二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 星のカービィ 幻想の魔筆  VSドロシア開幕間近! ( No.288 )
日時: 2011/07/17 10:36
名前: 満月の瞳 (ID: A2bmpvWQ)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode


「え…!?」

カービィは、その邪悪な笑みに圧倒され、絶句する。

はぁ—————と、ドロシアは嘆息した。
今の魔女に、ため息はあまり似合わなかった。
そしえ、にやりと唇の端を上げる。

「うふふ…ふふふふふふふ—————どうしても殺してくれないの?」

ドロシアは再度問いかける。
カービィは戸惑う。

「ボ!ボクは戦いたくな—————!」

「だったら—————貴方が私を殺したくなるほどの、殺意を作らなくちゃね—————例えば…プププランドを滅ぼしちゃうとか…」

「!?」

「やめてよ!!」

分厚い扉の向こうから、激しくドアを叩く音とともに、必死のグリルの声が伝わってくる。

「そんなことしたって!ドロシアは苦しむだけだよ!もう誰も殺したくないなら!そんなことしちゃいけないよ!!」

「—————私を殺せるのは、おそらく貴方だけよ、星の戦士様」

ドロシアはグリルの言葉を無視し、カービィに指をさす。

「あなた以外にも強い人はいたわ。貴方よりも強い人もいた。だけど、貴方じゃないとだめなの」

ドロシアはふっと、表情に影をおとす。

「グリルを殺させるわけには、いかないもの」

「—————っ!」

ドロシアの言葉に、扉の向こうのグリルが驚いていることは、見なくても分かる。

確かにドロシアの言うとおりだ。
もし、例えばここにマルクを呼んでいたら、マルクはドロシアを迷いなく喜んで殺すだろう。
マルクは殺戮主義者ゆえ、一人たりとも生き残りを許さない。
無関係の人物だって、殺す。
グリルも、確実に殺されるだろう。

ドロシアはそれを恐れたのだ。
だから、温厚で平和主義の、カービィを招いた。
自分だけを殺させ、グリルを逃がしてあげるために。

「そんなの…あんまりだよ…!」

カービィは苦々しく言う。


Re: 星のカービィ 幻想の魔筆  VSドロシア開幕間近! ( No.289 )
日時: 2011/07/17 16:56
名前: 満月の瞳 (ID: A2bmpvWQ)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode

「星の戦士様。何度も言うけれど、本当に私を殺してくれないのね?」

ドロシアの言葉に、体をブンブンと横にする。
押し黙ったカービィには、殺意なんかこれぽっちもなかった。

「そう—————なら…私と戦いましょうか」

ドロシアは手に持った筆を、真上に垂直にあげる。
キン、と高い音が一瞬響き渡った。

その刹那。

「うわああ!?」

ぐにゃりと、視界が歪んだ。
否、歪んだのは視界ではなく、空間そのものだった。
時系列という存在の定理が、根元から破壊されていく。
室内は幻惑のように、けばけばしい色が一斉に広がっていく。

カービィはバランスを取ろうと、慌てて手足をばたつかせるが、つかめるものは何もなく、空しく空をつかむだけであった。
気分はブラックホールに吸い込まれる感じだった。
カービィは底知れぬ場所に、落ちていくことを直感した。
しかし、今更どうにもできない。
逆らいようもないこの力。
最初に『箱庭』に来た時と似ているが、心地よくはない。
反対に、背筋の寒さを感じる。

カービィはなすすべもなく、どこだかもわからない、特定しようもない空間へと、落下していく。
さっきまでいた室内が、ひどく遠く感じる。
そこから、グリルの叫び声が聞こえた。

〝やめてえええぇぇぇ〟

悲鳴がエコーして、痛いほど頭に響く。
カービィはどんどん離れていく叫びを、必死でとらえようとするが、呪力ともいえない力には、勝てなかった。




♪:*:・・:*:・♪・:*:・・:*:・♪・:*:・・:*:・♪♪:*:・・:*:・♪・:*:・・:*:・♪・:*:・

「戦いという名の選択をしましょう」

ドロシアの声が、頭の内側から流れるように聞こえた。

「私は戦いにおいて、決して貴方を殺さない。死なせない」

足の踏み場もない、空虚な空間に、カービィはまっさかさまに落ちている。

「貴方は私に攻撃しなさい。その攻撃で私を殺しなさい—————私の魔法攻撃は、主に精神破壊。耐え続けられるかしら?私は貴方を殺さないけど、貴方を傷つけることはありとするわ。そのほうが貴方も危機感を感じやすいでしょう?」

すとん

カービィはどこ高も分からない場所に、足をつけた。
かなり高く落ちたはずなのに、衝撃をまるで感じない。
ドロシアの生み出した幻想空間のせいだろうか。
辺り周辺は相変わらずけばけばしく、現実味がない。

カービィは正面を見た。
少し離れたところに、ドロシアはふわりと浮いていた。
魔法の絵筆を、しっかり握って—————

「うふふ—————私は思いっきり手加減しますから、貴方は殺す気で来なさい」

「グリルが—————悲しむよ…!」

「私がグリルと一緒にいる権利などないわ」

ドロシアはきっぱりと言った。

「あのこだけは—————絶対に死なせたくないから」

「でもグリルは、ドロシアと一緒にいることを何よりも望んでいるんだよ?」

「ふふ—————とても、とてもとてもとても…—————悲しいわ」

ドロシアは、遠い記憶を見るような眼差しで、カービィを見つめる。
月色の瞳は、相変わらず美しく澄んでいた。

ドロシアは、筆を持った手で、ドレスのスカート部分を軽くつまむ。
聖母のような笑顔で、少し膝を折ったお辞儀のポーズ。
それはまるで、お城の武道会に出たお姫様のようだった。
そして、改めて名乗った。

「私はドロシア・ソーサレス。—————違うわ。今は〝ドロシア〟だけで十全かしら」

「—————ボクは星の戦士カービィ!あなたは殺さない!絶対に殺さない!」

カービィも名乗った。
お互いを確認しあうように—————

「それはどうかしら?私は貴方に殺されてみせる—————だから、ちゃんと私を殺してね」

「やだよっ!!無理!やだもん!!」







名も無き空間。

VSドロシア、スタート。



舞踏会のワルツは、美しく華やかに、開幕する—————