二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: BRAVE10*時守りの忍【原作沿い】 ( No.27 )
- 日時: 2012/02/08 21:47
- 名前: 勾菜 (ID: J0PYpSvm)
「——あの狸め」
煙管と茶の匂いのする部屋。
そこでは、部屋の主が文の差出人へ悪態をついていた。
傍に控えている小姓がコポポポポと茶を淹れながら主に問い掛ける。
「なんと?」
「上田城を明け渡せだとよ」
くあっとあくびをし、部屋の主——真田幸村はトントンと煙管をたたきながら、文の内容を六郎に話す。
「この間は追い払ったから今度は文をよこしやがった。
体よくいろいろと理由をつけておるぞ」
「前回負けたのが答えておるのでしょう。若はご容赦ありませんから」
「人ん家に土足で入ってくるのがいけねーんだよ」
そう言うと幸村は体を起こす。
「あんの思い上がりのクソ狸め 迷惑にも程があらあ。
信玄公亡きあとこの信州を自分のものと思いやがって…
おとなしく自分の国だけで満足してりゃあいいものを 器以上のものを欲しがりやがる」
そう言う幸村の瞳には言い知れない感情が宿っていた。
一五九九年現在——
徳川家康は日本中の大名を懐柔し
傘下に収めようとしていた——
しかし信州真田家だけは家康に従わない——
家康は真田の気骨と軍略を恐れ
これを排除しようとしていた
タァンッと幸村が煙管を文の上へと叩きつける。
「そろそろ 灸をすえてやるころかのう」
メラメラと文が燃えていく様を見ながら幸村はそうぼやく。
「——では」
「まあ待て。 そう急ぐな、六郎」
「まだ——
この両手には足りぬ——」
そう言いながら、幸村は己の両手を見つめた。
「………」
「それより今はあの出雲の…!」
ハッとしたように幸村が天井を見る。
ざっと六郎が幸村を庇うように立ち、変わった形をした二振りの得物を取り出し、自身の口元にかまえる。
そして、天上へと向かいキィィィィィィンッと目に見えない攻撃を放った。
その攻撃を天井裏にいた才蔵はもろにくらう。
「———っっ!!?」
「チッ」と舌打ちをしながら才蔵はその場を飛び出し、森の方角に消えた。
「あやつ…!」
才蔵の去った方を見て六郎は唸る。
「まあ、そう怒るな」
幸村が言いながら縁側へと出て、外を見る。
「あれもまた
必要になる男よ」
その言葉を聞いた六郎は軽く眉をひそめる。
「あら、六郎。なんて顔してるのよ」
その声が聞こえたのはまさにその時だった。