二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【二ノ国】 マルの『秘密の冒険』 ( No.123 )
日時: 2013/01/20 17:43
名前: 彌浪 (ID: u6knrXHP)
参照: 久しぶりに。

18話 形見

ソーラは、強く願った。
"生き返りたい"と。
それは、「今度こそは」と世界を支配する為ではなく、償いの為。
しかし、その言葉は、誰に届く筈も無く…
只々願うだけの、願いに終わる願いであった。


オリバー達は、ソーラの死体と、溢れ出す血を、じっと見ていた。
「これ…どうしようか」
そう呟いたマルに、オリバーは静かな声で返す。
「此処に置いとけば良いと思うよ…ソーラの故郷は知らないから。今は、静かに、眠らせてあげよう」
そう言って、ヒールオールのルーンを描いた。
決してこれで生き返るという訳では無いが、傷口——口というには規模が違い過ぎるが——が塞がる。
それでも、血の海に寝転んでいる女性という物は、見てて違和感があり、気持ちが悪い。
また数秒静寂が訪れる。皆、下を向いて黙っていた。
そこで、ハリケーンを斬った張本人、ルッチが何かを指差して飛びはねた。
それは、ソーラの腰にある鞘に収まった剣だった。
しかし、オリバー達が知っている中で、ソーラは一度も剣を抜いた事がない。飾り同然の代物であった。
しかし、実はこの剣、稀に使うのだ。状態異常の効かない相手と対峙する時など…。因みに魔法も使える。ファイアボールやヒール程度なら——そもそも、杖であろうとソーラはそれくらいしか会得しようと思わなかっただろうが——。
ルッチは、これを欲しがっていた。
(形見にもなるし)
殺した本人が言うには、偉そうにしているように思える話だが、本人に悪気はない。
抜いた事ないのに形見ってなんじゃい…。と思うが、ルッチの剣は血がべっとりと付いていて——無論、ソーラの血である——、取ったとしても、斬れ味の悪そうな剣だった。
だから、オリバーは、仕方なくそれを許し、ソーラの腰から剣を抜き、ルッチに渡した。前の剣は、そこに居る人を斬った剣として、隣に置いておく事にした。
そして、本当の形見を決める事にした。
"形見決め"なんて言うと、何処かのバーゲンのような雰囲気が漂っており、嫌な感じがするが、形見が"抜いたところを見た事の無い剣"というのは辛いので、決める事にしたのだ。
「これとか?」
そう言ってマルが指差した物は、髪を束ねるゴムだった。
血が染み込んで、殆どが真っ赤だが、天井側の一部は、少し元の青い色が残っている。
「他に…見当らなそうだな」
FUが言った。
オリバーは、丁寧に——というより、只異性のそういうものを触るのが、若干気が引けただけかもしれないが——ソーラの髪ゴムを取った。
握り絞め、辛そうな顔をした。閉じた目から、涙が一粒、零れ落ちた。