二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 短編集-花闇-【雑食/APH普短編うp】 ( No.29 )
- 日時: 2014/05/26 20:09
- 名前: 帆波 (ID: vsc5MjXu)
露夢【 ひまわりの花が笑った 】
・タタール支配時期のろっさまと人間のヒロイン
※地味にヒロインが死ネタの餌食
※時代背景とか思いっきり雰囲気で書いてる
※ヒロインの名前をにょたりあのロシア娘さんからお借りしています。ですがあくまでロシア娘≠ヒロインなのでくれぐれもご注意
※ちょい短め
「…ねえ。寒いよ、アーニャ」
「そうですね、こんな広くて雪ばかりの土地に一人なんて、寂しいですよね」
「…僕は寒いって言ったんだけど」
「貴方の言う寒いと寂しいは同期しているじゃありませんか」
「知ったような口聞かないでくれる?僕はべつにそういう意味で言ったんじゃない」
「…素直じゃありませんねぇ」
「……」
「ふふ。寂しがりのイヴァンくんのために、特別にわたしが一緒に居てあげてもいいですよ」
「…別にいい」
「そう言わないでくださいよ、どうせ人間の寿命なんて貴方達に比べたら星の瞬きに等しいんですから。ね?」
「君がしたいんならべつに…いいけどさ」
じゃあ一緒に居ることにしますね。にこにこと、とてもじゃないが信用できそうにない笑顔と共にそんな言葉が僕に向けられた。
この人はいつだってそうだった。僕が僕として存在する時から、何故か僕にちょっかいをかけてくる。人間なのに、まだ国ですらない僕を怖がらない。それどころか僕が拒絶しても増々引っ付いてきて、最近ではもう引き剥がす事に関しては流石の僕も諦めモード。
友達というには少し一方的な気がする僕らの関係。ぽかぽか暖かいわけじゃないのに、どこか安心できる距離でお互い凭れてる関係に人工的な温もりを感じて、でもだからといって僕は本当の温もりを知らないから、今だけはこの生温さに身を委ねている。
…まあ少なくとも、寂しくはないかな。ほんのちょっとだけ、それも心の中だけでそっと呟いて口には出さず、代わりに隣に座る彼女に小さな体を預けた。
なんですかイヴァンくん、デレ期ですか?……違うよ。じゃあなんですか。……ちょっとだけ人肌が恋しくなっただけ。あはは、普段のイヴァンくんからしたら十分なデレじゃないですか。うるさいよ。はーい。
支配は知っていても争いを知らなかったこの頃が、今思えば一番幸せだったかもしれない。この後嫌でも巻き込まれることになる争いのことなんて知りもせず、ただあんな風に軽口が叩けていた時代。
——今となってはもう、遠い遠い昔の話だけどね。
「ねえアーニャ。今年も向日葵が咲いたんだよ。本当はあったかい所で向日葵に囲まれながら君と話したかったんだけど…、やっぱり此処から君を連れ出すのは気がひけてさ。アーニャ覚えてる?ここはね、僕らが初めて会った所なんだよ。街も家も何にもないところだけど、冬は景色が綺麗でね、夏はこうやって向日葵が沢山咲くんだ。…素敵でしょ?」
アーニャもそう思うよね。べつに同意を求めて言ったわけではない。当然、返ってくる声も僕だけに向けられる笑顔もここには存在しないから。——君が死んだのはいつだっけ。それはもう随分と昔の事だってことくらいしか覚えてないや。でもね、君と過ごした時の事は一つひとつ、鮮明に覚えてるんだ。不思議だよね、僕、君のことそんなに好きじゃなかったはずなんだけど。
沢山の向日葵に囲まれた墓石に座り込んで一人話す僕は、端から見れば過去に囚われた可哀想な奴なんだろう。けどいいんだ。僕が君のことを忘れちゃったら、他に一体誰が君を覚えてるの?誰にも覚えていてもらえないなんてそれこそ可哀想だから、僕は毎年こうやってここに来てあげるんだ。あの時、君が僕の傍に居てくれたみたいに。
だから貸しはもう無しだよ?……そう呟くと、今まで無風だった向日葵畑に一陣の風が吹いて、向日葵達を揺らした。各々が触れ合った音がまるで僕に囁いた声みたいに聞こえて、僕は思わず笑みを零して。
——今年もまた、ひまわりの花が笑った。
「後書き」
根緒様から頂いたお題消化パート2です!
今までなんとかヒロインの名前をぼかしつつやってきましたが、ついに耐えられなくなったのでロシア娘ちゃんのお名前をお借りしました。アーニャちゃん可愛いよアーニャちゃん(notヒロイン)。ロシア娘のアーニャちゃんは可愛いけど、このヒロインは愉快犯系敬語キャラです。かわいげの欠片もないね!
お題がほのぼのとした感じだったので、ほんわか甘書こうと思いました。でも例の如く挫折しました…。最初はろっさまと家庭的なヒロインとがほのぼのするお話だったんだよ嘘じゃないよ?
でもわたしにしては纏まった内容だった、かな?