二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 短編集-花闇- ( No.39 )
- 日時: 2014/07/24 19:06
- 名前: 帆波 (ID: 3rAN7p/m)
南伊夢【 ラヴソングは夕暮れに 】/根緒様リクエスト
「 くっそ、また失敗したじゃねーかこんちくしょーめが…… 」
時は既にお昼を過ぎていて、そろそろシエスタも終わるであろう時間。今日はなんだか寝付けなくて、家にやる事もなく街に出てきてベッラをナンパしてみたはいいが、何分成功率が低くて段々と気持ちもささくれだってきてしまう。フェリシアーノは良くて、俺は駄目なのかよ……。こうも振られ続けると当たり散らす気も失せてしまい、足取りは重くなる。どこに行くわけでもないが、自然と足はスペイン広場へと向いていた。広場は沢山の地元民や観光客賑わっていて、普段は心地いい賑やかさが今日だけは自分への当てつけに聞こえてしまう。
……そういえばこの前此処でジェラート食べたら怒られたぞこのやろー。ったく俺んちなんだから別にいいだろ。ぶすっとむくれてしまっては元々愛想のない顔から更に愛想がなくなってしまうのに、それに気付かずロヴィーノは広場の階段の隅に腰掛けた。不機嫌そうな顔でこの時間帯に一人、……どう見ても負け組確定だよなぁ。はぁぁあ、と陽気なラティラーノに似合わないため息を吐けば、それがきっかけとなり色々な心の声が口から漏れだしてきた。
「 そもそも俺のナンパが成功しないのも全部あの馬鹿弟のせいだぞ……、アイツが俺んちを間抜け面でほっつき歩いてるから可愛い女の子が心配して逆ナンとかして……ちぎー! アイツの顔想像するだけで腹立ってきた……。明日は暇だしちょっかいでもだしにいってやるか。後ついでにマッチョじゃがいもにも……へへっ、積年の恨みだ覚悟しとけよ……! 」
かの皮肉屋紳士もドン引きの悪い顔を浮かべながら広場の端、ぶつぶつと呪文を唱えるように呟く姿は周りの人間の目にどう映っていたかというと、地元民は「 ロマーノさん…… 」と哀れみの視線を送り、何も知らない観光客は「 大丈夫かよ…… 」と少し頭のねじが家出した奴のように彼を見ていた。…くそう、視線が痛いぞ。「残念なイケメンってああいうのなんだねー」…おい、どこの誰だか知らないが子供のしつけくらいしっかりしろよ!
「 どいつもこいつも俺をこけにしやがって……、家までマーマイト送りつけるぞこのやろー……! ハッ、精々のたうち回りやがれ! 」
「 お兄さん口悪いのねー、そんなんじゃ女の子の一人もひっかけられないって! 」
「 っるせぇ! 俺だって好きで言ってるんじゃ…な…… 」
「 ……あ、じゃあ私の家にもマーマイト送りつけられちゃう? あーら怖い怖い! 」
「 ……い、いつから聞いてたんだよちくしょぉおおおおおおお!!! 」
ただの独り言、のつもりだった。だがいつの間にやら見慣れない女が自分の隣に座って、楽しそうにこっちを見ている。きっと俺の間抜け面を見て笑ってやがるんだ、くそっ。……だが、違和感を抱かせることなく入り込んでくるこの感じ……、さてはプロか! 「 なんのプロやねんっ 」、……アントーニョのツッコミが聞こえた気がした。
「 そもそも俺のナンパがどうちゃらこうちゃら〜らへんからね! お兄さんそんなに女受け悪いの? 顔はいいのにねえ。寧ろ私的にはドストライクってかーんじ! どうどう? 今からお姉さんと遊ばない? 」
「 最初から聞いてたのかよっ…………って、え? 」
「 ううん? 聞こえなかった? いやね、お姉さんも暇だからさ、暇なもん同士今からちょっとお茶でもって。 」
……これは、ひょっとして。
「 それとも私じゃご不満? 」
「 とっ、とんでもないです、お願いします……このやろー…… 」
「 あっはは、顔がトマトだよお兄さん! ぷくく、もう本当最高ねぇ!! 」
すっかりのぼせあがった俺の背中をばしばしと痛いくらいに叩いていても、真昼の太陽のように明るく笑うその女を怒る気にはなれなかった。拝啓アントーニョ、フェリシアーノ。俺もやっと逆ナンってやつを体験できそうです。
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