二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ナビ・ルナ&ムスビ ( No.276 )
日時: 2011/10/22 16:23
名前: ルルにゃん ◆8/MtyDeTiY (ID: 86FuzJA.)

「しっかし、どうしたもんかねぇ。」
 莉々がイビの鏡を手に、おばさんよろしくつぶやいた。
 幸いなことに、わたしも、莉々も、玉ちゃんも、氏神様の神社のご神木の根元にあった小さな洞で見つけた、あの品々を手放してはいなかった。それに、鏡も、ガラス玉も、ヒビ一つ入っていない。
 なので、今もなお玉は光を放ち、それを吸い込む鏡は、変わらずニキラアイナを川に映し出している。
『ぼくの推測ではですね。』
 急に、ムスビが語りだした。みんな、耳を澄ます。
『いつも、ニキラアイナには、水を伝っていっていたです。だから、ぼくは水は扉だと思っていますですよ。』
「だからって、どんな水でも良いわけじゃなさそうじゃん。」
 そしたら大変なことになるよ、と莉々が抗議したが、ムスビの中ではそれは予想済みだったようだ。
『それはたぶん、鍵がかかっているようなものだと思いますよ。あとは、術使いしか入れないというのは、センサーみたいな物でねえですかね。それで、今この川は、鍵が外れかかっているような感じだと思うです。いや、そうですね、鍵はかかっていないけど、扉は閉まっている、ってとこだと思いますです。』
 ふむふむ。ムスビにしては、分かりやすいじゃん。
『この論理でいくと、おそらく妖怪も術使いに入ると思うです。それで、本題の、どうやってニキラアイナに行くかですけど……。』
 ったく、もったいぶらないで話してよ。
 と、口には出していないけど、顔には出ていたようで、玉ちゃんに言われて赤面した。
『まず、ルナさんの力で、少し、扉を開いてみるです。でも、それだけに妖力を使ったら、戦えなくなるですよね。』
「そりゃ、そうだぞ。」
 なぜか、もっけくんが答える。
「そこで、いっちゃんがチカラを使うです。いっちゃんのチカラは無限の可能性があるですけど、まだ使いこなせてねぇですから、ルナさん、手伝ってくださいです。』
「そ、そんな、むりむりむり!!第一、ここはニキラアイナじゃないから、あれが使えるわけ、ないじゃん。」
『でも、前にレギンさんの館でも使えたじゃねぇですか。』
 うっ。それはそうだ。
 そうだ、ルナちゃんは何も言ってないじゃん。
「ルナちゃんは、いいの?」
 ルナちゃんは、一瞬、きょとんとしてこちらを見た。そして、大きくうなずき、微笑みながら言ったのだ。
「人間界と妖界をを守るのがわたしの使命なら、ニキラアイナって猫の世界も守らなきゃ。それに、これには妖怪も関係してるんでしょう?なら、選択肢はないもん。」
 え……。
 もう一度、ルナちゃんの顔を見つめた。すごく、大人っぽく見えた。
 輝く瞳には、固い決意が見える。
 この人は、自分の使命が分かっているのだ。しっかりと。
 わたしは、普段、平凡中の平凡な女の子でしかない。自分が特別だなんて思ってないし、思いたくもない。
 いつも、ニキラアイナにいくときだって、「分けわかんないまま、行って、分けわかんないまま戦って、いつの間にか帰ってきてる」って感じで、使命なんてほとんど考えたこともない。
 それだけ、彼女の周りを取り巻く環境が過酷なのだ。
 そんな彼女を見ると、わたしにも決意が出来て。
「ムスビ、わかった。やってみるよ。」
 ぎゅっ、と右手で、輝き続けているウプトラの玉を握り締めた。