二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: —雨夢楼— ≪ボカロ曲小説≫参照200突破感謝! ( No.23 )
- 日時: 2012/01/13 22:29
- 名前: 夏茱萸 ◆2uA.rd.h2M (ID: lkF9UhzL)
第六帳〜少女は不安を胸に隠し生き続く〜
*美香side
今日は江戸の栄え街へ用事があった。
特別大切な用事というわけでもなかったが、芽衣さんに折角もらった休みなのだから無駄に過ごしたくはない。
この機会に着物を新調してみようと考えたのだ。
有意義に過ごせるし、新たな衣装も手に入る。何より着物選びというのはとても楽しい。一石二鳥どころか三鳥だ。
「それでは、行って参ります」
「気を付けてね。一人で行くの?」
「…いえ、友人と街の通りで待ち合わせておりますので」
「そう、じゃあ大丈夫そうね。いってらっしゃい」
ニッコリと微笑みながら手を振って送り出す芽衣さんに同じように手を振り返し、私は空気の悪いこの花街を出て行った。
「ん〜っ!やっぱり街はいいわ!空気が新鮮で、活気もあって…懐かしい」
周りを見渡すと夕暮れ時だというのに市場が賑わっている。
この騒がしさすらも私には愛しく思えた。
昔まだ幼かった頃、鈴華と一緒にこの街で悪戯をしたっけ…今となっては思い出話になっちゃった。
でも私はまだ、鈴華との日々を思い出にしたくはなかった。
いつかまた、二人で一緒にいられる日が来ることを願って…
そこまで考えてふと思い出す。そういえば待ち合わせをしていたんだっけ。
急ぎ足で大通りを抜け、目的の人を探す。
遠くの方へ金色の髪の青年が見え、急いでその人物のもとへ駆け寄ろうとした。
…だが私はふとそこで足を止める。
「…鈴華ッ…?」
近くで彼を見つめていたのは昔の幼馴染、そしてライバル店一番の花魁である、金髪の女性だった。
今日はいつも上げている髪の毛を簡単に二つに結ってあるからか、いつもより幼く見えた。
…どうして彼女が、彼を…レンを見つめているのだろう。
レンは見つめる鈴華に気付いた様子はないが、二人並んでいると気付くことがあった。
鈴華とレンはとても、いや、異常に似ている。
これほど似ている他人というのは珍しいものがある。未だにその場から動けないのは、そのせいでもあるのだろうか。
暫く経つと鈴華はその場を去って行った。
気のせいだろうか、彼女の顔はとても苦しそうに見えた。
「——ミク!そこにいたんだね、声をかけてくれればよかったのに」
「あ、レン…ごめんなさい。少し考え事してて…」
「考え事?何か悩み事なの?」
「ううん、何でもないわ。心配しないで」
心配そうな目をするレンの手を取り微笑むと、私は目的の呉服屋へと歩き出した。
「欲しいのがあってよかったね」
「えぇ、付き合っていただいて本当にありがとう。とても楽しかったわ!」
「また店へ行かせてもらうね」
「嬉しい、ありがとう」
帰り、レンが夜遅いからということでお店の前まで送ってくれた。
お礼を言って店へ入ろうとする私の腕をレンは優しく掴む。
「絶対に…迎えに来るから…待っていて、ミク…」
そう言ってそっと抱きしめる。
その腕が震えているのに気付いたが、その理由には触れてはいけないような気がして黙っていた。
けれどレンは思い出したように私の肩を掴み引き離すと、焦ったように聞いてきた。
「鏡野鈴華という女の子を、知らないッ?」
突然降ってきた雨も構わず
暫く動けずにいた私。
固まった私を見てレンは
「また、話を聞きに来るから…」
そういって私をお店に押し込むと
そのまま何処かへ行ってしまった…———