二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: BRAVE10*時守りの忍【原作沿い】 ( No.12 )
- 日時: 2012/01/24 22:29
- 名前: 勾菜 (ID: UEYZEDd2)
信州 国境付近——
「いっただきまーす!」
元気のいい声が響き渡る。
(1、2、3、4、5、6……7!?)
少女の食べた空の器は6。そして、今食べているのは7杯目。
よく食べるなぁ…そう思いながら自分もずずっとそばをすする。
ちなみに、彼女と才蔵はともに1杯目だ。
「んんっ、んっまーいっ」
少女はじーんとした様子で食べている。
そんな少女を才蔵は注意深く観察する。
(ここまで食うゆとりもなかったか。
手も足も傷だらけで呼吸も速い。
かなり気を張っているんだろう……それを表に出さないのは
結構な精神力の持ち主か…あるいは…)
そうせざるを得ないなにかがあったのか、だ。
「ごちそうさま!」
つゆまできれいに飲みほしてあり、少女の器は空だった。
「「早っ!!」」
「!あら小食ね」
少女は心底驚いたらしい。
「テメェが大食いなだけだ!」
(まあたしかに…)
普通の人は1杯食べれば十分だ。
「そのテメエっていうのやめてくれる!?
アタシは伊佐那海っていうの!
アンタ達の名前は?何してる人?」
「才蔵——侍だ」
…嘘だ。そう思った。
あれだけの身のこなしができる人間が、ただの侍のわけがない。
この才蔵という男は忍、そう断言できる。
「才蔵!?じゃあ略して才ちゃんね!」
「殺すぞこのアマ!」
「怖っ」
こほんとワザとらしく咳をし、二人の意識をこちらに向けさせる。
「私も名乗っていいかな?」
「う、うん!」
慌てて頷く伊佐那海に笑い返し、自分の名を名乗る。
「私は千。一応城勤めをしているの」
そう名乗れば、隣に座る才蔵が驚きの声をあげる。
「せん…千って、時宮千か!?」
「やっぱり才蔵!?」
思わぬ再会があったものだ。
「え、千ちゃんと才蔵って知り合い?」
「あ?ああ、まあな」
そう聞くと伊佐那海は目を輝かせる。
「どんな関係!?」
「うーん…昔馴染みってやつかな。
まあ、兄妹のように育てられたけど」
ねえ?と才蔵に同意を求めればああ、と同意をしてくる。
千たちがそう答えれば、へーっと感心したような反応を伊佐那海はする。
「そうだ、侍ってことはさ誰かに仕えてんの?出身はどこ?」
「う…うるせえな、関係ねえだろ!」
(まあ、仕えてたら貧乏じゃないわね…)
少なくともご飯が食べられなくなるほど。
「食ったらとっとと行くぞ!」
「まあ言いたくないんなら いいんだけどさ」
千が立ち上がると、伊佐那海の髪飾りが落ちかけていることに気づく。
「伊佐那海、それ落ちそうよ?」
「やだ!落としたら大変!」
伊佐那海はにこりとしながら髪飾りをさしなおす。
そのとき、それが不思議な光を放った。
「「——!?」」
才蔵と千。二人とも目を瞠る。
(なんだろう…イヤな予感がする…)
そんな気持ちを抱きながら、3人は上田へと足を進めた。