二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 星のカービィ 運命の車輪 ( No.77 )
- 日時: 2011/04/04 20:45
- 名前: 満月の瞳 ◆zkm/uTCmMs (ID: A2bmpvWQ)
第8章 十色の作戦会議
ぼんやりとしていた視界が、急に開けたような気がした。
やわらかい羽毛のような空間から、飛び出たような気分がした。
生暖かい風を感じる。
体が重くなっていく。
気分がだるくなってくる。
そこらじゅうに痛みを感じ始める。
呼吸音が聞こえる。
どんどん大きくなって聞こえる。
それが、時分の呼吸している音だと気づく。
意識が少しずつ覚醒していく。
カービィは、夢から覚め、現実に目覚めた。
「ん…う……ここ…は?」
まだうっすらとしている意識。
まだ自分がどこにいるのか、何をしていたのかすらわからないような状態だった。
「カービィ!?起きたの?」
誰かの声が聞こえた。
聞き覚えのある声。
「フーム…」
カービィは声の主の名前を呼ぶ。
「よかった!もしかしたらもう起きないんじゃないかと思ってすごく心配したんだからね!」
フームはカービィを抱きしめる。
その瞳は兎のように赤くなっている。
ずっと泣いていたのだろうか。
体も小刻みに震えている。
「…ここは…?…あれ?ボクはドロッチェに捕まった気が…」
「ここはデデデ城だ。あれから、私があいつと戦闘になったんだ」
「!メタナイト!その怪我…!」
カービィの視界に、メタナイトが入ってきた。
しかし、その姿は、たくさんの治療を施された姿だった。
「お前も人のこと言えないだろ」
カービィはようやく今の自分の状況を理解した。
自分自身もたくさんの治療を施されたあとがあり、右足は固く固定されていた。
どうやらデデデ城の医療室のベットで眠っていたらしい。
「…まさか…ドロッチェに…?」
「ああ。奴の本気モードには度肝を抜いたな。私は今まで数多くのプレイヤーと戦ってきたが、その中でもあいつは最強レベルだった。あいかし、私も負けられないものでな。本気で出迎えてやったら。途中で仲間を抱えて逃げ出したよ。引き分けくらいだな」
「ドロッチェが本気を?ボクの時は本気じゃなかったのに」
「どうやら…あいつはずいぶんと仲間思いなのだな」
「どちらにしても、カービィにも、メタナイト卿にも怪我をさせたんだから許せない!それに住民の皆を…!」
「あー!皆!皆はどうなったの!?」
フームの言葉にカービィは思い出す。
捕まってしまった住民たちはどうなってしまったのか。
「住民たちはまだ…レン村長の家で捕まっている。ドロッチェ団たちはチューリンとかいう種族たちに厳重な警備を指示している。しかもその種族が種族だ。数が多すぎる」
「そんな…皆…無事かな…」
「おそらく…いや、無事だ」
「!メタナイト…なんでわかるの?」
「昨日…私たちがあいつらと戦闘しているとき、ドロッチェ団の一部が
城の食糧庫に襲撃したんだ」
「げ!まさかごはんが全部…!」
カービィは世にも恐ろしい表情をする。
なにせ、食べ物はカービィにとっての天使なのだから。
「ほとんど盗まれた」
「ぎゃあああああああああああ!!」
カービィはあまりのショックに叫び声を上げる。
「そ…そんなバカな…こ…これからボクらは…なんてひもじい思いを…
しなければ…」
カービィは今にも泣きそうな悲痛の声をだす。
「いや、ほとんどと言っても、たいしたことはない」
「はい?…なんかよくわかんないんだけど…」
「もともとデデデ城にはすごくたくさん尋常じゃないほど食料があるのよ。ほとんど盗まれたといっても、1か月くらいは全然もつわ」
フームの説明に、カービィは「よかったー」と胸(?)をなでおろす。
しかしすぐに「ん?」と疑問が浮かんだ。
「え?じゃあさ。ドロッチェ団はいくら人数が多くても、そんなにたくさん盗む必要とかないんじゃないの?レン村長の家に立てこもってるんだよね?デデデ城を食料難にするつもりなら、ある程度盗んで、食糧庫燃やしちゃったほうがよかったんじゃないの?なんでかさばる物をそんなに盗んだんだろう?宝石とかならともかく…」
