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二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 王子はただいま出稼ぎ中*隣国の王女*【原作沿い】 ( No.1 )
- 日時: 2011/12/19 20:56
- 名前: 勾菜 (ID: BeoFjUrF)
序章 〜レイア・グラシエ〜
木の影が馬上の人物に落ちる。
「久しぶりのフォーレだわ。ユートは元気かしら」
深くマントのフードをかぶっていて、その表情は判らないが、声でその主が少女だと言うことがわかる。
馬にゆすられながら、少女はフードをとる。
穏やかな日にきらめくのは月光を思わせる白金の髪。
まぶしそうに細める瞳は深海を思わせる深い蒼。
少女は大きく息を吸い込む。
森の香りだ。
初春とはいえ、まだ寒さは残る。
そんな少女の耳に、彼女を咎める低い声音が届く。
「…レイア様。フードをとられるのは…」
少女が振り返ると、先程の自分のようにフードをかぶった青年と目があった。
「もう…いいじゃないのよ、グラシエ」
そういいながら、グラシエ、と呼ばれた青年のフードをとる。
「…レイア様」
その声音に非難の色が混ざっているのに気がつき、レイアは肩をすくめた。
短い藍色の髪が風に吹かれてさらりとなびく。
表情よりも雄弁な瞳の色は深緑。
「ほら、見えてきた」
レイアの嬉しそうな声音にグラシエの瞳に優しい色が宿る。
自分はこうやってレイアの喜ぶ姿を見るのが、一番嬉しいのだ。
先程よりずいぶん近づいてきた、石造りの城。その周りには畑や民家が立ち並んでいる。
この国の人たちは誰に対しても優しい。
自分たちが訪れても明るい笑顔を見せてくれる。
そういえば、とレイアは考える。
自分は、グラシエと共に何度この国を訪れたのだろうか。
来た数すら覚えていない。
ただ、その城にすむ人たちも同じぐらいに優しい。
とくに彼女の目的である人物はとくに。
それを考えると自然と笑みがこぼれる。
ああ、早く会いたい。
はやる気持ちを抑えながら、レイアはグラシエを従えて城門をくぐった。
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