのだ。

「幾ら食欲旺盛って言ってもこれはちょっと異常っしょ・・・・」

ヴァイズは思わず鼻を押さえながら近くにある死骸の状態を見る。
銃弾で撃ち抜かれた跡。これは恐らく自分が撃ち抜かれたものと同じものだ。
だが、それとは別に妙な傷跡がある。まるで何かに噛まれたような・・・・・。

—バサッ!バサッ!!—

「ルイ嬢!上を見ろ!!」

「ほえ?」

ルイが上を見るとそこから大きな鳥が下へと降りてきていた。
ドシーーン!と大きな音を立て地面に降り立つ大鳥。
その目は動く彼らを睨みつけていた。

「ありゃりゃ〜〜。もしかしてご機嫌斜め?」

「どう見てもそうっしょ!くるぜ!!」

Re: テイルズオブザワールド ( No.30 )
日時: 2011/07/14 15:17
名前: アビス (ID: dFf7cdwn)

—ピギャアアアーーーー!!—

甲高い鳴き声を発したかと思うと、大鳥はその大きな翼を羽ばたかせた。
辺りに突風が起こる。ヴァイズは死骸の山を盾にその風を防ぐ。

「ルイ嬢!!大丈夫か!!?」

「・・・・じょうぶ〜〜〜・・・」

風が邪魔して聞き取りにくいが、どうやら無事らしい。
ほっと息を吐くヴァイズだが、今度は自分がピンチな事に気がついた。
大鳥がこちらに狙いを定め、何か力を溜めているようだったからだ。

「やばっ!」

ヴァイズが慌ててその場から移動しようとしたが、遅かった。
大鳥が翼を振り下ろすと、そこからカマイタチに似た風が数多に飛んでいったのだ。

「ぐおおおおお!!」

「ヴァイズ!!!」

吹き飛ばされ、傷を負ったヴァイズにルイはた直ちに駆け寄り治癒術を掛ける。
だが、そんな暇も与えないとばかりに大鳥は二人に風の刃を飛ばす。
もう駄目だと思った時、その風が二人を避けるように方向を変えた。

「・・・・・え?」

不思議がるルイ。と、その頭に声が響いた。

—大丈夫ですか?—

その声と共に現れた小さな少女。ルイが首を傾げていると少女は笑った。

—ふふっ。私があなたが会いたがっていた風の精霊・シルフですよ—

「あっ、そうなんだ!・・・・でも、どうしてここに?」

—あなたの持つソーサラーリングに収められているオーブ。
それは私たち精霊にとっては自身と同じ力を秘めた結晶です。
ですからそれを通じてあなたの前に姿を表すことが出来るのです。
元々精霊は形があって無い者。言うなればこの世界に満ちる風が私ですから—

シルフの言葉にルイは更に首を傾げた。

「むむ〜〜〜。よく分からないけど、シルフが助けてくれたんだね。ありがとう!」

そんな会話を聞いていたヴァイズが傷口を抑えながら言った。

「驚いたな。ルイ嬢は召喚士でもあったんか」

「まあ・・・・成り行き場ね」

—呑気に話している場合ではないぞ、ルゼス—

「ウンディーネ!」

自分の横に現れたウンディーネを見て叫ぶルイ。だが、ウンディーネはそれを介さず大鳥を見つめる。

—こいつは聖鳥・シムルグ。この峡谷を縄張りにする別名、アルテマの掃除屋だ。
自分の縄張りが穢されると、それを直ぐに排除する厄介なモンスターだ—

「く・・・詳しいね」

—この辺りの栄える水から聞いたことだ。どうやら、何者かにこの峡谷を荒されて
相当気が立っているようだな。見境が無くなっている—

ウンディーネの顔から、それが本当に不味い事だという事を表していた。
その大鳥、シムルグは精霊の存在に気付いたのか、こちらを見据えたままじっと立っている。
だが、直ぐに痺れを切らしてこちらに向かって飛んできて、二人の真上に飛び上がる。
そして今度は上から風の刃を雨の様に降らしてきた。

