二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【短編・シリーズ物など】刹那的蜃気楼【取り扱い】 ( No.2 )
日時: 2012/05/27 22:15
名前: 帆波 ◆23XCuGUg0M (ID: cA.2PgLu)

02. 見上げて笑えば、彼も笑ってくれて

次の日、登校したはいいが、今朝から何故か気分が悪かった。昨日の麻婆豆腐が悪かったのだろうか。…依真ちゃん、大丈夫かなあ。
何とか2時限目まで授業は出たけど、もう限界。吐きそうとかじゃなくて、何だろう、言葉に出来ない。だけど、とにかく気分が悪い。
その旨を友達に伝えて、すみやかに私は保健室に向かう。
保健室には、先生は出張で不在なので代わりに、と保険委員長の赤青黄さんがいて。

「あら、どうしたの?怪我でもしたのかしら」
「あ、いえ。気分が悪くて…、ベッドで休ませてもらってもいいですか?」

同じ2年生でも何故か緊張する。まあ人見知りだから、ともいう。
赤さんは顔色が悪いのを見て、仮病じゃない事を判断したのか、どうぞ、と優しい声色と表情で言ってくれた。ベッドに横になろうと座りこんだ時、赤さんが体温計を持ってきた。
計ってみると、38.6度。立派な熱だった。が、そう言うのも何だかぼーっとしてきて面倒くさくなってきた。
それになんだか、眠い、し……。

ふと、目が覚めた。起き上がって時計を見ると、もう4時限目が終わる頃だった。

「目が覚めた?貴女、熱があるのに私に言わないで寝てしまったでしょう?」
「す、すみません…」
「まあ、謝らなくてもいいのに。…取り敢えず、たまご粥を作ったから、食べて頂戴」

言われて赤さんの手に、たまご粥の入った器が乗せられたお盆がある事に気付く。
赤さんは拒否権などない、というふうに、ベッド脇の机にお盆を置き、スプーンで粥を掬って私の方に……って、あれ。

「あの、赤さん…?」
「黙って食べて。特別に私が食べさせてあげるんだから。大丈夫よ、味は保証する」

いえ、味の心配は……、と言おうと思ったけど赤さんがスプーンをずいっと口の方にもってくるものだから、私は口を開けるしかなかった。
最初は恥ずかしかったけど、たまご粥がとても美味しくてあっという間に平らげた。それだけ食べられれば大丈夫よ、もう少し寝ていれば良くなるわ。と赤さんに言われた。
言葉通り、また寝ようとするとがらがら、とスライド式の保健室のドアが開けられる音がする。ドアの方を向くと、そこには

「球磨川先輩っ、何で、此処に?」
「『そりゃあ勿論、渚ちゃんが熱だって聞いたから』『飛んできたってわけさ!』」
「それはどうも、…あれ。球磨川先輩が持ってるのって、私のお弁当?」

球磨川先輩が手に持っていたのは、一目で私のものだと分かる、まあ特徴的な模様のお弁当袋だった。

「『そうだよ?』『でも渚ちゃんはもう食べちゃったみたいだし、このまま捨てるのは勿体無いだろ?』『だから、僕が食べてあげるよ!』」
「…はあ、まあお好きにどうぞ」

許可すると、球磨川先輩は顔を輝かせてベッドの横の椅子に座ると、早速食べ始める。そんなに誇れるほどの味ではないんだけどn「『渚ちゃん!この卵焼きとっても美味しいよ!』」

「そう、ですか。それは良かったです。…けど、卵焼きなんて砂糖かダシか違うだけで基本誰が作っても同じですよ?」
「『ううん!違うよ、違うんだ!』『他の卵焼きとは何かが違う。それに、他のより断然美味しいんだって!』『何ていうか、…愛情?』」

愛情、なんてもの込めてもいないし、第一球磨川先輩に作ったものではない。
なのに愛情だなんて、私は思わずくすり、と笑う。
笑いながら、私より幾分か高い球磨川先輩を見上げると、先輩も笑っていた。
この穏やかな時間が、私は好きだ。球磨川先輩は過負荷、だけど、
本当はとても、優しかったりするんだ。




ぱくっ「本当ね、この卵焼き美味しいわ」
「赤さんまで、…つまみ食いは駄目です、と言いたい所ですけど、たまご粥の借りがありますからねぇ」
「『ちょっとちょっと』『赤さん、勝手に僕の弁当を__』」
「「貴方のじゃないでしょう/球磨川先輩のじゃないでしょう」」
「『……』『酷いなあ、二人とも』」
「ふんっ、貴方のした事。忘れたわけじゃありませんから。…私達の安心院さんに……」
「…(安心院さん……?)、球磨川先輩、まさか、」
「『おいおい』『僕をそんな変態を見るような目で見ないでくれよ、渚ちゃん』」
「「え、変態じゃないんですか?」」
「『…二人、息ぴったりだなあ』」