二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナクロ〜なくしたくない物〜更新再開の大号令〜 ( No.349 )
日時: 2015/03/28 15:17
名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: x/gr.YmB)

☆番外編☆第三十三話   「作文」



「んぅ……?」

寒さに身を震わせながら、風花は目を覚ました。左肩に感じる重みは、おそらく友撫だろう。膝にかかっている毛布はいつの間にかずれている。
どうやら、うつらうつらしていたら眠ってしまっていたようだ。
腕時計をちらりと見ると、既に三十分ほど経っている。
…………手続き、手間取ってるのかな。
こっくりと首をかしげ、風花は毛布をなおす。
目の前を歩くひとの数は減り、それなりの時間になってきていることを告げていた。

(ふたりとも、遅いな……。)

でも、約束してくれた。指切り、してくれたから。
きっと、帰ってきてくれるはずだ。
毛布をいじりながら、風花はふたりが来てくれるのを待つ。
駅前のテレビがなにか言っている。どうやらニュースらしい。なんとか魔事件がなんとかって……。
なんだろう? なに魔事件? 悪魔じゃないだろうし……。
そんなことより、父と母の帰りが待ち遠しい。
どんより重たい雲が空をおおっている。いまも十分寒いのに、雪でも、降り出すのだろうか。

     ☆

  いつもおもしろくて、なんでも教えてくれるお兄ちゃんがいました。そのお兄ちゃんはほんとうにへんてこで、ばかみたいなことでよろこぶ、とってもいいお兄ちゃんでした。
  お兄ちゃんは、むかしからお兄ちゃんだったわけではありません。ちょっとまえに、なんだか分からないけどお兄ちゃんになりました。
  お兄ちゃんになってからのお兄ちゃんは、お兄ちゃんになる前とくらべると、へんてこさがましていました。いつもなにかかんがえていたり、つめをかんでいたり、いつもまわりをちらちらしていました。お兄ちゃんはいつも、
 「ゆうなはいい子だね。」
  と言って、わたしの頭をなでてくれます。へんてこなお兄ちゃんでも分かるほど、わたしはいい子なのです。
  このあいだ、お兄ちゃんとケーキを食べに行きました。いつもチョコのケーキとか、よく分からないフルーツがいっぱいあるケーキをたのむのに、お兄ちゃんはプリンを一こたのんでおわりでした。
  へんてこなお兄ちゃんは、前よりずっとへんてこになっています。パパとママは、いまもアメリカとかのへんで、おしごとをがんばっているらしいです。
  へんてこになったお兄ちゃんを、パパとママといっしょにわらいながら、四人でケーキを食べに行きたいです。
                         月流友撫の作文より(一部抜粋)

     ☆

「なに見てるんだ? 友撫。」

風丸お兄ちゃんが、背後から声をかけた。
笑顔でふり返って、見ていたものをぴらぴらと見せびらかす。風丸お兄ちゃんはそれを受け取り、すぐに答えた。

「作文か。これ、いつのだ?」
「うーん、忘れちった☆ でも、漢字が書けてないから、小学校低学年だろうねえ。」

足をぶらぶらさせて、椅子から立ち上がる。ねこみたいにすり寄っていくと、風丸お兄ちゃんは「しかたないな。」と言うようにまゆじりを下げながら、友撫の頭をなでてくれる。
作文をしばらく読んでから、風丸お兄ちゃんは問う。

「このお兄ちゃんって誰だ?」
「ぬぇ?」

いきなりのことに、変な声で返事をしてしまった。
うん……まあ、友撫も思ってたことなんだけどさ……。
それに書いてあるお兄ちゃんって、誰のことなんだろう。
もう高校生だけど、風丸お兄ちゃん以外のお兄ちゃんなんて呼ぶひと、できたことないし……。

「うーん……分かんない。」



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コ、コメントしてくれてもいいんですよ……?((チラチラッ

風花「ハゲろ。」

ごめんなさい((土下座