「っつ!ルイ嬢!!」

「うん!お願い、シルフ!!」

—分かりました—

ルイの言葉にシルフは二人の周りに風の結界を作る。これは先ほど、風の刃の方向を変えたのと同じである。

—チカッ—

「ん?」

ヴァイズは目の端の死骸の山から何か光る物を見つけた。目を凝らして見た後、
ヴァイズは風の結界を抜けて、それに向かって走り出した。

「ヴァイズ!!危ない・・・・!」

—ズドドドドドーーン—

ルイの叫びも空しく、刃の雨が地面が大きく削り取る。辺りに土煙りが舞い、
ルイはヴァイズの安否が確認出来ないでいた。

—土煙りを払いますね—

シルフの気遣いにルイはシルフを見つめて頷いた。

「うん。ありがとうシルフ」

風がルイを中心に吹き、土煙りを払った。するとヴァイズが血まみれで倒れているのを見つけた。

「もう〜〜〜!!危ないよヴァイズ!!」

「わ・・悪いね、ルイ嬢」

消え入りそうな声でヴァイズは喋ると、体の下からある物を取り出した。
それはルイも見たことのある物だった。

「それ、グライダー?」

「おう。これをさっき死骸の中から見つけてな。良かったぜ。壊れてはなさそうだな」

自分の怪我も気にせずにグライダーの無事を喜ぶ。それにルイが呆れた様子でため息をつく。

「とことん機械が好きなんだね」

「俺の生き甲斐だからな」

ヴァイズはそう言って立ちあがると、左手にグライダーを装着した。

「やっぱ、両方付いてた方がしっくりくんな。・・・さてと・・・・・ん?」

臨戦態勢に入ろうとしたヴァイズだが、そこでシムルグの様子が変な事に気がつく。
シムルグは顔を上に向けたまま、何かを探っているようだった。
そして何かを感じ取ったのか、そのまま空へと飛んで行ってしまった。
それを唖然として見届ける二人。

「嵐のようにやってきて、去って行ったね・・・・」

「・・・・・そうだな」

Re: テイルズオブザワールド ( No.31 )
日時: 2011/08/17 10:49
名前: アビス (ID: dFf7cdwn)

「よっと・・・・後はここを調整してっと。
・・・・・よっし!出来たぜルイ嬢!!」

シムルグが去ってから一時間程度。ヴァイズは故障したグライダーの修理をしていた。
それがようやく終わったのだ。ルイは待ちくたびれたとばかりに欠伸をする。

「長いよヴァイズ〜〜〜!」

「そう言うなよ。そこら辺のモンスターの残骸から使える素材をだって限られてくるんだ。
これでも急ピッチで作業したんだぜ?」

ヴァイズは最後にグライダーからの風力の出を見て、頷いた。

「そんじゃあ、こっから出るがルイ嬢。協力してくれ」

「協力?何を」

「シルフの嬢ちゃんを呼んでほしんだ」

—私なら、ここにいますよ—

ルイの傍で眩い光が放たれ、シルフが現れた。

—私に何か頼み事ですか?—

「察して良いと助かるぜ。俺らを外に運ぶのに少し協力してほしんだ」

ヴァイズの頼みに、シルフは少し困ったような顔をした。

—・・・・・ここは川の浸食で造られた峡谷。故にこの辺りは水の恩恵が強いです。
風の恩恵が強い場所ならともかく、ここでは人一人持ち上げるのが精一杯ですよ?—

「恩恵?なにそれ?」

ルイの言葉にヴァイズが説明した。

「あまり知られてねぇが、マナってのは地水火風、4つの種類があるんだ。
そんで世界にはそれぞれのマナに偏りが生まれる場所が存在すんだよ。それが恩恵って言われる現象。
その恩恵が最も強い場所に精霊が生まれんだ。水の恩恵が強い場所なら水の精霊が生まれるって感じでな」

「へ〜〜〜〜〜!詳しんだねヴァイズ!」

「マナは万物を構成する大切な元素だからな。マナの知識が機械に役立つことも多いんだぜ、意外に。
・・・・・と、話を戻すが、嬢ちゃんにはルイ嬢を持ち上げて欲しいんだ。
このグライダーじゃあ、二人を運んだまま空中を自在にってのは難しいからな」

—分かりました—

シルフは承諾すると、ルイの周りで風が吹き、ルイの体が宙に浮いた。

「うわ!!うわわわわわ・・・・!!」

ルイの突然足元が浮いたことでバランスが悪くなり、身体をバタバタさせ始める。

「落ち着けよルイ嬢。風に身を任せてみろ。気持ちいいぞ」

そう言ってヴァイズもグライダーを起動させ、身体を宙に浮かせる。

「そんじゃあ・・・・行くぜ!!」

ヴァイズが飛び、ぐんぐんと上げって行く。それに付いていくようにルイも飛んで行った。
あっと言う間に洞窟を抜け、辺りに壮大な景色が広がる。それにヴァイズが胸一杯に深呼吸をする。
ルイもキラキラした顔で額に手を当て、遠くを見つめる。

