二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 少年陰陽師〜水の巫女に癒しの夢を〜 ( No.5 )
- 日時: 2011/04/23 21:19
- 名前: 勾菜 (ID: OQN7GsL9)
〜安倍晴明編 序章〜
貴船の禁域で目を閉じていた龍神は目を開く。
それに声をかけるのは銀の髪の女性。
「どうされました、高淤様。」
「いや…人間が入り込んだようだな。」
「このような時刻にですか?」
不審げな様子の雹音。
それをちらりと見てから高淤は口を開く。
「雹音よ、様子を見てまいれ。」
「はい、承りました。」
そう言って高淤の前から一礼して姿を消す。
突然の命にもあわてず騒がず、これが雹音の鉄則だ。
といっても、彼女自身も高淤に仕えるようになってから身につけたことだが。
* * *
安倍晴明。
それが彼の名前だ。
十二神将召喚の折に、使わせてもらったお礼をしろと式神に言われたので渋々ここにいる。
「…」
無言のまま足を進めていた晴明だが、ほうと息をついた。
「ここまで来るのにもかなりの時間が要したのだがな…まだ先があるのか…」
「晴明、大丈夫か。」
随従していた六合が晴明を気遣う。
「これが大丈夫に見えるか」
…さすがに疲れたらしい。
そこにカサリと音がした。
ハッとして振り返った晴明の目に映ったのは、銀の髪の女。
それと同時に顕現した六合は警戒の色を瞳に宿す
「何者だ。」
それに臆することなく、女は黄褐色の瞳を見つめたまま口を開いた。
「そちらが先に名乗りなさい。…あなた方が主様の言っていた人間でしたか。一人は人間ではないようですけど…」
「私は安倍晴明。」
「…十二神将六合。」
その名前には聞きおぼえがあった。
「あなたが、安倍晴明…私は貴船の巫女、雹音。何用でこちらに参られたのですか。」
そう問うと、眉間にしわを寄せられる。
「貴船の祭神にお礼をと。」
「そうでしたか。」
瞬間、頭上に現れる甚大な神気。
「ほぉ、我にお礼とな…」
「高淤様!」
「高おかみの神!」
そこには興味深げに晴明たちを見下ろす龍神の姿が浮かんでいた。