二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: BRAVE10*時守りの忍【原作沿い】 ( No.14 )
日時: 2012/01/28 22:42
名前: 勾菜 (ID: GlcCI1C/)

(これが難攻不落の上田城ね。
つーか「広いねーとか」「すごーい」とか騒ぐかと思ったら、ずっと押し黙ったまんまか)
そう思いながら、才蔵はすっと伊佐那海の背へと視線を向ける。
——なに背負ってきたんだか
(ま。ついでだからあのサルの飼い主でも見て帰ろう。
 あれほどの使い手の主人とは…)
そのとき、ドカッドカッと廊下から足音と話し声がした。
「オイオイ…厄介事じゃねえだろうな。なんで俺名指し!?」
「——若!!」
(…幸村様っ!)
千が思わず脱力するのと同時にスパァンと襖が開かれる。
「まあいいや。面をあげよ!
 ——って平伏してねえじゃねえか!
 ま、べつにいいけど」
そう言いながらどかっと座る男の名を真田幸村という。
(これが…真田幸村…!?柄悪ィ)
「ん?おお!千、戻ったのか!」
「…ただいま戻りました」
スッと床に手をつき、頭を下げる。
「うむ・・・で、お前が出雲の巫女か。ではあっちが…」
ちらっと才蔵のほうへと視線を向ける。
「!?」
(佐助が報告したのかな?)

「…あ……ああ……」
伊佐那海は体を前へ乗り出し、幸村に対して言葉を発する。
「ようやく会えました!どうか助けてください…お願いします!」
「うむ、まずはなにがあったか話してみよ」

伊佐那海の話す内容はとても凄惨なことだった。

社は火と血の海でどこもかしこも朱。
境内にはたくさんの人の骸。
社に攻め入ってきた者たちは無差別に殺戮を繰り返したそうだ。

千の見た夢とそれの内容は一致していた。
でも…戦を知らない女にはキツイ内容だと思う。
「私は…私はもう、ひとりになってしまって…どうしたらいいか…」
千の脳裏には出雲とは違う場所が火の海になる光景を映し出していた。
「……」
そっと肩に手をおかれる感覚でハッと我にかえる。
手の主は隣に座った幸村の小姓——海野六郎だった。
その眼を見れば大丈夫か、と瞳が聞いてきている。
それに小さく頷き返す。

「——で!?俺に何をしろと?」
非常なまでの幸村の反応に才蔵は顔をしかめる。
「な…何をって…神主様はあなたを頼れと…!!」
がばりと顔をあげ、伊佐那海は必死に幸村の力を乞おうとする。

「んなこと言ったって仇討の片棒は担ぎたくねえし。
 追手がかかってるんだろう?こっちまでとばっちり食いそうだ」
そう言って幸村は立ち上がる。
「俺は危ういことには首をつっこまない性質タチでな。悪いがしてやれることはないわい」
「そ…そんなっ…」
声をあげる伊佐那海の顔は涙でぬれていた。
「ま、今夜ぐらいは泊めてやる。六郎!部屋の支度をさせよ!」
「御意」
そのまま退出する幸村に従い、六郎に続いて千も部屋を出ようとする。
その背を才蔵が呼びとめる。
「千…お前…」
「才蔵、あとは頼んだよ?」
言外に伊佐那海のことを言えば、無言でうなずいた。

それを確認してから、幸村をおい、千は部屋を出たのだった。