「ふぁ〜〜〜〜〜!!」

「やっぱ何度体験しても良いもんだな、空からの景色は。
さてと、まずはカイン氏を見つけるぜルイ嬢!」

「ふぁ〜〜〜〜〜〜〜!!!」

ルイはヴァイズを背にして、辺りの景色を見渡し続けている。
それにヴァイズはため息をついた。

「・・・・・聞いてないっと。・・・・嬢ちゃん!!」

—はい—

「ひゃあああ!!」

ヴァイズはシルフに言って動き出すようにした。
急に自分の体が動き出したことに驚くルイ。
それを気にせずヴァイズは辺りに目を凝らす。と、

「ヴァイズ!!あれ!!」

ルイの呼びかけに振り向くと、ルイはある方向に指をさしていた。その方向に目をやると。

「カイン氏!!」

カインが高い岩山の平地で倒れているのが目に入った。直ぐにその場に向かう二人。

「カイン!!」

ルイが駆け寄るが、そのカインの状況に口を覆った。
カインの体は様々な攻撃を受けた跡があり、致命傷になりうる剣が胸の中央に刺さっていた。

「まさかカイン氏が・・・・・・ん?」

ヴァイズが目を凝らす。カインの左手がピクピクと痙攣しているように見えた。
そして次の瞬間、その左手がぐわっ!!と動き、自分に刺さっている剣を抜き取り、起き上がった。

「・・・・・・っつ!!」

カインは苦痛の表情を浮かべて、そして横にいる人物を見た。

「・・・・・ルイ?」

「・・・・・・・!!」

ルイは喜びで言葉が出ず、そのままカインに抱きついた。

「いっ!!!」

カインは更に苦痛の表情を浮かべるが、ルイは更に強く抱きしめた。

「よかったよ〜〜〜〜。カイン、死んでなくて」

—ミキミキ・・・・・ゴキ!—

「・・・・・・・」

「・・・・・・死んだな」

カインが再びぐったりとしてしまったのを見て、ヴァイズが哀れそうに言う。

「ああ!カイ〜〜〜ン!!!」

Re: テイルズオブザワールド ( No.32 )
日時: 2011/10/01 12:02
名前: アビス (ID: dFf7cdwn)

