二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: —雨夢楼—amayumerou ≪ボカロ曲小説≫コメ募集中! ( No.21 )
- 日時: 2012/01/12 18:08
- 名前: 夏茱萸 ◆2uA.rd.h2M (ID: lkF9UhzL)
第四帳〜少女は無知なままで人を傷つける〜※微エロ(?)
*鈴華side*
「…全員却下。もっと私を楽しませてくれるお客はいないの?あんなんじゃ相手にもなりゃしないわ」
鈴華は高部屋から自身を指名していた客の何人かをちらっと一瞥したと思えば、しずかな口調でそう告げた。
「でも、どのお客様も立派な御家の出の方々だよ?もう少し考えてみた方が…」
焦った様に玖実が言うと、顔色を変えないままに
「私に合わないと言ってるの。御家なんて関係ないわ」
「…リンちゃん…」
しゅんとなる玖実に気まずくなってしまったのか、鈴華は眉間に皺を寄せる。着物の裾を持ち、薬指を親指で抑え、バネのようにピョンと弾いて玖実の額に当てる。
「痛っ!も〜、どうしたの〜?」
「…二人の時は働いてる人じゃなくって、友達でしょ?源氏名なんかで呼ばないでよ…」
「あ…ごめんね、鈴華」
「別に…」
沈黙が暫く二人の間へ流れる。
先にそれを破ったのは玖実だった。
「そういえばさ!最近この遊郭街で鈴華と一番を争ってるって花魁がいるらしいんだけど、私源氏名しか知らないのよね。鈴華何か知ってる?」
「…ッ!!」
一番出してほしくない話題。
あの子のことだ…
私が昔大好きで、憧れて
「そう、源氏名は確か…」
今、大嫌いな少女。
「ミク…」
『初奈多美香』
*美香視点*
最近やたらと私を指名する人が増えてきた。
気に入らない人ばかりだけど、出来るだけ相手にしてあげている。だって仕事なんだから仕方ないでしょ?
「ミク、指名入ってるわよ。…どうしたの?浮かない顔して…」
「芽衣さん…いえ、普段通りです。それよりも、今のこの街の状況で浮かれている遊女なんて、いやしませんわ。いるとすれば、一人だけですもの…きっと彼女は、こんな街の変化なんて気にも留めないで、気に入らないお客をバサバサ切り離していってるのでしょうし…」
この店の先輩、伊咲芽衣さんが指名を知らせるついでに私を気遣って声をかけてくれた。
芽衣さんはこのお店でも結構人気のある遊女で、お客を選ばないとてもいい人だ。
けれど遊女が客を選ばないというのは、他の店の者にとっては売れない女、という感じで捉えられてしまう。
まあ実際その優しさや気さくな性格、その美貌で芽衣さんはお店で売上・人気ともに2位という売れっ子さんなんだけど。
当たり前じゃない。私の先輩なのだから、そこらの女と一緒くたにされちゃたまんないわ。
「…はぁ〜…まだあの子と喧嘩してるの…いい加減仲直りしたらいいのに、貴女も強情ね」
「ッ今はそんな時じゃないでしょ?あのお方が、私のもとへもう一度訪れると言ってくださったの!私はそれ以外のことなんて、今はどうだっていいのよ!それに、彼女とは喧嘩なんてしていないわ!…私が…ッ」
「わかった、もういいから…あのお方っていうのは、例の可愛らしい男の子のこと?名前はなんて言ったっけ…あぁそうだわ。確か…レン君、だっけ?」
…数日前のあの事件が今も身体に染み込んで取れやしない。
いつものように気に入ったお客と寝て、着物を正していたところに彼が来た。
最近巷を騒がせている遊び人、レン。
「指名だ。ここの店で一番の花魁を出せ」
「承知致しました、こちらのお部屋でお待ちくださいまし。…ミクちゃん、指名です」
呼ばれてさっさと別の着物を用意してもらうと、素早く着替えて指名してくれた彼の前へと顔を出す。
ゆっくりと襖を開けると、美しい金の髪をなびかせながら、着流しを肌蹴させている青年の姿が目に入った。
…一目惚れだった。
この瞬間、私はこの初めての気持ちに戸惑いを隠せなかった。
柄にもなく狼狽えてしまう私の体を彼はそっと抱き寄せると、耳元で吐息交じりに囁いた。
「…緊張してるわけじゃないでしょ…?リラックスしなよ…」
「…っぅ、は、い…」
どうしようもなく身体が疼いてしょうがなかった。
彼のすべてを手に入れたくて、自分のすべてを曝け出した。何から何まで…
「ね、ミク…」
「ぁ…っなん、ですか…?」
「愛してる…」
「ッレン…レン!私も、大好きよ…」
嬉しそうに私を抱きしめてくれた彼に、一瞬だけでもレンを独り占めできた気がして優越感に浸ってしまった。
彼が遊び人だなんて事実は私を苦しめたけれど、ひと時だけでも私に触れてくれたのだから私は満足だった。
帰る間際に彼は私に
「次はキミを迎えに来るよ…待っていて」
確かにそう言ってくれた。
「まったく…もし彼が迎えに来なかったらどうするの?」
「その時は…花魁を辞めますわ。だって、今の私には彼しかないのだから…」
強い意志を込めた視線を芽衣さんに合わせて言った。
芽衣さんは私のその目を見ると、苦笑いをしながら肩を竦めた。
「簡単に辞められないことくらい知っているくせに、チャレンジャーね。ミクったら…」
「…はい。辞める時は、私という人間の最後ですからね…」
ふぅ…と小さく溜息を吐くと、芽衣さんは私の背中を擦ってくれた。
「芽衣さん…」
「なに?」
「私、やっぱり彼女と…リンと、今更仲直りなんて出来るような気がしませんわ…だって、彼女は私を許すはずないんですもの。きっと今も私のことを恨んでいるに違いないわ。だって…私…っ」
あの時の鈴華の顔を思い出しただけで、涙が出てきそうになる。
さっきの言葉、前言撤回。私はレンのこと以外に、鈴華のことも頭から離れない。
きっと好きなんだ、私は…二人とも…
嗚呼、レン…
早く私を、迎えに来て……—————
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‡あとがき
久しぶりの更新ですね〜^^
微エロとは書きましたが、あんまりそうでもなかったですね;
まあそこまで過激なものは描けないですし、これが限界ですね><
それでは!