二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: とんがりボウシと魔法のお店 ムーンライト魔法学校だより ( No.66 )
日時: 2011/05/14 08:07
名前: minmin ◆LZFWVlxGhU (ID: BKGAQbzV)
参照: 参照400突破ですか?

第十三話 ユニコーン騒動


「三人とも。最近、森に白くて綺な樹があるんだって。」

「「「白い樹?」」」

楓が発した言葉に驚き、私達はは思わず聞き返してしまった。

今までは、森に白い樹なんて生えていなかったはずだ。
もし苗があったとしても、魔界では3〜4日程経たなければ育たない。
白い樹なんて珍しいから、きっと成長途中で見つかって「成長途中の白い樹があった」と、話題になるはず…。

「4人で見に行きますか。」


私たちは森へ向かった。

——森——


「コレか…」

私達は一本の白い樹を見上げた。
思ったよりも高く、一日で育ったとは考えられなかった。


『恋はいずれ、愛へと変わる
恋に眠る愛の種
愛の種が開かせた愛の力を持つ花を我が元で掲げよ…』



突然、私たちの脳裏にそんな言葉が過ぎった。


意味はよく解らないけれど、
花を掲げれば何かが起こるようだ。

「これ、ユニコーン事件みたいだね…。」

のえるちゃんが攻略本を見ながら呟いた。

さすがに物語の中で攻略本は反則だろ…。
と、思ったが口にしないでおいた。


…あれ?

「ユニコーン!?」

私は思わず叫んでしまった。

「何?ユニコーンがどうかした?」

のえるちゃんが尋ねる。

ユニコーンが現れるというのに、
平常心でいられることが凄いと思う。


「ユニコーンは極めて獰猛で力強く、勇敢で、相手がゾウであろうと恐れずに向かっていくという。
足が速く、その速さはウマやシカにも勝る。
角は長く鋭く尖っていて強靭であり、どんなものでも容易に突き通すことが出来たという。
例えば、セビリアの教会博士の聖イシドールスが著した『語源集』には、ユニコーンの強大な角の一突きはゾウを殺すことが出来るとある。
このユニコーンとゾウが戦っている挿絵が『クイーン・メアリー詩篇集』に載っている。
また、ドイツのスコラ哲学者、自然科学者のアルベルトゥス・マグヌスは『動物について』で、ユニコーンは角を岩で研いで鋭く尖らせ、戦闘に備えているという。
ユニコーンは人の力では殺すことは出来ても、生け捕りにすることは出来なかったという。
たとえ生きたまま捕らえられたとしても絶対に飼い馴らすことは出来ず、激しい逆上の中、自殺してしまうという。
さらに、アレクサンドリアの修道士、地理学者のコスマス・インディコプレウステースは『キリスト教地誌』の中で、ユニコーンは狩人に取り囲まれ逃げ道を失った時、断崖から真っ逆さまに身を投げ、その角を地面に突き立てて落下の衝撃を和らげて逃げると言っている。
この逃げ方は、オリックス、アイベックス、ジャコウ・ウシ、アルガリに見られるものである。
大ポンペイウスはユニコーンをローマに連れて来て見世物にさせたという。

ユニコーンの角には水を浄化し、毒を中和するという不思議な特性があるという。
さらに痙攣や癲癇などのあらゆる病気を治す力を持っているという。
この角を求めて人々は危険を覚悟でユニコーンを捕らえようとした。
グリム童話の『勇ましいちびの仕立屋』には、仕立屋が国を荒らすユニコーンを捕まえる場面が出てくる。
仕立屋は、ユニコーンを激怒させると素早く樹の後ろに隠れた。
そこへ怒り狂うユニコーンが仕立屋をめがけて突進して来るが、その武器である貴重な角をうっかり樹に突き刺してしまう。
こうしてユニコーンは縄で縛られ、王の所に連れて行かれた。
エドマンド・スペンサーの『神仙女王』に出て来るライオンも、この方法を使ってユニコーンを出し抜いている。
ユニコーンを捕らえるもう一つの方法は処女の娘を連れて来てユニコーンを誘惑させて捕まえるというものである。
不思議なことにユニコーンは乙女に思いを寄せているという。
美しく装った生粋の処女をユニコーンの棲む森や巣穴に連れて行き、一人にさせる。
すると処女の香りを嗅ぎつけたユニコーンが処女の純潔さに魅せられ、自分の獰猛さを忘れて近づいて来る。
そして、その処女の膝の上に頭を置き眠り込んでしまう。
このように麻痺したユニコーンは近くに隠れていた狩人達によって身を守る術もなく捕まるのである。
しかし、もし自分と関わった処女が偽物であることがわかった場合は、激しく怒り狂い、自分を騙した女性を八つ裂きにして殺してしまうという。
処女を好むことから、ユニコーンは「純潔」「貞潔」の象徴とされた。
しかし一方で「悪魔」などの象徴ともされ、七つの大罪の一つである「憤怒」の象徴にもなった。
レオナルド・ダ・ヴィンチは『動物寓意譚』の中で「ユニコーンはその不節制さのために自制することを知らず、美しき処女への愛のために自分の獰猛さと狂暴さを忘れて処女の膝の上に頭を乗せ、そうして狩人に捕らえられる」と言っている。
ここではユニコーンは「不節制」を象徴するものとされた。
フランスの文学者、啓蒙思想家のヴォルテールは『バビロンの王女』の中で、ユニコーンを「この世で最も美しい、最も誇り高い、最も恐ろしい、最も優しい動物」として描いている。」

ここには処女はいるのに乙女がいない=ちょっとヤバイ?
という状況…

どうしようか悩んでいるうちに、一つの選択肢が思い浮かんだ。
それは、ユニコーンを殺すということ。

別に生け捕りにする必要もないし、それでいいだろう。


決心がついたので…戦闘開始!