「ふ〜〜〜〜、ったく」

「あはっ、あははははは〜〜〜〜。そう怒んないでよカイン」

「危うく本当に死にかけたんだぞ」

あの後なんとか息を吹き返したカイン。今はゆっくりと腰を下ろし、
ルイの治癒術を受け傷の手当てをしている。

「それにしてもよく助かったなカイン氏。正直もう駄目だと思ってたぜ」

「ああ。俺も覚悟してた」

「けど、どうして生きてんだ?胸に刺さった剣じゃ確実に・・・・」

「こいつのお陰だ」

ヴァイズが言葉を言い終わる前に、カインは懐からある物を取り出した。

「あ!それって・・・・」

ルイが事を上げる。それは以前カインが家族の証しとして作ったと言っていた木彫りだった。
その木彫りには亀裂が入っている。

「そっか。それが剣を止めてくれたから胸に刺さらずに済んだってことだね」

「ああ・・・・・」

カインは生返事をした後、その木彫りをじっと見つめたて、怪訝そうな表情をした。
そして自分のポケットを探った。

「どうしたんだカイン氏?」

その行動に不思議に感じたヴァイズが尋ねるが、カインはいや、と言って木彫りをポケットにしまった。
そして立ち上がると、体の調子を確かめるように動かした。

「もう大丈夫そうだな。助かった、ルイ」

「うん」

ルイは嬉しそうに頷くと、ヴァイズの方に顔を向けた。

「ここからだと、テルカってどっち?」

「運良いことに、すぐそこの崖を下ればもうテルカだ」

「本当か?」

「ああ。取りあえずここを抜けたらまずルインを目指すぜ。
ルインなら俺らのアジトもあるから休みめるし、情報も欲しいだろ?」

確かに、テルカに入って直ぐにあちこちうろつくのは不味いと思う。
それに一度ゆっくりと休憩したいと、二人も思っていた。

「わかった。それじゃあ、次の目的地はルインだな」


〜ストーリースキット5〜

ルイ「ねぇねぇ、ヴァイズ。テルカってどんな所なの?」
ヴァイズ「そうだな。他の国に比べると断トツで暮らしやすい場所だな」
カイン「どうしてだ?」
ヴァイズ「自然豊かで魔物の強さも安定してる。町同士のいざこざも少ない」
ルイ「うん!確かにそれは暮らしやすそうだね」
カイン「それでもその国の王は戦争を生みだした一人だろ」
ヴァイズ「まぁ、そうだな。それでもこの国は他の二つよりは戦争に対して消極的だけどな」
ルイ「いろいろ知ってるんだねヴァイズって」
ヴァイズ「レジスタンスの一員としていろんな所に飛んで回ってるからな。
     ・・・・・・それでももうインヴェルには二度と行きたくねぇけどな。
     あそこの王は国民に対しても非道な行いをし過ぎだ」
ルイ「・・・・・・・」
カイン「ルイ?」
ルイ「あ、何でもないよ!何でも!!」
カイン「???」

〜戦闘スキット2〜

ヴァイズ「ルイ嬢とカイン氏は息ピッタリだな」
カイン「もう随分と一緒にいんだ。自然と合って来て当然だろ」
ヴァイズ「けど、あのルイ嬢に合わせるのは大変だったろ?」
カイン「ああ。初めは、魔術が俺に襲って来たりしてな」
ヴァイズ「そりゃ、こえーな」
ルイ「ちょっと〜〜〜〜、私だけ悪い見たいな言い方しないでよ!
   カインだって、いきなり私に剣突き立てて来たりしたじゃん」
カイン「あれはお前の後ろにモンスターがいたからだ」
ルイ「だからって一声くらい声掛けてくれても良かったじゃんよ〜〜〜」
ヴァイズ「あははは・・・・・。ある意味、お宅らは初めっから息ピッタリだったみたいだな」

〜料理スキット2〜

ヴァイズ「おら、飯出来たぞ!」
ルイ「うわ〜〜〜。ヴァイズって料理上手だね。随分凝った料理もあるし」
ヴァイズ「料理は得意な方だからな」
カイン「意外だな。機械以外は適当な感じがしたんだけどな」
ヴァイズ「お宅〜〜〜、俺を舐めてもらっちゃ困るぜ。これでも家事全般は難なくこなせる」
ルイ「そんな話はいいから、早く食べようよ。お腹空いちゃった」

〜ストーリースキット6〜

カイン「・・・・・・・」
ルイ「・・・・ねぇ、ヴァイズ。何かカイン、さっきっから様子変じゃない?」
ヴァイズ「そうだな。近寄り難い雰囲気出しまくってるな」
ルイ「何かあったのかな?」
ヴァイズ「カイン氏があんだけぼろぼろで倒れてたんと関係あるかもな。
     よっぽどの相手だったのか、それとも・・・・・」
ルイ「う〜〜〜ん。カインに聞くのが一番だけど、今はちょとね〜〜〜」
ヴァイズ「なんだルイ嬢。さすがにそれぐらいの空気は読めるんだな」
ルイ「ちょっと〜〜〜!!どういう意味!!」
カイン「・・・・・ギン。もしかしてあいつ・・・・・・」



〜ルイン〜

「ここがルインだ」

「大き・・・・・くはないけど長閑そうな町だね」

「まあな。そんじゃ、まずは・・・・・」

「待ちやがれ!!」

町に入ろうとしたカインたち。そこに叫び声が聞こえてきたかと思うと、
突然空から男が飛び降りてきて、カインに刃を向けた。
カインは即座に剣を抜き、その攻撃を防ぐ。

「っつ!いきなり何すんだ!?」

「てめーらを町に入れさせるわけにはいかねーんだよ!!」

「え・・?え・・!!?」

突然の出来事にあわめく戸惑うルイ。すると、ヴァイズはため息を漏らしてから言った。

「エミル、落ち着けよ。こいつらは敵じゃねぇ」

「・・・・・ヴァイズ?」

エミルと呼ばれた男はヴァイズを見ると、剣を握る手の力を緩めた。
そしてカインとルイを見た後、剣をしまった。

「ヴァイズ、随分と遅い帰りじゃねぇか。てっきりどっかでくたばってるかと思ったぜ」

「それよりもまず言うことがあるだろ?」

「う・・・・・・・。悪かったな、お前ら」

エミルが二人に謝るのを見てから、ヴァイズは気を取り直して口を開いた。

「改めて。ようこそ、ルインへ。歓迎するぜ」