カービィの言葉にフームもメタナイトもポカンとする。
「お…驚いたわ…カービィ…よくそこまで考えられたわね」
「見事な疑問だ…ずいぶんと成長したのだな…」
2人の驚きの褒め言葉に、カービィは少し戸惑う。
「ま…まあそれはちょっと置いといて…ボクの考えをどう思う?」
「私たちも同じだ。そう思っていた」
メタナイトは、淡々という。
「…私が予想するに、やつらは住民たちのぶんの食糧を持って行ったということだ」
「え。普通、盗賊団とかは目的のことを聞くまでは、拷問的な扱いするんじゃないの?」
「それが普通だ。だがあの食糧の量ではそうとしか考えられない」
「…」
「ドロッチェ団…どうも引っかかるのだ…」
「なにが引っかかるの?」
医務室の扉が急に開いた。
「!カービィ!体はもう大丈夫なの?」
「アドレーヌ!」
部屋に入ってきたのは、キャンバスを抱えたアドレーヌだった。
「もしかして作戦会議中?あたしも参加!」
「あれ?リボンちゃんは?」
フームの質問にアドレーヌは「力を使いすぎちゃって、今は寝てる」と答えた。
「リボン…大丈夫かな…?」
「大丈夫大丈夫!リボンはとっても強い子だよ!カービィも一緒に旅してたんだからわかるでしょ?」
「うん!」
「さて…話を戻すぞ」
メタナイトはまわり面子を見回しながら、話し出す。
「おかしいと思わないか?昨日の始まりの爆発」
「なにが?」
「ワドルディたちが頑張って消火してくれたんだよね」
一同はよくわからないというふうに、首をかしげる。
「なぜ、湖や海のすぐ近くで爆発させる必要がある?」
「!」
メタナイトの言葉に一同ははっとする。
「そうよね…おかしいわ。水が近くにあるから、すぐに火が消されちゃうもの」
「それが狙いだったのではないのか?」
「狙い?」
カービィは不思議そうに問う。
「あいつらは…被害を最小限におさえようとしている…その中でずいぶんと深い策を練っている」
「最小限?爆発の火災のこと?」
アドレーヌはメタナイトにそう問いかける。
「そうだ。奴らは火災を最小限に抑えて、爆発音だけを最大に引出したんだ」
「爆発音?あのドッカアアアアンってやつ?」
「生物は、被害を目で確かめなくても、音だけで被害
を想定できるということはわかるか?」
「ふえー…?なんにもわかんない…想定?」
「!そっか!つまり本当は小さな爆発でも、爆発音を大きくすれば、大爆発したと見なくても思わせることができるのね!」
ちんぷんかんぷんのカービィとは裏腹に、フームはひらめいたように手をうつ。
「…そして、その音でパニックを起こした住民の皆を
捕まえ、混乱混乱で今にいたる…と」
「なんかずいぶん簡略化したね…」
「いちいち話すことに手間がかかる」(おい)
「…ドロッチェ達ってずいぶんと頭が痛くなるような計算が得意なんだね」
カービィがしょんぼりと声をすぼめて言った。
やはり、ドロッチェの勝負に完敗したことがそうとう悔しかったのだろうか。
そんなカービィを、一同は少しでも元気をだしてもらいたいと思っている。
強く、優しく。
「…ボク、夢をまた見たんだ」
「!」
カービィの予想外の発言に一同は驚く。
そこでカービィは、さっき見た夢の内容を隅から隅まで話した。
- Re: 星のカービィ 運命の車輪 ( No.78 )
- 日時: 2011/04/04 21:28
- 名前: 満月の瞳 ◆zkm/uTCmMs (ID: A2bmpvWQ)
「なんか…よくわからないことになってきたね…」
「術師が秘宝だったとは…」
「世界ってまだまだ不思議なこともあるのね…」
アドレーヌとメタナイトとフームは、夢の内容を聞いて、口々に疑問を発した。
「女の子みたいな声だったよ」
「秘宝にも性別とかあるのかしら…うーん」
「あとー…自分のこと『我』って言ってた」
「ずいぶん昔の一人称を使うのね…太古の秘宝だから?」
「ストップストップ!なんか話ずれてきてる!プロフィール発表じゃないんだから!」
自分の世界に入ろうとしていたフームを、アドレーヌは引き止める。
「また秘宝が未来を伝えてくれたということだな」