「皆、戦闘準備ok?」

そう言って、私は身構えた。

「「ok!」」

私に続いて、のえるちゃんと楓も身構える。


身構える理由は、
私達の中に乙女がいないからである。
つまり、ユニコーンが襲ってくる可能性が高い…と、いうことだ。


準備はいい。

後は花だ。
愛の花と言ったら(多分)赤いハートの花なので、
私は、赤いハートの花を掲げてみた。




ぱぁぁぁぁぁぁ…





その途端、白い樹が輝いた。


『愛の花を掲げた少女よ
お前と心通わす少年とともに再びここに訪れよ
花咲く前のその種に少しの水をまいてやろう』

私たちの脳裏に、そんな言葉がよぎった。


少年なら、今ここにいるはずなのだが…。

どういうことだろうか。


「そっか!
海斗、今女装していたから間違えられたんだ。」

私たちの中に乙女がいないと思ったから、こっそりと女装させてました♪
まぁ、効果があったのかは知らんが…。

「え…いつの間に!?」

本人は気がついていなかったご様子。

ユニコーンのおかげで、海斗は結構鈍いことが分かった。


(ちょっと残念だけど)海斗の服を元の服に戻した。


…ユニコーンって、実はロリショタ好きなのか?


「おーい、ユニコーン。
男子連れてきたぞー。」

のえるちゃんは樹に向かって、そう言った。




ぱぁぁぁぁぁぁ



また、樹が光った。

すると今度はユニコーンが現れ、いきなり語り始めた。

「『恋は盲目である』と、ある者は言った
だが、目に見えぬ真実をそのうちに秘めるのもまた、恋
隣にいるものをいつも心で見つめなさい
そうすれば決してまやかしに惑わされたりしない」

私は、意味の分からない言葉を軽く聞き流し、戦闘を始める。


「まず、この邪魔な角を折って…。」


私は、目を丸くして突っ立っているユニコーンの角に触れた。




バキッ




大きな音がした。


音の原因は簡単。

私がユニコーンの武器を折ったからだ。


「ユニコーンの角には解毒作用があると考えられ、教皇パウルス3世は大枚をはたいてそれを求めたという。
また、フランス宮廷では食物の毒の検証に用いられたと伝えられる。
言い伝えに拠れば、ユニコーンの角は毒に触れると無毒化する効果があるとされたが、後に毒物の成分が含まれた食物に触れると、汗を掻く、色が変化するなどの諸説も生まれたようである。
しかしこれらは北海に生息するイッカクの牙であった。
これにより後々まで、ウニコールの名称で貴重な解毒薬や解熱剤・疱瘡の特効薬として珍重され、イッカククジラの角は多数売買された。
しかし一部には、これらウニコールと偽ってセイウチの牙を売る商人も後を絶たなかったようだ。
またその一部はオランダ経由で江戸時代の日本にも輸入されていた。
当時の医学書には、真面目にウニコールの薬効に関しての記述があった程である。
特に疱瘡の治療薬という部分に関してはペストの流行により、非常に高価であったにも拘らず、飛ぶように売れたと云う記録も残っている。
これは元々、中国で毒の検知にサイの角を用いたのが伝播の過程で、一部の夢想家によって作り変えられた物である様であるが、実際問題として当時用いられた毒物でも酸性やアルカリ性の毒物の場合は動物性タンパク質の変化により黄変するなりして毒の検知に役立ったと思われる。
また中国ではサイの角の粉末を精力増強剤として扱っているが、興味深い事にウニコールが西欧から持ち込まれた際に龍の角とも蛇の角とも言われ、解毒や毒の検知に非常に珍重されたとの事である。


こんな珍しくって使えそうな物、
絶対返さないからね?

この角、貰ってくよ。」


そう言って、私は帰ろうとした。

「千秋、帰るのはまだ速いよ…
今日のディナーは馬肉でどう?」

楓が私を引き止める。
黒い笑みを浮かべながら…。

「馬肉かぁ…最近そういうの食べてないな…。
おk!んじゃ、狩りますか…。」


私もにっこりと微笑み返して言った。
それも、黒く…






グシャッ





森にあった白い樹は消え、
変わりに赤い液体が飛び散った。













———…


「四人とも…どうしたの!?」

魔法学校の生徒が、歩いている4人組の子供を見つけた。
その四人は全身真っ赤で、ペンキを頭から被ったようだった。
しかもその4人は、なぜか赤い物体を持っていた。


にわかに、4人のうちの一人が、口を開いた。

「いえ、どうもしてませんよ?
それより、今日のディナーは学校の生徒の皆で食べませんか?
ちょうど温室開いてますし…。」


「いいね!それ!!皆を呼んでくる!!」

その魔法学校の生徒は、何も知らないまま皆を誘いに行ったのであった——…