二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

第十幕 山吹《やまぶき》 ( No.20 )
日時: 2012/07/08 21:08
名前: 無雲 (ID: C5xI06Y8)

「テメェ等先に行け。ここは俺が引き受ける。」
「何言ってるんですか!銀時様を置いて逃げろと!?」
天人の大群に囲まれ誰もが死を覚悟した時だった。銀時が血に濡れた刀を持ったまま静かにそう言った。
その表情は穏やかで、とても白夜叉と恐れられている男とは思えない。
「いいから行け。」
「嫌です!」
頑なに命令を拒否する隊士。
銀時は小さく溜息をつくと、そんな彼の腕を掴んで後方へと投げ飛ばした。
投げ飛ばされた隊士は別の隊士の肩に担がれる。
朝露あさつゆなつめを頼んだ。」
「嫌だ!銀時様!離せ朝露ッ!!」
「月華隊総員に告ぐ!!」
戦場に凛とした声が響き渡る。それは火の粉の爆ぜる音や爆音を突き抜け、しっかりと隊士達の耳に届いた。
「生きろ。」
「「「「!!!」」」」
「生きて生きて生き抜け!たとえ泥水をすすり、草をむことになろうとも!」
血塗れの刀が天へと伸びる。それは変わらぬこころの証。月華隊の絆の象徴。
「生きて・・・再び巡り合うぞ!!」
「「「「おおおぉぉぉぉおお!!!」」」」
月華隊が退却を始める。気配が、足音が、遠ざかっていく。
「銀時様ッ!!離せと言っているのが聞こえないのか!!」
「黙れ!!銀時様のこころを無駄にする気か!?月華隊副隊長なら銀時様を信じて生きろ!」
己を呼ぶ声とそれを叱咤する声を背後に聞きながら、銀時は天へ伸ばした刀を正面の敵へと向けた。
「月華隊隊長 白夜叉、参る。」
夜叉は月光を振りかざした。