「うん。『ブロンテ』は、自然起こった危機じゃないと、止められなくて、だからボク達に解決してもらいたいってこと」
「だいぶ話がつながってきた」
メタナイトは納得したように、うなずく。
「カブー…遺跡に『運命の車輪』があるということか」
「そうだよ。もうじきボクは『ブロンテ』に会うんだって」
「それが未来か。では、もたもたしていられないな」
メタナイトは一同を見回す。
「ドロッチェ団は、まもなくカブーの遺跡に秘宝を奪いに来る。それを止めなければならない」
「やっぱり戦わないといけないのね」
アドレーヌは、強い意志を持った黒色の瞳を光らせる。
「ああ。そして、なんとしてでもドロッチェ団を足止めさせ、食い止めなければならない。そのためにも作戦を立てる。ここは私が全ての指揮をとる。フーム。ワドルドゥとリボン、陛下とエスカルゴン殿を呼んできてくれ」
「わかったわ!」
フームは素早く部屋から飛び出し、廊下をかけていく。
「アドレーヌ。お前はもう戦えるか?」
「うん」
「本当だな。マルク戦の時のようなことにはならないな」
「…ならない…!克服したもの!」
「わかった。この作戦では、お前が最重要のキーマンになるからな」
「え!?まじで!?」
「作戦内容を詳しく話すのはあとだ。とりあえずは、地盤から作る」
メタナイトは、アドレーヌから向きを変え、ベットの上のカービィを見る。
「本来なら、お前は城で休んでいてもらいたいものだが、未来にお前が必要不可欠なら、戦わず、後ろに控えてもらいたい」
「ボクは戦える!」
カービィは叫ぶように言う。
「次は、負けない!」
「その怪我でか?」
「メタナイトだって怪我してるじゃん!」
「重症そうに見えて、怪我自体は軽い」
「うぐぐぐぐぐぐぐ!ボ…ボクだって戦えるのおおおおおお!!」
「…そうやって威勢よく叫んでるものの、本当は相当痛いはずだろ?特にその足」
「!…痛くないもん」
「…」
ポコッ
「ぎゃあああ!!ひ…ひどい!な…なんでいきなり叩くの!?」
「やっぱり痛いんだろ」
「叩かれたら誰だって痛いに決まってるじゃん!!」
「やっぱり、戦うのは控えろ」
「やだ!」
「…次は死ぬかもしれないんだぞ」
「ダメなんだ!逃げちゃダメなんだ!守らないといけないんだ!皆を!
誰ひとりかけないで!」
「…」
「マルクもドロシアもグリルも…ボクが助けてあげられたのかはわからない!救えたのかわからない!無力かもしれない!でも!助けたいんだ
!救いたいんだ!教えてあげないといけないんだ!」
「教える…?」
「ドロッチェ達に…教えないといけないんだ!!」
二人の言い争いを、アドレーヌは黙って見ていた。
「カービィ…」
その一言しか言えなかった。
口に出さなかった。
出せなかった。
☆彡.。.:*・☆彡.。.:*・☆彡.。.:*・☆彡.。.:*・☆彡.。.:*・☆彡.。.:*・☆彡.。.:*・☆彡
「メタナイト卿!呼んできたわ!」
フームが戻ってきたのはしばらく後だった。
部屋の中のカービィたちは、作戦会議をしていたのか、紙に図を描いてメタナイト卿が説明していた。
「…」
部屋の中にいた3人が3人とも、同時にを合わせて
「デデデ(陛下)は?」
と、言った。
☆彡.。.:*・☆彡.。.:*・☆彡.。.:*・☆彡.。.:*・☆彡.。.:*・☆彡.。.:*・☆彡.。.:*・☆彡
「デデデが消えた!?」
「そうなんでゲス…」
エスカルゴンは、デデデが昨日失踪したこと、それを皆に言おうとしていたのだが、あまりにもいろいろなことがありすぎて、忘れてしまったことも、涙ながらに語ってくれた。
「…もっと早く言おうよ…」
アドレーヌは、呆れているのか心配しているのか、よくわからないような感情を込める。
「…困ったね…この作戦…デデデがいないと最後の最後で終わっちゃうよ?」
「デデデ様はどこに行ってしまわれたのでしょうか…」
リボンは、眠ったおかげか、声に元気が戻っていた。
「なんで突然…」
「まさか…陛下!!」
メタナイトの言葉が響いた。
作戦は、そのあとすぐに実行されることになる。
そして
その作戦によって
物語は、変わる。
終わりへ、向かう。