二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

  days . ( No.9 )
日時: 2011/12/09 17:45
名前: ゆう ◆Oq2hcdcEh6 (ID: n9Gv7s5I)



「——あ、みちゃん、?」
「————」
「……ね、え、亜美ちゃん、」
「————!? ————! ————!!!」


 私の声が、聞こえなくなった。

 原因は不明、監督すら首を傾げる程だった。皆の声がザザ、ザザザ、とノイズに邪魔されて聞こえなくなった。そして私の声も出なくなった。周りの騒音は聞こえるのに、皆の声が、私の声が、聞こえないらしい。喋っているつもりでも、声は出ていないのだという。
 目の前が、真っ暗になった。

「……亜美ちゃん、」

 暫く私は入院することになった。鼓膜に異常はないらしい。其れでも、毎日毎日耐え難い頭痛が私を襲ってくる。安全の為に、入院することになった。私はずっと天井を見つめる日々が続いた。喋る気力にもならない。どうせ聞こえていないのだから。
 彩音ちゃんは不安げに私を見てくる。其れでもぼんやりと天井を見つめたままの私。彩音ちゃんは寂しそうな顔をして、動かない人形になってしまった私の頭を撫でた。頭痛が、耳鳴りがする。そのまま私の意識は消えた。頭、いたい。


+ 1days


( バダップ視点 )

 ぼんやりとした明かりが、室内を照らしている。
 薄明りの中、より青白い肌を持つ女が目の前で唸っている。悪夢を見ているのか、何か痛みがあるのか。名も知らぬ女は、浅い呼吸と低く唸る行為を繰り返していた。何に苦しんでいるのか、見当もつかない。

「——う、……う゛、」

 女は拳をぎゅうっと握りしめた。ぎり、と小さく音がたつ。大方爪が食い込んでも居るのだろうと予想した。まだまだ唸る女に、目を細めて頬を撫でた。何か痛みがあるのだろうか、それとも悪夢を見ているのだろうか。——最も俺には関係の無いことなのだが。
 不意に後ろでドアが開き、高い声がする。振り返ると少女に見紛いそうな容姿を持った男こと、ミストレーネ・カルスが居た。薄く笑みを浮かべている。

「そろそろ交代だよ、バダップ」
「……そうか」

 ミストレーネが小さく呟く。「寝てないんでしょ」、と。俺を心配する言葉なのだろうが、俺は寝なくても平気だ。言葉にせず、短く言葉を返した。

「構わない」

 少しだけ、この女が気になった。
 まだ見ているのかい、と言うミストレーネに軽く頷いてから俺は女の横たわるベッドの傍らにもう一度腰を下ろした。握り締められた拳を解いているうちに女は幾分か安らいだ表情になっていた。そして薄く目を開ける。後ろで俺達を見ていたミストレーネが報告してくると慌ただしく部屋を出ていく音が聞こえた。

「———————、」

 女の口が動くのに、言葉は聞こえなかった。







声を失くした亜美と王牙のお話.