二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 2章 遭遇 ( No.4 )
- 日時: 2020/06/23 15:17
- 名前: 霧火 (ID: HEG2uMET)
リオとアキラは【タワーオブヘブン】の入り口近くで座っていた。
ヒトモシは未だに目を覚まさず、リオに抱かれている。
「どうして空から落ちて来たのかしら?」
「塔の最上階から落ちたんじゃね?ヒトモシはこの塔に棲んでるんだろ?」
「うん。何故かヒトモシってここにしか居ないのよね」
アキラの問いに答えながら、リオはヒトモシの体に薬を塗っていく。
ヒトモシの為を思うなら近くのポケモンセンターに連れて行くのが1番良いのだが、もし道中で
症状が悪化してしまっては大変だと判断し、簡単な治療だけしてからポケモンセンターに
連れて行く事になった。
「……」
手当てをしながらリオはちょっとした違和感を感じていた。
(何でこんな傷が……?)
違和感の原因はヒトモシの体に出来た傷にあった。
幸い傷薬で治せる程度の怪我だが、傷の殆どが強い電撃を浴びて出来たような物ばかりなのだ。
(【タワーオブヘブン】に電気タイプのポケモンは居ないはず。塔の中にトレーナーが居て、
そのトレーナーがポケモンに電気技を指示してヒトモシをゲットしようとした……とかなら
説明はつく。でもこの傷痕は出来て何日か経過しているからその線は薄い。仲間割れも
多分無いわね。ヒトモシは皆仲良しで喧嘩は殆どしないってお爺ちゃんが言ってたし)
「でもそうなると、この傷はどこで……」
「おいリオ!気がついたみたいだぞっ」
アキラの言葉に考えを中断し、抱いているヒトモシを見下ろす。
ヒトモシは、口をもごもごさせながら目を擦っていた。
傷薬をポケットに入れたのと同時にヒトモシの目がリオとアキラを映した。
「とりあえずこれで一安心だな」
「良かった……」
『?』
不思議そうに2人を見上げるヒトモシを、リオは恐がらせないように優しく撫でる。
ヒトモシは一瞬大きく目を見開いたが、すぐに嬉しそうに手に擦り寄った。
「で、このチビ助どうするんだ?」
「この子はまだ小さいから心配だけど、全回復したら仲間の所に帰さないと」
『!』
リオはポケモンセンター方面に体を向けると、1歩前に踏み出す──事は出来なかった。
「きゃっ!?」
リオは足を動かした瞬間に何もない所でコケた。しかも前に、盛大に、顔面から。
まるでメタモンを踏んだかのような見事な滑りっぷりにアキラは狼狽えるが、すぐに我に返り
倒れてるリオに手を貸す。
「言うのは2回目だが……大丈夫か?」
「もう!何で今日に限ってこんなに転ばなきゃいけないの!」
鼻を強く打ったのか、リオは鼻を抑えながら立ち上がる。
幸い血は出なかったが顔は全体的に赤くなってしまったし、痛いものは痛い。
「まぁ犯人はこいつみたいだけどな」
若干涙目のリオに苦笑しながら、アキラはリオの後ろを指差す。
涙を拭いて(鼻は抑えたまま)後ろを振り返ると、ヒトモシがリオの影を踏むようにして立っていた。
何時腕の中から脱出して後ろに移動したのかと驚いたが、それよりもリオは自分の影が紫色に
染まっている事の方が気になった。
「何で影が紫色に……?アキラの影は普通なのに」
「コレは、多分〈影踏み〉だな」
顎に手を当ててアキラが呟く。
〈影踏み〉についてはリオも知っていた。確か相手の影を踏んで逃げられなくするという、
ポケモンの特性の1つだったはずだ。
「でも、何で私に?」
ヒトモシを抱き上げて同じ目線になる。
いつの間にか、影は元通りになっていた。
「もしかして、リオと別れたくないんじゃないか?」
「そうなの?」
問い掛けるとヒトモシの顔は明るくなり、嬉しそうに何度も頷く。
「ここまで懐かれちゃ、アレだよなぁ〜?」
ニヤニヤしながら肩を小突くアキラを無視して、リオはヒトモシの手をそっと握る。
こんな確認は後でも出来るし、回復を優先しなければならないのも分かっている。
でも、ドキドキと高鳴る心臓を落ち着かせたくて……今、これだけはヒトモシに確認したかった。
「ヒトモシ。あなたさえよければ、私と──」
「避けろ!!」
リオの言葉は突然片腕を引っ張って抱き寄せて来たアキラと、直後に飛んで来た電撃によって
最後まで続かなかった。
「大丈夫か!」
「う、うん。アキラのお蔭でヒトモシは無事よ……ありがとう」
「くそっ!誰だよ、感動の場面を邪魔する奴は!?」
アキラが半ギレしながら叫ぶ。
その疑問に答えるように茂みから現れたのは…
「ミルホッグ……!」
尻尾を立てて警戒態勢に入った、数十匹ものミルホッグ達だった。
今回ヒトモシの目が覚めて、リオとヒトモシが良い雰囲気になりかけましたが
最後の最後で邪魔が入りました。何故ミルホッグなのかは1番あの付近で強そうだったから、
……というのもありますが、他にもっとちゃんとした理由があります。
それは後々明らかにしていきたいと思いますので、気長にお待ちください。
では、次回もお楽しみに。